猫が路上スカウト?工場街の元野良猫は、今では立派な音楽家に!バンドマンと猫の楽しい日々

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

夫婦は顔が似てくるといいますが、人間と猫もなんとなく顔が似てくるもの。東京都に住む推定8歳のしかさんも、一緒に暮らす音楽家のDeeLee兄貴さんと顔が似てきている猫です。

しかさんとDeeLee兄貴さんとの出会いは、約8年前。当時ルームシェアをしていたバンドのボーカルが、真剣な顔で相談をしてきたのだそう。

「この子を拾っちゃった」

見ると、生後約半年の子猫が鞄の中からひょこっと顔を出したのです。そのまま、二人と一緒に暮らすように。もしかすると、しかさんはボーカルを路上スカウトしたのかもしれません。「きみにはしょうらいせいがあるから、ひろわれてあげる」と。

というのも、このバンドは猫に縁が深いのです。拾われた猫は、しかさんで3匹目。今はルームシェアを解消したボーカルも、2匹の猫と暮らしています。猫に優しいバンドといえるでしょう。

「しか」という名前は、バンドに伝わる由緒正しい名前。最初に拾われた猫に名付けられ、代々バンドのメンバ―が拾った猫は、「しか」と名付けられているとのこと。しかさんで三代目です。

バンドマンと暮らす猫ですから、しかさんも音楽的才能があるようです。DeeLee兄貴さんがシンセサイザーで作曲をしていると、鍵盤の上に乗ってくるんですって。それが、とても良い和音になることも。

他にもあります。アコースティックギターで収録をする際はコーラスを入れてくれるんです。もちろん「にゃー」ですが、絶妙なタイミングで入れてくれる。やはり聴いているのでしょう。収録後は録音したものを、DeeLee兄貴さんと一緒にチェックです。その表情は真剣そのもの。しかさんもバンドの一員のようです。

ライブに出演しないものの、しかさんもバンドの一員ですから、地方公演の際は主催者からお土産をいただくのだそう。お留守番をしているしかさんのためにと、ちゅーるの詰め合わせ等々。普段のライブの際も、お客さんからの差し入れをいただいているようです。

ライブの物販も、しかさんグッズは飛ぶように売れるんですって。例えば、ブロマイド5枚1組300円は、いつも完売。缶バッジも出せば出すだけ売れます。こうやって印税はもらえないものの、しかさんは自分の食い扶持を稼いでいるのです。

しかさんは順調なバンドマン生活を送っているようですが、ここまでいくのに少し時間がかかりました。それは、エレキギターが怖かったから。音だけでなく、弦を張る音も怖い。DeeLee兄貴さんがエレキギターを手にすると、ベッドの下に隠れてしまうほど。

DeeLee兄貴さんは気にはしていましたが、これで止めてしまったら仕事ができません。心を鬼にして仕事に臨みます。ところが今度はしかさん、弦を張り替えるための工具を持って隠してしまう。これにはDeeLee兄貴さんも困った。

そこでDeeLee兄貴さん取った対処は、話し合い。なぜエレキギターを弾かなければならないのか、これはどんなお仕事なのかを説明しました。しかさんは黙って耳を傾け、最後には「にゃー」とお返事。それから、工具を隠すことはなくなったそうです。

隠すことはなくなっても、やっぱりギターはアコースティックの方がしかさんはお気に入り。今日も収録の最中に予定にないコーラスを入れます。この様子に、DeeLee兄貴さんはいつかしかさんのCDを作りたいと考えるように。

「みんなが喜んでくれるなら、しかも嬉しいだろう。バンドの曲より売れたりして(笑)」

そうDeeLee兄貴さんは笑顔で言います。しかさんはその隣でニコニコ。自分のことを話しているのは分かるようです。

こうやっていつもしかさんが喜ぶことを考え、しかさんと向き合っているからこそ、なんとなく顔が似てくるのかもしれません。

しかさんのCD発売が今から待ち遠しいです。

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