最後まで生き残れたのは臆病だったから? 野良の子猫を保護、敵意むき出しも時間をかけて家ニャンに  

渡辺 陽 渡辺 陽

野良猫が産んだ4匹の子猫が1匹、また1匹と死んでいった。最後に残った1匹は保護され、保護した人の友人である小川さんの家族になった。子猫とはいうものの、もとは野良猫の子猫なので、とても臆病で触れないほど敵意をむき出しにした。

 

最後に1匹生き残った子猫

2017年1月、神奈川県に住む小川さんの友人は、野良猫の親子を見かけるようになった。子猫は全部で4匹いた。不憫に思った友人は親子猫にごはんをあげていたが、子猫は寒さに耐えきれずに亡くなったり、交通事故に遭って命を落としたりしたという。

次々子猫が亡くなり、最後に母猫と1匹の子猫だけが残った。

「このままでは子猫が亡くなってしまうと思った友人は、動物病院で捕獲機を借り、子猫を保護したのです。その子が後に私が飼うことになるむぎでした」

捕獲機に入った子猫を連れ帰ろうとすると、母猫が友人についてきて、玄関前でずっとニャアーニャアー鳴いていた。

「友人は子猫を母猫から引き離していいものかどうか迷いましたが、もうこれ以上子猫が亡くなるのを見たくないと、子猫だけ保護したそうです」

好奇心が少なく、臆病だったから生き残れた

小川さんは、幼い頃から動物を飼っていて動物が大好きだった。猫を飼いたいと思って探していたが、黒猫の乳飲み子を引き取る予定がダメになり、ベンガルの子猫を貰う予定もダメになり、なかなか縁がつながらなかった。そんな時、舞い込んだのがむぎちゃんをもらってくれないかという話だった。小川さんは、写真を見て、むぎちゃんに一目ぼれした。

2017年2月26日、川崎市から横須賀の小川さん宅までむぎちゃんがやってきた。捕獲機で捕まえられた恐怖や母猫と引き離された恐怖、長時間の移動のストレス。まだ生後4か月のむぎちゃんは、小川さんを見ると精一杯の威嚇と敵意をむき出しにした。

黄金の麦の穂のような毛色だったから、むぎちゃんという名前にした。

「むぎは兄弟と一緒に遊んだりする事はなく母猫の後ろをくっ付いてばかりいたそうです。近所の人がおやつをあげてもむぎだけは近寄って来ず怯えていたそうです。好奇心が少なく臆病な性格だったから生き残れたのかもしれないと思っています」

初日は、まだ子猫なのにうかつに触れないほど攻撃的で、目がすわっていた。その姿を見て、小川さんはなんだかかわいそうになった。

人は嫌いだけど、むぎータッチ!はできるよ

むぎちゃん専用に1部屋与えたが、翌朝「おはよう」と声をかけて扉を開けると、カーテンは血だらけ、網戸にはかじった跡があり、外に出ようと必死で暴れた様子が伺えた。爪はボロボロになり、出血していた。

「本当に心を開いてくれるのか、ちゃんとこの子を飼えるのか、正直不安でした。でも、毎日声をかけ触れ合うと、むぎも徐々に心を開いてくれました。表情も穏やかになり、お腹を見せて寝てくれるようになった時は嬉しかったです」

むぎちゃんは小川さん一家と暮らし始めて4年になるが、相変わらず人間恐怖症。チャイムが鳴ると唸りながら逃げ、人が居る間は絶対に出てこない。

そんなむぎちゃんの得意技は、「むぎータッチ」と言って手のひらを見せると「タッチ」ができること。まるで「にゃんこだって負けてないぜ!」とでも言いたげだ。

家に慣れていたずらも始まった。熱帯魚の水槽に入れる砂を破いてばらまき、小川さんが帰宅するとリビングが砂場になっていたり、観葉植物の土を一生懸命掘って玄関を泥だらけにしたりした。

「むぎを家族に迎えてから、猫ってこんなこともするんだと驚くこともよくありますが、笑いも増え、むぎのおかげで猫の虜になりました」

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