「特別支援学校」ってどんなところ?…子ども1人1人にあった手厚い教育、授業内容や1日のスケジュールを紹介!

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我が子の発達が気になる、知的障害がある…というお子さんの進学先のひとつとして、特別支援学校が挙げられます。少人数クラスに対して先生が複数ついたり、子ども1人1人に合った指導や療育を行ってくれたりと、非常に手厚い教育を受けることができます。特別支援学校ではどんな学習や指導が行われているのか、加えて特別支援学級との違いも解説しながら、「特別支援学校とはどんな学校なのか」にスポットを当てて紹介していきます。

特別支援学校ってどんな学校?

特別支援学校とはどんな学校なのか、生徒何人に対して先生が何人くらいつくのか、指導や支援の特徴などを、分かりやすく紹介します。

【どんな学校?】

文部科学省が定めるところによると、特別支援学校は次のように定義されています。

「障害のある幼児児童生徒に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けること目的とする学校」

心身に障害がある、あるいは大きな病気を患う児童生徒が通う学校で、小学部、中学部、高等部があります。それぞれの学齢に準じた教育を受けながら、「生活していくための自立力を養う」をメインに、児童個人のタイプやスピードに合わせながら、知識や能力を身につけることを目的としています。

主に、聴覚障害、視覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱・虚弱体質の子どもが入学できますが、基準としては、「着替えや排せつなど、生活を自分で上手く行うことができない」「社会生活が非常に困難である」などが挙げられます。

【先生の配置人数は?】

2020年度文部科学省資料〔特別支援教育の現状〕によると、小学部および中学部では1クラスの生徒数は6人、高等部では8人を標準として、教育委員会が教員の配置について決定します。ほとんどの学校が、1クラスに対し担任2人体制となっています。なお、障害を2つ以上併せ持つ児童(重度重複)の学級は、1クラスの児童数が3人となり、基本的に担任も2人つきます。

【どんな指導や支援が受けられるの?】

▽「自立活動」の時間がある

日常生活や社会生活を送るうえで、1人でできることを育む、促す時間があります。たとえば、肢体不自由の子には、運動やストレッチ、あるいは器具を使って、体の可動域を増やしていきます。また、自閉特性の強い子には、絵カードやジェスチャーなどを使って、コミュニケーション力を高める練習をします。障害があっても、生きやすくするための支援を手厚く行います。

▽生徒一人ひとりに合わせた教材

文字を大きくしたり、イラストを多くしたり、簡単な言葉を使ったり、一人ひとりの障害に合った教材で学習を進めていきます。読めない・書けない・わからないというストレスをなくしながら、学びたいという意欲を伸ばす工夫もしています。

▽学校設備が充実している

教室の配置、階段の手すり、バリアフリーなど設計上にも配慮しているので、移動しやすく、多動な子でも大きなケガを防ぐことができます。タブレットや補装具(歩行をサポートする器具)、補聴器具、音声表出コミュニケーション装置など、障害をサポートする設備が充実。「子どものできること」を増やしてくれます。

▽療育や保護者との連携も細やか

手足や指先の動かし方の訓練、発語指導など、児童に個別で指導する時間が設けられています。また、保護者に向けて、正しい療育の行い方や、遊びの工夫、発語の増やし方など、個別で相談・助言を行います(療育相談という)。

特別支援学級との違いは?

ここでは、「特別支援学校」と「特別支援学級」の違いを簡単に解説します。

特別支援学校が障害のある子のみ在籍する学校であるのに対し、特別支援学級は障害のある児童のために、通常の小学校や中学校内に置かれる「学級」のことで、「通常学級では少し学習や理解、生活が難しい」という児童を対象に、少人数制のクラス(1クラスの児童数の基準は8人、担任1人、介助員1~2人)で授業を行い、一人一人に合わせた適切な学習を行うことを目的としています。

また、特別支援級は教員免許だけで担当することができますが、特別支援学校では「特別支援学校の教員の免許」を持つ教員がほとんどです。障害への理解や知識が深いので、障害を持った子どもへの適切な関わりや保護者と意思疎通がしやすいというメリットがある、といえます。

最も大きな違いは、特別支援学校が「生活上の自立を図ること」を目指しているのに対し、特別支援学級は「個々に合わせた学習教育を行うこと」を目指していることといえます。

特別支援学校の1日のスケジュールはこんな感じ

ここでは、ある特別支援学校小学部1年生の1日のスケジュールを紹介します。子どもの様子などもうかがってみました。

【クラスの規模】

児童6人に対し、担任2人体制

【1日の時間割と内容】

▽1時間目:日常生活の指導

毎日この時間に、全員体操服に着替えます。上手な着脱法(自分なりにやりやすい方法)、脱いだものを所定の場所に畳んでしまう。毎日持ってくるエプロン、布巾などを、自分の棚にキレイにしまう。トイレに行ったり(排泄練習)、手を洗ったりも、この時間に行います。毎日毎日同じことを繰り返すことで、しっかり身につけていきます。

