「正直触りたくない」虫がたかりカラスに狙われていたボロボロの子猫が一変!福をもたらすモフモフ猫に

渡辺 陽 渡辺 陽

福ちゃん(5歳・オス)は、たった1匹で、道で遊んでいた。翌日、おたふくさんが母親と見に行くとハエがたかってカラスに狙われていた。おたふくさんは犬を飼っていたので、猫を飼おうとは思わなかったが、瀕死の子猫を放っておくわけにもいかなかった。

カラスに狙われていたボロボロの子猫

2015年6月、長崎県に住むおたふくさんは、母親から「可愛い子猫が道で遊んでいた。周りに母猫もいないようで、おいでと言ったが横っ飛びに逃げ行った」と聞いた。おたふくさんは子猫のことが気になり、翌日、子猫がいたところに母親と2人で行ってみた。

「子猫はいなかったのですが、少し離れたところに2羽のカラスがいて、何かを狙っているようでした。カラスの視線の先には何やら動くものがいて、目を凝らしてみると、子猫が朝日を背にこちらに向かって歩いてきたのです」

よく見ると、子猫の左眼には目やにがいっぱいついていて眼が開かず、鼻水も垂れ、まるで体育館の使い古したモップのように汚れていた。大きなハエが5、6匹子猫にたかっていて、おたふくさんは保護しなければ死んでしまうと思った。

おたふくさんの母親は毛虫に刺されて蕁麻疹が出ていたので、おたふくさんに「アレルギーがひどくなるから、子猫を捕まえて」と言った。

「正直触りたくないような汚い猫でした。すばしっこく動くのでなかなか捕まえることができなかったのですが、そこに叔母が来て捕まえてくれたので、ようやく保護して連れて帰ることができました」

縁あって家族になる

おたふくさんは、ダンボール箱に毛糸のマフラーを敷いて子猫を入れ、ベランダに置いて父親が帰ってくるのを待った。父親に子猫を見せると、「早く病院に連れて行ったほうがいい」と言ったので、夕食の準備をやめて動物病院に連れて行った。

獣医師は、「生後1カ月くらい、今日が山なので点滴をして入院させないともたない」と言った。おたふくさんは、「たまたま助けただけの子猫のために自分たちが病院代を支払うの?でも、せっかく助けた子猫を死なせたくない」と思い、入院させた。

翌日、動物病院に行くと、綺麗に消毒され目の治療をされた子猫はフワフワのモフモフになっていた。ハエが卵を生みつけていたので、獣医師が一生懸命取りのぞいてくれたという。あまりの変わりように言葉を失っていると、獣医師は「ご縁がありましたね」とほほ笑んだ。

おたふくさんは思わず、「いや…先生、うちに犬がいるのを知っていますよね」と言ったが、獣医師の言葉に背中を押され、また、父親が子猫を飼うことを承諾してくれたので、子猫を飼うことにした。

先住犬、柴犬のハッピーちゃんがいたので、犬がヤキモチを妬かないように、しばらく母親がハッピーちゃんの、おたふくさんが子猫の世話をすることになった。

犬の名前はさくらこちゃんというが、「名前を呼ぶたびにみんながハッピーになりますように」と、ハッピーちゃんと呼んでいた。子猫は、「みんなに福をもたらすように」という願いを込めて福ちゃんと名付けたという。

福ちゃんがいるだけで幸せ

おたふくさんは、しばらく福ちゃんをダンボールの中で飼い、次に一部屋だけ戸を閉め切って飼い、どんどん生活範囲を広げながらハッピーちゃんとも少しずつ距離を縮めていった。

初めてオシッコをしたマフラーをトイレに置いておいたせいか、トイレを失敗したことはない。生後6カ月になる頃去勢をしたのでマーキングすることもなく、困ることはなかった。ハッピーちゃんも、遊んでほしくてちょっかいを出す福ちゃんに優しく接した。 

家族が帰ってくると両手揃えて出迎えてくれることもある福ちゃん。性格はツンデレでかまちょ(かまってちょーだい猫)。得意技はビニール袋を丸めたものを投げると口に咥えて持ってくることだ。

ベランダで遊ぶのは大好きだが、カラスに襲われかけたことや病院に行った記憶からか、玄関から外に出ることは嫌がる。

「玄関を開けっ放しにしていたことがあり、福が脱走したのではないかと一家総出で家の周りや草むらを何度も探し回ったのですが、どこにもいなくて、帰宅したら、福が玄関にちょこんとと座っておかえりなさいと出迎えてくれたこともあります」

2019年9月、ハッピーちゃんが病気で亡くなり、家族は悲しんで落ち込んだが、福ちゃんがいたので乗り切ることができたという。

「新しいものに興味津々、してもらいたいことがあると目で訴え、まるで子供のようなんです。私たちも人に話しかけるように毎日言葉を交わしています。おとぼけ天然で表情豊かな福は、私たちにたくさんの元気や笑いをもたらしてくれています」

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