二十四節気「夏至」。太陽は高く暦の上では夏の真ん中、1年で昼が一番長い日です

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「夏至」は二十四節気のひとつ。一年で最も昼が長く夜が短い ”日” であるとともに、”期間” としての意味もあり、7月6日頃までの約2週間を指します。暦の上では夏のただ中の仲夏にありますが、時期的にはまだ梅雨。太陽にお目にかかれなくても、雨にうたれて咲く花に心惹かれる時季ですね。ヨーロッパや北欧では、長かった冬から夏へ、花の季節を迎えて人々が集まりお祭りが行われるようです。
太陽と地球の位置関係がもたらす季節の移り変わりは、それぞれの地で伝えられ豊かな文化や風習を残しています。


「夏至」っていったいどんな時?

「1年で昼の時間が最も長い日」と言われますが、緯度により差があります。東京では14時間35分ですが、札幌は15時間23分、那覇では13時間47分と日本列島の北と南でおよそ1時間半の時間差があるのです。
北へ行けば行くほど昼間の時間が長くなるのは、地球の軸が太陽に対して23.4度傾いているため。夏は北極側が太陽の方向を向いているため北緯66.6度以上の地では、1日中太陽が沈むことのない白夜となります。
また「冬至」との時間差をみると、日本の冬至ではおよそ5時間昼が短くなっています。夏至に白夜だった北極付近では1日太陽が姿を見せない「極夜」となり、この時間差はなんと24時間になります。緯度が高くなれば高くなるほど季節による昼と夜の変化が激しいことがわかります。
太陽と地球の動きから見ていくと、日本列島が北半球の真ん中より少し南にあることに改めて気づきます。この位置にあるからこそ、ほどよく届く太陽の光が日本に穏やかな四季の移り変わりを作りだしているのだと実感します。


梅雨のおかげ?この時季美しさを発揮する身近な花々

雨降る季節に咲く花はたくさんあります。華やかさでいえば、目を惹きつけるのはバラや紫陽花、花菖蒲。手入れされた庭に連なり広がるさまは多くの人を誘い込み、梅雨といえども花を愛でる楽しみを堪能させてくれます。
一方で日々道を歩きながら目に入る露草、昼顔、ドクダミ、蛍袋といった小さな花も見逃せません。小さくとも色の鮮やかさ、佇まいといった存在感に思わず見入ってしまう力を感じます。
「ひるがほを踏みて眺めぬ塩屋崎」 前田普羅
「どくだみのいま花どきの位もつ」 山上樹実雄
「見ゆるごと蛍袋に来てかがむ」  村越化石
小さな花の存在を俳人はしっかり心の中にまで捉えていることがわかります。
最近は名前のわからない草花も多く見つけるようになりました。路地を這うように勢力をのばしていつの間にかお馴染みさんとなっています。豊富に降る雨をたっぷり吸って咲く姿が精気に満ちているからでしょうか。傘をさしていると目がいくのは足下。駅までのいつもの道も生き生きと咲く花を指折り数えて行けば、きっと楽しい時間になりますね。


夏至祭り、ミッドサマーの不思議な力!!

6月、緯度の高いヨーロッパや北欧では、光溢れる季節の到来を喜びます。昼が一番長い「夏至」に夏の盛りミッドサマーを重ねているのでしょう。例年「夏至祭り」が各地で行われます。
長い夜と厳しい寒さの中で冬を過ごしてきた人々にとって、太陽の陽ざしほど嬉しいものはありません。緑豊かな戸外へと飛び出していきます。
この日が近づいてくると妖精の世界と人間世界をつなぐ扉が開く、1年のうちでとっておきの魔法がしかけられる晩は夜明けまでにはおかしなことがいっぱい起こる、など不思議な言い伝えがたくさんある「夏至祭り」は、自然への憧れと畏れ、また夏を迎えるワクワク感でいっぱいです。
そこで思い出したのが、東風に乗ってやって来る「メアリー・ポピンズ」の夏至祭りの物語です。
その日バンクス家の子供たちは、ピクニックをしながら夕食を食べようとメアリーと公園にやってきます。もうたくさんの人たちが夏至祭りを楽しみに集まっていました。
恋人に出会えるおまじないに夢中な人は、今夜枕の下に置く花束作ろうと花を摘んでいます。キツネやウサギ、クマたちも薬草摘みに余念がありません。今日だけは自分たちの好きなものを取ろうと動物園から抜け出してきたようです。どうやら太陽の光を浴びた薬草や香り高い草花には不思議でおかしなことを起こす秘密があるようです。
さくら通りのさくらんぼを取りに来たのは空に輝くオリオン。一緒に降りてきたカストルとポルックスはジェーンやマイケルと意気投合して仲良く走り回っています。
夏至祭りのてんやわんやは続きますが、長い昼の終わりが近づくとメアリー・ポピンズはいつもの厳しい顔つきで、夏至祭りの冒険の終わりを告げるのです。
太陽がいつまでも沈まない長い昼は明るい夜ともいえます。寝るにはもったいないとみんなが好き好きに過ごす楽しさが伝わってきます。火を点したキャンドルをならべて静かに語らう短い夜もまたしかり。
丸い地球が少し傾いているから起こる季節の変化。そのひとつ「夏至」は太陽の力が極まる時。ところは違えど大地に生き生きとした自然を作りだしていることは変わりません。多くの収穫に向けて人々が活気づいていく節目それが「夏至」ではないでしょうか。

参考:
P.L.トラヴァース著、荒このみ訳『さくら通りのメアリー・ポピンズ』篠崎書林

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