中華料理店のオムライス、そば店のラーメン、洋菓子店のまんじゅう「専門外」のメニューに込められた客への思いやり

山陽新聞社 山陽新聞社

 白壁の街などの観光地で知られる岡山県倉敷市。この地域で暮らす記者は、なじみの飲食店で迷いながらいつも注文を断念してしまうメニューがある。中華料理店のオムライス、そば・うどん店のラーメン、洋菓子店のまんじゅう…。本道から外れるだけに、気になるが勇気が出ない。取材にかこつけ、味を確かめるとともに、理由を尋ねた。そこには店主の客への思いやりがあった。

 美観地区から西に少し離れた路地で約半世紀営業する中華料理来古本店(倉敷市稲荷町)。ラーメンや肉炒め炒飯など中華風の料理が並ぶメニューの中で、ひときわ異彩を放つのが「オムライス」(680円)だ。

 注文してみると10分ほどで、店主の福永博利さん(72)が、「これぞ定番」という薄焼きの卵に覆われたオムライスを運んできた。口に運ぶとかすかに中華風味。ラーメンの具材用の焼き豚を刻んで使っているからだという。

 中学卒業後、大阪市内の和洋食店で修業した福永さん。オムライスは、そこで調理法を学んだ。「中華ばかりじゃあ、常連のお客さんが飽きると思って。ギョーザと一緒に注文する人もいるよ」とほほ笑んだ。

 JR倉敷駅前の商店街近くにあるうどん・そば店の志乃家(倉敷市阿知)は、ラーメンも扱う。「山菜うどん」「おろしそば」などの短冊メニューと一緒に「かしわらーめん」(600円)が並ぶ。しかも「おすすめ」のただし書き付きだ。

 ごま油で炒めた鶏肉、ニラ、モヤシなどが乗ったシンプルなラーメン。熱々のスープを一口すすると、優しい味がする。店を営む篠原隆さん(72)が「そばとうどんに使う関西風のだしがベースなんだよ」と教えてくれた。

 同店は1979年、同じ場所で篠原さんの義母が営んでいたラーメン店の後を受けて開業した。その名残で和風だしに中華麺を入れる「きいそば」を扱ったところ、常連客から「ラーメンも作って」と頼まれた。要望に応えようと、試行錯誤の末にたどり着いたのが、現在の味だそうだ。

 最後は、ロールケーキなどが有名なウォールウォーレン(倉敷市真備町川辺)。ケーキや焼き菓子といった洋菓子が並ぶ店内で、まんじゅうの「真備焼き」(1個150円)が売られている。

 2種類あり、あんこに乳製品か白桃ジャムを混ぜ、まんじゅうの皮で包む。約10年前から扱うという。

 「お年寄りが多い地域だからか『まんじゅうはない?』と聞かれることが多く、注文に応えた」と佐藤敦志オーナー(54)。

 店は2018年の西日本豪雨で浸水。多くの機材を失ったが、再開後は地元客との会話が増えたという。「災害を経て地域とのつながりがより強くなった。これからも喜ばれる商品を作っていきたい」と話した。

 3店とも専門店ではないが、客を喜ばせようと思い入れを込めて作っている。唯一無二の味と店主の温かさに触れられた。

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