発酵と腐敗の違い…実は人の都合で決まっている

ドクター備忘録

松本 浩彦 松本 浩彦

 発酵食品、このところちょっとしたブームになっていますね。発酵させた食品は、栄養が体内に吸収されやすくなる。ビタミンやアミノ酸などの栄養成分が生成され栄養価が上がる。風味や旨みが増す。など、良いことずくめです。一方、わぁこれ腐ってる、もう食べられないね。これは腐敗です。

 飲食品を放置しておくと、タンパク質や炭水化物などの成分が微生物の作用で分解され、次第に外観やにおい、味などが変化します。微生物が起こす化学変化の結果が発酵と腐敗。つまり、どちらも同じことなのです。では両者の違いは何でしょう?

 微生物の力によって化学変化を起こした食品を口にしても体の中で悪さをせず、むしろ良い働きをしてくれる場合は発酵、逆に体に害がある場合は腐敗。つまり、人の価値観・視点に基づいて、有益な場合を発酵と呼び、有害な場合を腐敗とする、つまりは人の都合で決めているのです。微生物にとってみれば、ただそこで生命活動しているだけなのです。勝手な話ですよね。

 日本人にとっては馴染み深い納豆やくさやといった発酵食品も、海外の方から見たら腐っていると思われがちですし、逆に『世界一くさい食べ物』といわれているスウェーデンのシュールストレミング(塩漬けしたニシンの缶詰)は日本人から見れば、腐っているとしか思えません。文化の違いで絶対的な線引きが難しいところです。

 一般に腐敗した食品を食べても下痢、嘔吐など特定の症状はみられませんが、これに対して食中毒は、食品衛生上問題となる特定の病原微生物が食品中で増殖、または毒素を生産し、それを食べた人にその微生物特有の症状を起こすことで、これは腐敗とはまた別の観点で区別されます。

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