「どうして関東は左で関西は右?」に“母”は…駅エスカレーターのポップが話題 ネタに込めた駅員の願い

広畑 千春 広畑 千春

 突然ですが、エスカレーターに乗るとき、どこに立っていますか?昨今、エスカレーター歩行中の事故増加に伴い「歩かないで」「2列でお乗り下さい」というアナウンスもされていますが…この身体に染みついた習慣、なかなか抜けないもの。しかも急いでいる人から無言の圧を感じることも、しばしば…。

 そんな中、「何とか立ち止まってもらいたい」と駅員が知恵を絞った、阪神電鉄新開地駅(神戸市兵庫区)のエスカレーターのポップがネット上で話題を集めています。

 きっかけになったのは、滋賀県の大学生、アズサネ(@higashi_neya)さんの1月25日のツイート。「最後でバカ笑ってる」と写真を添えてつぶやいたところ、これまでに15.2万以上のいいねを集めています。

 くだんのポップは、ホーム西側の上りエスカレーターにあり、表裏で計6枚。乗ってみると「ねえ、お母さん!」と、何かとお堅いイメージの公共交通機関らしからぬ、なんとも言えないユル~い文面の注意喚起が次々と。母と娘のほのぼのとした会話形式で、最初はエスカレーターで歩く危険の具体的な説明が書かれています。ふむふむ…そうなのか…。

 次に、エスカレーター“あるある”の東西片側空けネタ…。引っ越しや旅先で誰もがハマりそうな罠ですが、これに母、「阪神-巨人のようなものよ」って、まさかの返答…。そして最後は「いつまでこのアイキャッチ続けるの?」という、いかにも子どもらしい豪速球が投げ込まれ、負けじと母も打ち返しています。

乗り換え、急ぐ乗客も多く…

 新開地駅は阪神・阪急・神戸電鉄の駅で、1日乗降客数は約2万3千人。また約3万人が大阪・神戸のほか、相互乗り入れする山陽電鉄を通じ姫路方面から神戸電鉄に乗り換えており、「発車間際などはどうしても、急いで上るお客様が少なくありません」と助役の北村尚三さん。「エスカレーターを歩いて転倒する事故や荷物がぶつかるトラブルも目立ち、自動放送やポスターで啓発してきましたが、どうしても流してしまいがち。お客様が自ら『何コレ?』と注目することで立ち止まって頂けたら」と昨年11月、第1弾のポップを投入。その後1カ月ごとに更新しており、今回のポップは「3代目」だそうです。

 「最初は『エスカレーターは立ち止まってご利用ください』『この短いエスカレーターを急いでも数秒しか変わりません』と文面も割と真面目で、枚数も今より多い8枚でした。最後に『あと少しの我慢~っ!そのままぁ~、そのままでぇーっ!』と歌舞伎役者のイラストを配置したものは好評だったんですが、いかんせん8枚だと読むのが追い付かなくて…。その反省から第2弾は文字数も枚数も減らしました」と北村さん。その後、偶然「なんで歩いたらダメなの?」という幼稚園ぐらいの女の子と母親の会話を聞き、「会話形式の方が面白いかも!」と思いついたそうです。

 文面は、北村さんが原案を作り、社内の顧客満足度(CS)担当が「お客様に怒られないレベルかどうか」を厳密にチェック。「大阪生まれ、大阪育ち、神戸在住のなんちゃって神戸人、もちろん阪神ファン」(北村さん)として“らしさ”を追究し「オチだけはスマートにしたつもりです」。設置も朝3時に起きてエスカレーターを動かす前に取り付け、ちゃんと読めるか、テンポはどうか、光の加減は…など地味で地道な確認を経て、掲出したそうです。

はじけすぎ? 気になる駅長の反応は…

 今回、このはじけた文面が大きな話題を呼んだことについて「弊社の公式アカウントはいつも『いいね』が50ぐらいですから、途中から怖くなって…(笑)。次は何するんや…とハードルがどんどん高くなるのを感じますし、一方でどの辺りまでがお客様にも駅長にも怒られないのか…。ただ、お客様に楽しんで頂けたなら、何よりです」と北村さん。元のツイートをしたアズサネさんも「真面目にふざけるのは大好きなので、この反響に免じ、駅長さんはどうか怒らないでいただきたいです」とも。

 という訳で同駅の足立信久駅長を直撃してみると、「まあ、あんまり真面目過ぎても面白くないですし。あれぐらいやったらイケるやろとは思ってましたけどね(笑)」と太っ腹なご回答でした。

 そうそう、肝心のエスカレーターを歩いて上がる人も、以前より減っているそうです。バズったので更新は少し延期するそうですが、次作もこうご期待、です。

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