「嫁入り」できずに「ドボン」した? それじゃ「オフダ」がとれないよ…<税務署編>

おもしろ業界用語

平藤 清刀 平藤 清刀

もうすぐ確定申告の時季がやってくる。直接または間接的に、イヤでも付き合わないといけない税務署には、一般人が聞いても理解しづらい用語がさぞかしたくさんあるはず。税に携わるお役所用語を、内部事情に詳しいMさんに聞く。

「税務署」「国税局」「国税庁」は何が違う?

「民間企業にたとえたら、本店と支店または営業所みたいな関係ですかね。財務省の外局として『チョウ』と呼ばれる『国税庁』があって、全国にある国税局と税務署を統括しています。だから、国税庁が本店です」

国税庁の下に「国税局」があって、管内にある税務署を統括している。これが地方の支社といったところ。国税局の下に「税務署」があって、これが税金を徴収する前線部隊。いうなれば、支店や営業所みたいなポジションだろうか。

「そんな感じですね。そして国税庁の上部機関にあたる財務省のことは『お上(かみ)』と呼んでいます」

ところで1987年に公開された日本映画「マルサの女」で一躍有名になった「マルサ」って、どのような組織のこと? 

「映画では東京国税局査察部を『マルサ』と呼んでいて、一般的にもそう認識されています。でも、現場の職員は『ロッカイ』っていいます」

映画では「査察部」の「査(さ)」を丸囲みして「マルサ」とされた。実際には東京国税局の6階にあるから「ロッカイ」と呼ばれたそうだ。もっとも今は移転して6階ではなくなっているそうだが、昔の名残で「ロッカイ」と呼ばれる。

「細かいことをいうと、呼び方は国税局によって違います。ローカルな用語もあるみたいです」

また、国税局のポストには「一番」「二番」「三番」という序列があるらしい。

一番……査察部長⇒財務省のキャリア
二番……査察部次長(内偵調査部門)⇒国税庁のキャリア
三番……査察部次長(実施部門)⇒ノンキャリア

漢字の一部が用語になった「マルゲン」「マルケシ」「サンズイ」「イトヘン」

「文字の一部がもとになっている用語が、いくつかあります」

たとえば「サンズイ」は法人税あるいは法人税法のこと。「法」が「さんずいへん」なので、こう呼ばれる。同じパターンで総務課は「イトヘン」、徴収部門は「ギョウニンベン」、調査部は「ゴンベン」と呼ぶそうだ。

ところが源泉所得税は「源」の字がさんずいへんでも「マルゲン」と呼び、消費税は「マルケシ」と呼ぶ。消費税は「間接税」なので、「間」をとって「ハザマ」と呼ばれていたこともあるという。

「調査に関する用語では『横目』『外観』『内観』『嫁入り』『ドボン』なんていうのがあります」

こうなると元の意味が何なのか、見当すらつかない。

「横目」とは、銀行口座を調べる際に、別件を装いながら本命の口座を調べる手法。「外観」は、査察の対象を外部から調査することで、「内観」は客を装って内偵調査をすること。

そして「嫁入り」は、内偵調査から強制捜査に移ることをいい、「ドボン」とは1年間に1件も「嫁入り」がないことをいう。「ドボン」になるのは調査の仕方に問題があるか、調査対象が本当に不正をやっていないかのどちらかだ。

そして強制捜査のことを「ガサイレ」といい、調査のため臨検・検索・差し押さえを認める令状(裁判所が発行する)を「オフダ」と呼び、強制捜査で押収した資料を「ブツ」という。

このように国税庁・国税局・税務署は、役所関係の用語中、分かりづらさで突出している。

「わざと言い換えているのでしょうね。ふと聞こえてくる会話から『この人たち、税務署の人だ』って分かるかもしれませんね」

最後に余談ながら、筆者の知人で飲食店の経営者から聞いたところ、「内観」は「あ、来たな」と分かるそうだ。「客を装っても、醸し出す雰囲気で分かる」という。

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