顔を焼かれ、動くこともできなかった猫…セカンドオピニオンで救われ、優しい飼い主に再び甘えられるように

山中 羊子s 山中 羊子s

 1月の寒い日、ゴミ捨て場の片隅にじっとうずくまった猫がいました。その猫を発見したのは近所に住むSさん。Sさんは猫が好きで自宅でも猫を飼っています。気になり、のぞき込むと顔を焼かれていて、ひどい顔の状態でした。人の気配に逃げることもできないほどでした。それがハチとの出会いでした。

顔と手足が焼けただれた状態で…発見

 豊中市に住むSさんは12歳になるスコティシュフォールドを飼う猫好きな人です。近所にはみんなからエサをもらう地域猫がいて、よく姿を見かけていました。 だから、その日見つけた猫もそんな1匹かと近づくと、全然動かず、のぞきこんでみて、びっくりしてしまいました。

 「顔がとにかくひどい状態で毛も皮膚も溶けているような感じでした」

 だれが、なぜこんなひどいことを。その猫は逃げる元気もなく、心配になったSさんはすぐに自宅に戻り、水とエサを持ってきて与えましたが、食べる様子はありませんでした。

 「このまま放置しておくと死んでしまう」と思い、自宅に連れ帰りました。そして、近所の動物病院の診療時間に合わせ、すぐに連れていきました。しかし、そこでは猫エイズと白血病の血液検査と抗生剤入り点滴の治療だけで、風邪だろうといわれました。2週間通っても、顔の手当をしてくれませんでした。

セカンドオピニオンで救われた命

 「このままでいいのだろうか」

 心配になったSさんは周りの人たちに相談。そして猫に詳しいからと、教えられた江坂にあるポーパッズペットクリニックの松田義高獣医師のもとを訪れました。そこで診断されたのは、おそらく人為的に顔を焼かれ、それを消そうとしたため前、後肢にも火傷を負ったのではないかということでした。

 すぐに薬浴をして、顔や手足の汚れを落とし、火傷部分に薬を塗り、サプリメントを与えるという治療が行われました。そんな治療を続けていくうちに、エサも自ら要求するまでに回復、2週間ほどすると、顔の毛が生えてきて、目もぱっちりとあくようになりました。

「ハチ」と名付けられ、Sさんが親代わりに

  その猫はくっきりしたハチワレ模様であることと、この先、末広がりに幸せになるようにという思いで「ハチ」と名付けられました。そして、治療が完全に終わり、回復後、Sさんが引き取ることにしました。

 「こんなにひどいことをされたのに、この子は人に抱っこもさせてくれるし、お腹がすけば要求するしぐさもします。松田先生はきっと、だれかに飼われたことのある子だとおっしゃいました。この子に出会ったのも私の運命だと思います」

 いとおしくてたまらないのです。最初の治療に疑問を持ったことで、セカンドオピニオンを探し、松田先生に出会うことに。そして、辛い思いをしたハチの命はSさんや松田先生に支えられ、奇跡的に救われました。

 「この子が二度と、こんなひどい目にあわないように大切にしたいと思います。ハチのことを伝えることで、このような動物虐待がなくなってほしいと思います」

 これがSさんの切なる願いです。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース