雪国の小学校…伝統の「スキー実習」をあきらめて選んだ道は 長年の暖冬にコロナ感染対策が追い打ち

コノコト コノコト

 雪国富山県の小学生にとって、3学期の一大イベントといえば、スキー実習です。ただ、大雪の今年はともかく、近年は暖冬による雪不足で直前に中止が決まり、6年生の思い出づくりができない年もありました。積雪が極端に少なかった昨年から、スキー実習をスケートに切り替える学校も出てきました。さらに今年は、コロナ禍で長時間のバス移動や会食時の対策を心配する声もあり、スケートに固定する学校もあるようです。

 スキー実習は、クラスメートと一緒にバスに乗り込み、遠足気分で始まります。初心者は初めての滑走をしたり、経験者は急斜面に挑んだり、お昼にはみんなで豚汁を味わったりと、富山の小学生には楽しい思い出がいっぱいの行事です。実習の前にウェアや道具をそろえ、家族とゲレンデへ行って練習するなど、家庭を巻き込んだイベントにもなっています。

2時間の練習でスピンも

 しかし、近年の暖冬はウインタースポーツにとって強い逆風です。昨年2月、20年ぶりに富山県内で開かれた「とやま・なんと国体」も雪不足に悩まされました。大会関係者だけでなく、自衛隊にも出動を要請し、雪入れやコース整備をして、ぎりぎり本番に間に合わせる事態になりました。大会中も春のような陽気になり、斜面から雪が消える中でレースが行われました。

 当然、学校のスキー実習も中止になりました。6年生にとっては卒業前最後にクラス全員で出掛ける機会がなくなるため、代わりに増えたのがスケート実習です。県内唯一の施設である富山スケートセンター(富山市萩原)には、問い合わせの電話が相次ぎ、10校以上が訪れました。

 同センターのリンクでは、上田朝子支配人らが指導に当たり、まず安全な転び方を学びます。2時間コースでは、その後、氷上での止まり方や進み方を覚え、片足での滑走、後ろ向きやカーブ走行に挑み、最後に簡単なスピンまで体験します。上田支配人は「子供たちは覚えが早いんです。『私、できている』と達成感を味わえるのがスケートの魅力」と話します。

確実に実施できるので安心

 大雪でスキー場にたっぷり雪がある今年ですが、スケート教室には7校が訪れる予定です。スキー実習は、仮に雪不足で中止になった場合、別の日程を設定し、バスや昼食、指導者を再び手配するのは難しく、あらかじめスケートに決め打ちしておく学校があるのです。富山市内の学校の男性教頭は「学校にとっては、雪の心配をせず、確実に実施できるので安心です」と説明し、来年もスケートを予定しています。

 別の学校では2学期途中まで、コロナの終息状況次第でスキー実習を計画していましたが、12月になってスケートへ切り替えました。女性教頭は「バスでの長時間の移動、昼食時の感染対策など不安はあります。スケートなら午前に滑ってから学校に戻り、給食を食べられます」とリスクの少なさを指摘します。

 長年の暖冬傾向で、スキーに行く機会が少ない児童からは「ちょっと残念」という声もありますが、コロナ第3波で冬の行事実施そのものにあきらめムードが漂う中で「スケートに行けて良かった」と喜ぶ児童もいます。昨年は雪不足でスキーを断念したこの学校。直前中止も覚悟の上でスキーを選ぶか、確実にできるスケートか、教頭は「とても悩ましい微妙な問題です」と話します。

 今年からスケート実習を取り入れた学校の教頭は「午前8時40分にバスで出発して、11時半には戻ってきました。服装や道具もスキーより軽微。初心者が多い子供たちでしたが、とても楽しそうに滑っていました」と教えてくれました。ちなみに、4、5年生はスキー実習を行い、6年生のスケートとすみ分けています。

 今年は記録的な大雪となっただけに、伝統のスキー実習から切り替えることに異論もあります。実名で取材に応じる学校はなかった点も、問題の奥深さを示しています。

楽しい記憶の持ち帰りを

 一方、県内のスケート人口は、五輪などで日本人選手が活躍すると少し増えますが、なかなか持続しません。同センターの上田支配人は「子供は大人より目線が低く、転ぶことへの恐怖心が少ないんです。小学生の時に体験して恐怖心を除いておけば、大人になってからも体が覚えています。まずは楽しい記憶を持ち帰ってもらい、富山のスケート人口を増やしたいですね」と話しています。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース