「迷子になった犬や猫のために」写真投稿SNSアプリ『ドコノコ』30万DL! 愛犬家・糸井重里氏の発案で誕生

岡部 充代 岡部 充代

『ドコノコ』は犬と猫が主役の写真投稿SNSアプリ。そこが他のSNSとの大きな違いでしょう。アプリを開くと犬、猫の写真がズラリ。どこまでスクロールしても犬と猫しか出てきません。運営母体はコピーライターやエッセイストとして活躍する糸井重里氏が代表を務める『株式会社ほぼ日』。そこには愛犬家として知られる糸井氏の想いが込められています。『ドコノコ』を開発、運営しているドコノコ・チームのメンバーにお話をうかがいました。

開発のきっかけは糸井氏のツイッターに多数寄せられていた「迷子犬猫の情報拡散依頼」でした。同氏は「こんなに迷子がいるのか」と驚きつつリツイートし、発見された迷子のリツイートが届くと、「この子はもう見つかりましたよ」と教えてあげていました。パソコンに一覧表まで作って管理していたそうです。

そこでふと気づきました。北海道の迷子情報を東京の人が受け取っても、一緒に捜すこともチラシ配りを手伝うこともできない。大事なのは近くにいる人への情報発信ではないかと。また、家族がいない、お世話する人が明確でない犬や猫が多い現状にも心を痛め、「犬や猫にも戸籍や住民票のようなものがあれば」と考えました。

法律で定められている飼育犬の登録とは別に、すべての犬や猫がご近所の犬猫好きに「どこのコ」か名前が分かるようになれば、引っ越しのときに置き去りにしたり、モノのように捨てたり、虐待したりといったことをしづらくなるのではないか、という発想です。たとえば「野良猫」と思われている猫も、誰かがお世話している「地域猫」かもしれない。名前がついていることを知れば見る目も変わるでしょう。

そんな糸井氏の想いを形にした『ドコノコ』は6月5日に5周年を迎えました。ダウンロード数は30万を超え、一日の写真投稿枚数は約6000枚。日本のみならず世界80カ国で愛用されています。

最初は「うちのコかわいいでしょ?」と投稿を始めた飼い主さんも、「よそのコ」の写真に「いいね♡」をしたりコメントを書いたりしているうちに、「よそのコ」が「うちのコ」と同じようにかわいくなり、一緒に喜んだり、泣いたり、心配したり…。近くに住んでいれば災害時に助け合うこともできますし、アプリ開発のきっかけとなった迷子捜索の協力も可能です。

他のSNSでもユーザー同士のつながりは生まれるでしょうが、『ドコノコ』の最大の魅力はやはり「犬と猫が主役」ということ。ドコノコ・チームのメンバーが常に考えているのは、「どうすれば犬や猫を通したコミュニケーションを楽しく行う場を提供できるか」です。

入力できるコメントの文字数が少ない、ダイレクトメッセージ機能がないなど、一見「使い勝手が悪い」と思われる仕様になっているのも、人を前面に出すことをヨシとしないから。投稿写真の中に犬猫の普通の日常をとらえた、ある意味「映えない」写真が多いのは、そうした理念がユーザーにちゃんと伝わっているからではないでしょうか。

『ドコノコ』にある機能として秀逸なのは「迷子掲示板」です。迷子捜しには多くの“目”が必要。そこで「このコが迷子です!協力してください!」と投稿すると、位置情報を利用して半径4キロ圏内にいる他のユーザーに通知が届き、掲示板で共有された写真や地図を手掛かりに一緒に捜したり、迷子チラシの配布を手伝ったり。迷子捜索の経験があるユーザーはアドバイスを送るなど、「よそのコ」のために見知らぬ人たちが協力する“参加型”掲示板なのです。

半径4キロは「自転車で行けるくらいの距離」として設定されたもの。あらかじめ登録したプロフィールをもとにチラシが自動作成されるので、すぐに印刷することも可能です。毎月200件以上の掲示板が立ち上がると聞くと驚きますが、それだけ迷子犬・迷子猫が多いということ。明日は我が身です。掲示板が迷子発見に一役買ったケースも数多くあり、今後も「ユーザー=協力者」が増えることが期待されています。

また、アプリ内にはペット探偵として有名なペットレスキュー代表・藤原博史氏が監修した「迷子捜しマニュアル」も犬、猫別バージョンであり、無料でダウンロードできることから、迷子捜索の大きな指針となっています。さらに昨年からは東京都獣医師会の協力を得て、迷子掲示板で作成されたチラシが自動的に近隣の動物病院にメール送信されるシステムの実証実験も始まりました。

迷子捜索の際、近くの動物病院にチラシの掲示をお願いするのは必須ですが、自動送信されれば飼い主さんの手間は省け、漏れも防げます。捜索中に目撃情報が投稿されると、再び近隣の病院にメール送信。もちろん無事に保護された場合も、報告とお礼のメールが送られるようになっています。

画期的なこの取り組み。早期に47都道府県に広がってほしいと思いますし、動物病院だけでなく、宅配便の配送センターなどエリアに詳しい人たちが集まる場所にも通知が届くようになれば、もっと多くの“目”で捜してもらえます。それはつまり、迷子発見率が上がるということ。近所で犬や猫が困っていたら助けてあげたいと考える、犬と猫が主役のアプリだからこそできることがあるのです。

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