「100人会っても恋人が作れない」コミュニケーションに苦しむ利用者 マッチングアプリ運営者に聞いた

青島 ほなみ 青島 ほなみ

今や出会いのツールとして一般的なマッチングアプリ

顔写真やプロフィールで効率的に相手を探せることはもちろん、最近では「オンラインデート」なるビデオ通話を行うことで、会う前から相性を確かめることができる。とはいえ、膨大な利用者の中から理想の相手をすぐに見つけるのは難しい。

そんな中「私たちはマッチングアプリで疲弊している」と指摘するのは、Webメディア『マッチングアプリ研究所』運営の俊介さん(仮名)。確かに、MMD研究所の調べによるとマッチングアプリの利用期間は男女ともに「3ヶ月~半年未満」が最も多く、「実際に会ってみたが、それ以降はなにもない」という回答が半数を占めている。不完全燃焼のまま、アプリの利用をやめてしまう人が多いのだ。

俊介さんも実際に5種類以上のマッチングアプリを使い100人以上の女性と会ったが恋人は作れなかったという。俊介さんの外見は清潔感があり、決して「モテない」印象は受けないが、なぜこんな状態になってしまったのか?詳しく話を伺った。

青島ほなみ(以下「青島」):マッチングアプリは日常に浸透しており、特に若者層では気軽に話題にされることが多いと思います。どんなところに疲弊しているとお考えなのでしょうか?

俊介:多くの人が、マッチングアプリを使って「理想の相手」を追い求めています。「もっと良い人に出会える」というモチベーションで永遠に理想の相手を探し続ける人が多いんです。職場や学校で恋愛をするのであれば、出会える人の限界値があります。そのため、言い方を選ばずに言うと「妥協」ができますよね。

一方でマッチングアプリで出会える相手は無限大。スマホをぽちぽちするだけで気になる異性にアプローチすることができます。スマホの画面には美男美女が人気順に並んでいるので理想がどんどん肥大化していきます。だから、僕のように100人会っても恋人ができない男性が現れるんです。いろんな女性に出会っていく中で宝くじ・ガチャガチャを引くような期待に襲われるんです。

青島:十分良い人に出会っていたとしても、満足できずに大きな理想を追いかけてしまうんですね。「青い鳥症候群」などと言われてますよね。

俊介:マッチングアプリは短期間に沢山の異性に出会えるのが利点です。ただ、付き合うことを考えると最終的に1人の相手に絞らなくてはいけません。例えば100人の相手とマッチングして、実際に10人の相手とデートに行ったとします。そこで10人の女性全員と仲良くなったとしても、いずれ9人の女性とは関係を切らなくてはいけません。これは相手の女性も同じです。僕が相手を良いと思っていても、突然連絡が途絶えることが多々あります。

「あれ、メッセージの返信がこない」と感じたらLINEやインスタをブロックされていることが多いんです。マッチングアプリで出会う人に対してまともに向き合っていると、最終的に自分が傷つくので心の距離を無意識に取ってしまいます。

青島:冷たいように思ってしまいますが、マッチングアプリ上では当たり前の風潮なのかもしれませんね。

俊介:だから、自分に合わないと思ったらメッセージは無視しますし、相手が傷つくと分かっていても心を鬼にして関係を切ることができるようになりました。この感覚って普通の友達関係にはありませんよね。

普段の出会いであれば一期一会を大切に、生活の中で異性のいろんな側面を見れる。たとえ恋愛対象にならなくても、人として大切にしようという感覚が生まれる。しかし、マッチングアプリは次から次へと色んな人と出会えるため「一つの出会い」に対して大切にする感覚や丁寧なコミュニケーション力が損なわれているように思うんです。

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この利用者の叫びに対し、マッチングアプリの運営者はどのように感じているのだろうか?

恋愛AIマッチングアプリ『MORY』担当者に話を聞いてみた。

MORY:捉え方によりますが、むしろコミュニケーション力を向上させる要因もございます。一般的なマッチングアプリであれば、女性は平均的に「1日に100いいね前後」のアプローチを男性から受けることが多いです。ですので、現実的にすべての相手に対して、丁寧なコミュニケーションをとることが難しいことは考えられます。

一方、男性にとっては「1日に100いいね前後」アプローチを受けている女性に選んでもらわないといけないため、メッセージやプロフィールを工夫することになります。結果としてコミュニケーションやライティング力の向上に一部繋がっていると思います。

プロフィールの書き方により、マッチング率は数倍変わります。またメッセージの送信内容によっても女性からの初回返信率が大きく変わっているのが現状です。

青島:ネット上でのコミュニケーション能力、ないし気を引かせる能力は養われそうですね。

MORY:ネットであれリアルであれ、結局「人」と「人」とのコミュニケーションです。工夫して、極端に言えば努力して、マッチングアプリを使ってる人はネット上でもモテてますし、ぞんざいなコミュニケーションをすれば、ネット上でもモテません。それは男女ともにいえることです。

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余談だが、最近は面識があってSNSで繋がっている人でも簡単にブロックされたりメッセージをぞんざいに扱われることが増えたように思う。マッチングアプリに関わらず、ネット社会では膨大な数の人と繋がるため、コミュニケーションの常識が変わってきているのかもしれない。恋人候補者の連絡リストから生き残るにはそれ相応の努力が必要ということだ。

マッチングアプリ研究所 https://match-lab.jp/
恋愛AIマッチングアプリ『MORY』 https://apps.apple.com/jp/app/id1526646480

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