原発や基地周辺の土地…中国による“爆買い”から守る規制を 安全保障リスクは遠い海の話だけではない

治安 太郎 治安 太郎

 与党の自民党は2月半ば、原子力発電所や米軍基地など安全保障的に重要な施設周辺における外国企業や外国人による土地購入の規制を強化する法案を了承した。この法案では、原子力発電所や米軍基地、自衛隊基地などの周辺1キロを「注視区域」、また、司令部がある自衛隊基地や国境離島など特に重要とされる場所を「特別注視区域」に指定し、国は必要に応じて土地・建物の所有者や賃借者の国籍、住所、氏名、活用状況について調査し、利用停止などを要請できる。従わない者には、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金が課される。

 中国やベトナムなど共産圏の国々では、土地は国の所有物として個人が所有できないケースが多い。一方で日本では1925年に施行された外国人土地法が政令で外国人の土地所有を制限できると明記しているが、書かれているだけで実際は自由に買える。実際に近年、中国企業や中国人富裕層による土地爆買いがあちらこちらで起こっている。例えば、中国人観光客に人気が高い北海道では、広大な森林や水源、スキー場や温泉のリゾート土地などで中国人による土地購入が急増している。また、信州を中心に日本アルプスなどでも同様の傾向がみられ、自衛隊基地にも近い場所の土地購入もあるという。

 日本では東京や大阪など大都市の人口が増える一方、地方では人口減少と過疎化が止まらない。地方の土地価格は下落が続き、売れない土地も多い。よって、日本人が買わないことから、地元の不動産会社は中国など海外からの土地購入者に焦点を当てている。筆者の地元で知っている不動産会社の社長は、「若い人はみんな都会に出るから地元には住まない。よって、ターゲットを外国人に当てて地元の活性化に繋げる」と言っていた。また、一度地元に帰った際、多くの中国人観光客を目撃したが、多くの人々は観光施設を訪問していたが、地元の不動産会社を尋ねては交渉している人も少なくなかった。

 今後の日本の繁栄を考えれば、市場も労働力でも日本は外国人を必要としている。よって、外国人による土地・建物の購入でも最大限の自由や権利が与えられるべきである。しかし、国家の安全保障が関わるとなれば、それにも一定の規制が必要ではなかろうか。例えば、米軍施設や自衛隊基地などの周辺においては、バックグラウンドがよく分からない外国人による通信傍受、ドローンを使っての攻撃などは国防上も防止されなくてはならない。自衛隊と米軍との相互運用に関わる情報や対中国戦略などの情報の漏洩などは、安全保障上大きなリスクとなる。

 バイデン政権になり、米中対立はいっそう激しくなる可能性がある。最近では中国海警局に武器の使用を認める海警法が成立し、尖閣問題での懸念が強まっているが、なにも問題は一般人が訪れない海だけで起こっているわけではない。サイバー攻撃同様、安全保障上のリスクは地元の土地建物の購入などより身近な場所でも表面化しつつある。

現在のところ、筆者も佐世保や横須賀、沖縄や三沢など安全保障上重要な施設がある地元の不動産会社に問い合わせや調査を行っている状態ではない。だが、こういった動きは特に近年急速に進んでいると思われ、世論は今後いっそう注視していく必要があるだろう。

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