「そうめんはもう茹でないでください!!」女将の戦後体験から生まれた調理法に「目から鱗です」

泡☆盛子 泡☆盛子

「そうめんはもう茹でないでください!!」という衝撃的なツイートが22万近くのいいねを集め、注目されています。投稿したのは、作家・名古屋めし料理家のSwind/神凪唐州(@swind_prv)さん。 

ツイートは「深めのフライパンにお湯を沸騰させ、そうめんを入れて10秒だけかき混ぜたら火をすぐに止めてフタをするだけ。数分後にはちゃんとそうめんになっています! 沸騰させ続けるよりもヌメリが少なく、つるんと美味しい仕上がりに 何より、暑くないのが良いです!!」と続けています。

リプ欄には「真夏のクソ暑い台所で吹きこぼれないように棒立ち待機しなくていいとか、、、。ありがとうございます。有効活用しますね」「なるほど!吹きこぼれる心配がないのがいいな!あれの始末がめんどーなんだよなー いっつも」「暑くないしガス代節約になるし放置中に天ぷら揚げられる(笑)良い事尽くしですね」との声や、さっそく実践してみた人たちの「この方法。やりました。目から鱗です。コレは自慢出来る裏ワザですね〜」「早速作ってみました。麺の食感がたまりません」という喜びの反応が続いています。

夏の食卓に欠かせず、さらには七夕の行事食でもあるそうめんを(ほぼ)茹でずにおいしく食べることができるというのだから、汗だくになってそうめんを茹でてきたみなさん、これは朗報ですよ!

Swindさんはリプ欄で「しかもこの方法なら火を止めちゃうので、絶対に吹きこぼれる心配がないのも大きなメリットなんですよね 例えばサバ缶とめんつゆを混ぜたタレをおけばコク旨な『サバ缶ぶっかけそうめん』が簡単にできちゃいます」とアレンジメニューを添え、さらにはこの調理法の参考元も紹介しています。

実は、香川で料理店を営む女将さんのレシピでした

「詳しい作り方が知りたい方はこちらの動画をぜひどうぞ」とリンクされているのは、香川県・まんのう町にある料理店『田舎そば川原』さんが発信するYouTubeの動画。

『田舎そば川原』の女将・川原恵美子さんが、自店のYouTubeチャンネル「【田舎そば川原】料理・漬物」で紹介されている「秘伝のそうめんの茹で方」のポイントはこちら。

◎鍋で沸騰させたたっぷりのお湯にパラパラッとそうめんを入れて菜箸でほぐし、再沸騰したら蓋をして火を止める。
◎5分後に(10分後でも変わらないのだそう)そうめんをザルにあけ、流水と氷水でしっかりと冷やしながらもみ洗いをして、そうめんのぬめりを取る。

川原さん曰く「(茹で続けないと)頼りないように思えるけど本当においしい。ねばらずダマにならない」のが特徴とのこと。そうめんのぬめりを徹底的に取ることでねばりが出ず、1時間後でもダマになることなくさらっとした状態がキープできるのだそうです。

川原さんに、この秘伝の茹で方についてお聞きしました。

──この「そうめんは茹でない」方式はいつ頃考案されたものでしょうか。

戦後の苦しい時代を乗り越えてきた私は、薪で炊事をしていた頃に「薪の余熱で調理する」ということを自分で学びました。それに由来するこのそうめんの余熱調理法が良いと思っているので皆さんにおすすめしています。

──そうめん以外の麺でもこの調理法は有効でしょうか。

ひやむぎは1分ほど湯がいてから火を止めて鍋に蓋をし、蒸らしてもらえればいいかと思います。好みの硬さがあると思うのでそこは調整してください。ただし、「たっぷりのお湯を使うこと」「流水でぬめりをしっかり取ること」がポイントなので、それは必ず実行してくださいね。
蕎麦やうどんは、余熱調理にせずちゃんと湯がいてください。当店でお出ししている田舎そばも湯がいていますよ。

──そうめん以外にも、漬物やスープ、サラダなどおいしそうな料理のレシピを動画で公開されています。YouTubeでの発信を始めたきっかけを教えてください。

以前から、お客様に「漬物やお料理が美味しいからレシピを教えて欲しい」と言われることが多かったので、YouTubeでお伝えすることにしました。それから、動画をきっかけにたくさんの方にまんのう町を知っていただき、我が地元が盛り上がってくれたらいいなと思いました。レシピについては、自分の経験を伝承しているだけなので、ちょっと違うなと思うことがあってもご容赦くださいね。

──そうめん動画は200万回以上も再生され大反響ですね。

再生回数が伸びているのは視聴者の皆さんが「本物」を分かってくれているからだと思います。良いものを良いと思って周りに勧めてくれているからだと。「本物」を理解して視聴されている皆さんがすごいんです。いつもありがとうございます。

苦難の時代を経て自力で会得した調理法を惜しみなく発信してくれる川原さん。世の中が落ち着いて安心して旅行ができるようになったら、ぜひともお店に伺って実際にお料理をいただいてみたいですね。

なお、お店のYouTubeチャンネルでは、7月9日・18時に新しいそうめんレシピ(そうめんサラダ)を公開する予定とのことです。

実践した料理家さん、「メリットしかない」

続いて、ツイ主のSwindさんにもお話を聞きました。Swindさんは川原さんの調理法を踏襲しつつ、ご自分なりのアレンジも加えてツイートされています。

──この動画を見るまではそうめんはどのように茹でていましたか?

フライパンを使って、通常通りグラグラと茹でていました。麺の太さ次第ですが30秒~1分ぐらいで水にとって締めている事が多かったですね。ただ、短時間とはいっても鍋につきっきりにならざるを得ないので、茹でるのは年に1回か2回というレベルでした。

──初めて実践したときの感想は?

まず「麺がすごくきれい」。そうめんを茹でたときにはでんぷん質が溶け出すので茹で汁が白っぽくなってしまうのですが、それが本当にわずかで済んでいたというのが驚きでした。そして麺を水で締めてみるとつるんとなめらかな仕上がり、さらに4分というそうめんにしては長めの時間お湯につけていたにも関わらずコシがしっかり残っていたのも驚きでした。今まで普通に茹でてたのがいったい何だったんだろう……? というほどの感動でした。

──この調理法の魅力は?

個人的には「熱湯戻し法」と呼んでいますが、この方法メリットだらけです。
まず調理手順的なメリットとしては以下の3点。

①10秒で火を止めるので目を離すことができる
 →薬味や具材の準備など、他の作業に専念できます。

②火を止めてフタをするので暑くない
 →湯気が上がらないので、とにかく暑くないです。夏場はめちゃめちゃ助かります(笑)。

③茹で上げ時間の管理がアバウトで済む
 →通常の茹で方法だと「秒」で食感が変わってしまいますが、この方法は多少ほったらかしにしても麺が伸びないので、ほかの作業をしていても安心です。

また、味については上述の通り「そうめんがよりなめらかに仕上がる」ことが大きなメリットですね。暴れさせないことがいかに大事か、すごくよく分かりました。

──川原さん流からご自分流にアレンジされた点のメリットを詳しく教えてください。

◎その1「フライパン使用」

まずは「わざわざ大きな鍋を出さずに済む」ということです。
その後実験し、麺の重さに対して概ね6倍程度以上の水があればこの方法で十分に美味しく仕上がることを確認しています。深めのフライパンなら3リットルぐらいまでは水が入りますので2~3人前ぐらいまでならフライパンの方が気軽に作ることができます。
また、一般的にはお鍋よりもフライパンの方が底が広いため、麺を浸しておいておくときに広く使える=麺同士が重なりにくく、よりダマになりにくいというメリットも大きいかと思います。

◎その2「10秒止め」

これはわかりやすさ重視です。川原さんの方法では「再沸騰するまで」とありましたが、実際に必要なのは麺をさっとさばく時間だけですので、その目安として10秒としました。個人的には「すぐに」の感覚でいいのですが、麺をさばかずに火を止めてしまうとくっついてダマになることもあるので、あえて「10秒」としています。

──この調理法を実践する方へのアドバイスをお願いします。

上述の通り大量のそうめんの場合にはお湯の量が不足してしまいますので、その場合には見合った大きさのお鍋で行って頂いた方が良いと思います。この時も出来るだけ直径の大きいものを使った方が良いでしょう。

──そうめん以外の麺でもこの調理法は試されましたか?

今のところ実験した限りですが、生麺のきしめん、生麺の冷やし中華は同様の方法で美味しく仕上がりました。指定の茹で時間より1~2分長くするといい感じに火が入ります。また、ショートパスタも同じようにすることで美味しく仕上がりました。
スパゲッティについても実験していますが、今のところは通常通りの茹で方の方がぷりっと仕上がって好みの食感になっているイメージです。もしかするとスパゲッティも水で締める必要があるのかな……と仮説を立てていますが、これはまだこれからの検証になります。

──「サバ缶ぶっかけそうめん」のほか、簡単なアレンジのおすすめは?

とにかくぶっかけ系が大好きなのでそちらのアレンジをいくつかご紹介します。

まずは王道ですが「やまかけそうめん」は定番ですね。

また、変わり種としてはサクレレモン+めんつゆでサッパリ仕立ての「サクレモそうめん」というアレンジもおすすめです。いか天のお菓子を添えると天おろし風にもなります。つけるタイプ、ぶっかけスタイルどちらも美味です!

このほか、ごまドレッシングを和えて、さらに食べるラー油をかけた「冷やし担担麺風そうめん」もいいですよ。この場合には、サバ缶ぶっかけそうめんと同じように上に薬味をたっぷりかけるのがおすすめです。

  ◇   ◇

バラエティに富んだそうめんアレンジを紹介してくれたSwindさんは、「名古屋めし料理家」として考案したレシピをコラム形式で連載中。王道から簡単お手軽アレンジまでおうちごはんが美味しく楽しくラクチンになる「名古屋めしテクニック」の数々が掲載されているので、こちらもぜひチェックしてみてください。
超簡単!! おうち名古屋めしの教科書

筆者も実践、キッチンの温度が全然違います!

夏はかなりの頻度でそうめんを食べる筆者もさっそく実践してみました。

川原さん、Swindさんのやり方をミックスした形の「深めのフライパンで沸騰させた湯にそうめんを入れ、再沸騰したら蓋をして5分放置。流水、氷水でしっかりもみながら洗ってぬめりを取る」としてみたところ、見事に成功!

そうめんの麺がプリッと弾んで1本ずつ輝いているように見えます。ツルッとなめらかな食感が快く、いつもより早いペースで食べてしまいました。

「本当に1時間経ってもダマにならないのか」を検証するために残しておいた麺まで食べきってしまうほど、箸が止まりませんでした。ひとりであっという間に3束分を完食……。

おいしくできたのも嬉しいし、調理中のキッチンがいつもほど暑くならなかったのもとってもありがたかったです。これまでは湧き続けるお湯の横で汗だくになりつつ具材を用意していたのに、火を止めているのと鍋に蓋をしているおかげで、涼しく心穏やかに薬味などを揃えることができました。

そして翌日も昼食にそうめんを茹でない方式で茹で、今度こそ鉄の意志で半分だけをつるりと食べて半量を残しました。ポリ袋に入れて冷蔵庫におくこと1時間。見た目は茹で上がりと変わらないそうめんがよーく冷えていました。箸を入れて持ち上げると一部は軽くくっついていましたがさっとほぐすと離れる程度。「ダマになる」ということはありませんでした。

それからさらに2時間ほど冷蔵庫に入れたままだったものを、早めの晩酌のおつまみ用に調理。
筆者の故郷である沖縄の家庭料理・そうめんチャンプルーにしてみました。

フライパンでネギと肉味噌を炒め(具はお好みのものでOK)、そうめんを加えて軽くほぐし、めんつゆで味付けするだけです。これまた麺はつるつる状態をキープ、くっつきません! すごい! 

自分でそうめんチャンプルーを作ると必ず麺が固まりになってしまうため、「自作はあきらめて沖縄居酒屋で食べることにしよう」と決めていたのに、これならいつでも故郷の味を再現することができます。うれしいなー!

別の日にはSwindさんレシピの『サバ缶ぶっかけそうめん』もやってみました。ぶっかけスタイルは簡単だし洗い物も少なくて済むのがいいですね〜。そしてサバ缶が入ることで食べ応えもバツグンでした。

これからますます暑さが増し、冷たいそうめんがおいしく感じられる時季になります。ぜひこの便利な調理法をお試しいただき、感動を分かち合いたいです。

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