▽2時間目:遊びの指導(自立活動)

この日は、校庭で砂遊び。全員で一緒に大きな砂山を作る、小さな型で「砂プリン」を作る、ということを通し、「自由な時間の中で、同じ場所同じ空間で同じことをする」ことを身につけることが目的です。

▽3時間目:音楽

この日は、ハンドベル。「チューリップ」の歌に合わせながら、1人1音のハンドベルを、その音のときに鳴らす練習をします。もちろんその都度一人ひとりに合図を送ったりして、何度も何度も練習します。「音を聞いて、自分の順番を守りながら、耳と手と頭を使う」訓練になります。

▽4時間目:国語・算数(自立活動)

6人を3人2グループに分け、対面学習。この日は1グループは「型はめ」。簡単な形から、だんだん複雑な形、ピースを多くしていくなど、少しずつ難しいことに取り組みます。もう1グループは、「運筆練習」。直線、波線、ひと筆で書けるひらがななど、丁寧になぞる練習です。「頭と手を使って学習を進める」ほか、「時間内にじっと座って頑張る」という訓練にもなります。

▽給食

エプロンを着る、布巾を濡らす、からスタート。「人の分を適量お皿に盛る」などの配膳は難しいので、配膳されたものを自分の机に運ぶ練習をしています。自分で上手に食べられる子もいますが、うまく一口分すくえない子などを介助しながら食べ進めていきます。
片づけは、お皿を重ねる、エプロンを脱いで畳んでしまうなど、できることをします。

▽14時下校

スクールバスに乗る子、放課後デイ(障害児の放課後預かり施設)が迎えに来る子を正門で見送ります。

先生が工夫していること、気をつけていることとは

知的障害や発達障害を抱える子どもたちを指導・支援する際、先生たちが日ごろから工夫していることや、気をつけていることを紹介します。

【言葉掛け】

▽気分にムラがあったり、できない!と癇癪を起す子も多いので、「〇〇しなきゃダメだよ」ではなく「〇〇できたら、最高だね」「嬉しいよね」と、笑顔で気分を上げながらやることを促すようにしています。

▽ことばの指示がなかなか難しいので、伝わりやすいよう、短めに、その都度一言で言うようにしています。「靴、履くよ」「畳むよ」「そこに入れるよ」など。「あなたに言っているんだよ」と分かるよう、必ず目をしっかり合わせることもポイントです。

【体をいろんな方法で動かす】

障害のある子は、体の動きが硬かったり、可動域が狭いことが多いので、「後ろ歩き」「キャスターボード(キャスターのついた板の上に腹ばいになって手で漕いで進む)」「ビーズ紐通し」「粘土を丸める」など、いろいろな手や足、指先の動きを身体で覚えこむようにしています。

【何事もその子に合わせ、スモールステップで】

どんな作業や学習も無理に進めようとせず、その子のペースや状態に合わせ、出来なかったら次のとき、出来たら、ほんの少しだけスモールステップで進めるように心がけています。

「できた!次もやりたい」という気持ちになれるよう、いい状態で終われるよう気をつけています。

【集団の力を利用する】

集団にいい感じで巻き込まれる。これは学校でしかできないし、すごく大きな力なんです。たとえば、「直線コースを走って、ゴールでほかの子を待つ」ことは、障害のある子にとって最初は難しいのですが、友達が一緒だと、何となく流れに乗ってできてしまう。
また、教室の隅でグズって大泣きしてどうしようもなくなったとき、少しその子から離れます。目をかけつつも、ほかの子とほかの遊びを始めると、「なんだろう…僕もやろうかな」と集団に巻き込まれながら、気持ちが切り替わっていく。集団の流れに乗るとできるようになることって、意外と多いと思います。

   ◆   ◆   ◆

障害のある子の就学先。「この子に合った環境の学校はあるのか」「この子の何を伸ばしたいか」など、悩みは尽きないと思います。
公立だと学区などで行ける学校はある程度限られてしまうかもしれませんが、私立などにも目を向け、幅広く選択することも可能です。学校にもそれぞれ特色があり、子どもが楽しみながら自分の力を伸ばしていける対応や工夫をしています。

ひとりで抱え込まず、子どもと一緒に学校へ見学に行ったり、先輩ママや自治体の就学相談で話を聞いたり、あるいは保育園や幼稚園の先生・(いれば)担当医などに相談しながら、「ここならいいかも!」と親子で思える教育環境を考えていきましょう。「我が子が笑顔でいられる場所」、それが一番大切だと思うのです。

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