「居心地がいいのね…ここがあなたのお家です」多頭飼育崩壊から救われた子猫、ぐるぐると喉を鳴らす音に感動

渡辺 陽 渡辺 陽

とらのすけくん(1歳半・オス)は、多頭飼育崩壊の民家にいたところ、ボランティアにレスキューされた。人懐っこい子猫だった。幼い頃から猫と暮らしていた中村さんは、再び猫を飼いたいと思っていたところ、とらのすけくんに出会った。トライアルは順調に始まったが、とらのすけくんは中村さんが眠れないほど大声で鳴き始めた。

多頭飼育崩壊からレスキューされた子猫

2019年9月、猫の保護活動をしているNPO法人 動物愛護・福祉協会60家(ロワヤ)の夫婦のところに京都府の民家で多頭飼育崩壊が起きているという相談があった。そこには猫が98匹、犬が1匹いた。状態の悪い猫を保護しに行った時、人懐こい茶白の子猫が周りをチョロチョロしていた。よく見ると、栄養失調で歯がボロボロだったという。60家の夫婦は、早く里親が決まりそうなその子も連れて帰ることにした。

栗の助くん(オス・2歳)と名付けられた子猫は、すぐに慣れて顔を擦り付けるようになった。

大阪府に住む中村さんは、ペット可の家に引っ越した。

「小学生の時、家の前に捨てられていた2匹の黒猫を拾って飼っていたのです。でも、亡くした時のショックが大きく、ずっと猫を飼う気になれずにいました。でも、母が「貰い手のない子猫がいる」と友人から相談を受け、再び猫を飼い始めたんです。実家に帰るたび猫に触れ、もう一度猫と暮らしたいと思うようになりました」

犬派だった夫が猫にひとめぼれ

インスタで60家の活動を見ていた中村さんは、猫は60家からもらうと決めていた。

11月10日、60家に猫を見に行くと、夫は栗の助くんに一目ぼれした。「この子がいい」と言い、他の猫には目もくれなかった。中村さんは、身体が細いなと思ったが、手を差し出すとくんくんと匂いを嗅いでくれたので、早く仲良くなれるかなと思った。

「夫は犬派だったので、猫を飼うことにそこまで前向きではなく、なんとか夫に猫の良さを分かってもらおうという気持ちのほうが強かったんです。自分が責任をもって育てるのは初めてなので、なるべく爪切りなどお世話がしやすい成猫に近い子の方がいいなと考えていました」

引っ越す家や間取りなどは夫の意見を尊重したので、中村さんの猫を飼いたいという気持ちを尊重してくれた。

11月23日、60家(ロワヤ)の夫婦が栗の助くん連れてきてくれた。犬派だった夫も楽しみにしていたので、夫もいる日に連れてきてもらった。栗の助くんは、家に来たときは落ち着かない様子で、テレビの裏に隠れたり、目が合うとシャーシャーと威嚇したりした。ゲージに毛布を掛けると安心すると聞き、しばらくは毛布の隙間から様子を見ていたが、まだまだ遊びたい盛り、猫じゃらしにつられて少しずつゲージから出てくるようになったという。

名前は、栗の助くんに似ている「とらのすけくん」にした。

鳴き声で夜も眠れず

とらのすけくんはのびのび暮らすようになったが、鳴き声がとても大きいのが問題だった。夜中に目を覚ますことも度々あり、ネットで調べた鳴き声対策をしても全く効果がなかったので、中村さんは60家に相談した。60家が獣医師に確認したところ、「発情ではないか」ということになり、まだトライアル7日目だったが、急きょ去勢手術をすることになった。

「術後迎えに行った時、我慢していたのか安心したのかは分かりませんが、おしっこを漏らしました。キャリーを膝に乗せていたので、コートや服が濡れてしまいましたが、なんだか愛おしく感じました」

2日後、撫で撫でしたあとにゲージの掃除をしていたら、ぐるぐると喉を鳴らす小さな音が聞こえてきた。

「本当に小さな音で、でも確かに聞こえてきて、急いで動画を撮りました。家に来て9日目、トライアルは2週間でしたが、トライアル終了を待たず家に迎えることを決めました。この子にとっても居心地が良いのだと、とても嬉しかったことを覚えています」

嫌なことも一瞬で忘れられる

中村さんは、とらのすけくんを迎えて気持ちが明るくなり、日々の生活が楽しくなった。

「外で嫌なことがあってもとらのすけの顔を見ると一瞬で怒っていたことを忘れ、気分が明るくなるんです」

猫のインスタを始めて猫友もできた。コロナ禍でも猫友の可愛い写真を見たり、いろんな人とコメントをやりとりしたりしていると孤独ではなかった。夫も猫のブラッシングやお風呂、トイレなどお世話を協力してくれるので、夫の良いところも発見した。

保護猫を迎えたことで、外で暮らす犬猫にも興味を持つようになり、大阪市の公園猫サポーター制度やペット業界の数値規制問題についても知った。まだ知らないことが多いので、勉強したいと思っているという。

「色んな立場、考え方があるとは思いますが、日本が弱い立場やもの言えぬ動物に対して、優しい国となってくれるよう、心から願っています」

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