迷子猫の勘違いが結んだ縁 べこちゃんとお父さんの甘い日々 「おかえりニャー」独特なハスキーボイスでお出迎え

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

神戸市の推定8歳のべこちゃんは、迷子だった女の子。西区某所でオロオロしているところを保護されました。今から4年前のことです。どこから来たのか、どこに行きたいのかも分かりません。保護主さんは飼い主をべこちゃんの代わりに探すのですが、遂に見つかりませんでした。

そこで、新しい家族を探すべく、べこちゃんは譲渡会へ。可愛い子猫もたくさんいる中、大人猫のべこちゃんは人気がありません。子猫たちはチヤホヤされているのに、べこちゃんはポツン。

そんなべこちゃんの元に現れたのが、今のお父さんのKさんです。夫妻で譲渡会を訪れていました。50代後半の男性で、ふらっと現れてケージの中に手を入れると、べこちゃんを撫でたのです。これに、べこちゃんはビックリ。

「この手には覚えがあるぞ!お父さんの手だ!」

ゴロゴロのどを鳴らします。べこちゃんが喜んでくれたことにKさんと妻は運命を感じ、べこちゃんはKさんの家に引き取られることになりました。

Kさんは最初「トライアルだから」と遠慮がちに接していましたが、べこちゃんはお構いなし。なんと初日から一緒のお布団で寝たのです。これにはKさん大喜び。

「恐らくべこは前の飼い主と私を間違えています。前の飼い主も壮年男性だったのでしょう」

べこちゃんの勘違いであっても、今はKさんと幸せな日々。Kさんが仕事から帰ってくると、玄関でお出迎え。「にゃー」と独特のハスキーボイスでおかえりなさいと言ってくれます。決してだみ声ではありません。Kさんには「ハスキーボイス」に聞こえているのです。

今はコロナでリモートワークがメインのKさん、書斎に一緒にいるのはもちろんべこちゃんです。けど、べこちゃんはKさんに仕事をしてほしくないみたい。パソコンの画面の前にでーんと寝そべります。

「はい、お父さんが見るのはべこです」

といわんばかりにキーボードの上に乗るもんですから、謎の文字列が仕事用チャットに投稿されることも。それを消すのも、Kさんはまた嬉しいのだそう。

会議の時も当然べこちゃんが一緒です。会議中は静かにしなくてはなりませんから、自慢のハスキーボイスは封印。黙ってKさんのお膝の上にいます。Kさんはべこちゃんを撫でながら会議に出席です。なんともうらやましい。

こんな風にべこちゃんはKさんの引っ付き虫。お父さん大好き好き好き!どこに行くのも一緒です。当然、トイレも一緒。でも、猫ですからスリッパを履き替えることはしません。トイレに入った足でそのまま家の中を闊歩します。Kさんは最初、これが気になっていたのだそう。

「でも、今はこれが可愛いんです。足を汚してでも一緒にいてくれるんだと思うと、もうたまりません」

Kさんはべこちゃんと過ごす時間が長くなればなるほど、彼女への愛情が深まっていっているようです。

このように溺愛されているべこちゃん、実は8歳じゃないかもしれないんです。獣医さんの見立てによると、歯の本数から10歳以上じゃないかと。でも、彼女の名誉のために「8歳」ということにしておきましょう。女の子ですしね。

もう1つ、8歳ということにしておきたい理由があります。それは、別れの時間へのカウントダウンを少しでも先だと思いたいから。10歳以上なら、別れの日が目の前です。もっと一緒にいられる時間はある。そう信じたいのです。

咳や吐き戻しが多く便秘がちなべこちゃん、Kさんはこれがとても心配です。だから今、べこちゃんに望むことは「健康で長生きをしてほしい」。

べこちゃんも恐らく同じことを考えているでしょう。迷子のベコちゃんがようやく見つけた本当のお父さんなのですから。

「いつまでも元気でね。ずっと一緒にいてね」と。

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