文通していたお兄さんは「天文学者」になっていました…天文ファンの少年ら、35年以上を経てSNS上で再会

竹内 章 竹内 章

実家に届いた天文学の新書。天文雑誌を通じて文通していたお兄さんは、天文学者になっていました―。Naoki Ueda(上田直生)さん(@naokiueda)がツイートした翌日、天文学者も文通相手についてつぶやいていました。〈今は3児の父、エンジニアで天体観測を続けているそうだ〉。35年以上を経たSNS上の“邂逅”は、星と宇宙のロマンのようです。ツイッター、素敵な話をありがとう。 

上田さんは中学生のころ、ボイジャー1号の木星接近のニュースをきっかけに天体に関心を持ったそうです。2、3年のころ天文雑誌のペンフレンド欄を介して、信州在住の高校生と文通を始めました。

雑誌で特集された手作りの望遠鏡に挑むなど天文少年だった上田さん。「お兄さん」と呼ぶ文通相手からは質問に丁寧な返事が届き、野辺山宇宙電波観測所(長野県)の写真が送られてきたことも。ひんぱんなやりとりが続きましたが、高校進学後に文通は自然消滅しました。

12月のある日、実家に封書が届きました。封を開けると、天文学の新書と著者からの手紙。「覚えていないかもしれませんが」と前置きした上で、天文学者になったことがつづられていました。遠い日の記憶が鮮やかによみがえり、フェイスブックで連絡を取り、この投稿をしたそうです。

「お名前を検索して驚いたのは、お兄さんのこれまでの著書を知らずに読んでいたことです。文通が終わった後も、つながっていたのかと思うと不思議ですね」と上田さん。天体への関心は失せることなく、休日の夜はマンションのベランダに望遠鏡を持ち出して、夜空に時間を忘れるそうです。 

この天文学者は、兵庫県立大学西はりま天文台の天文科学専門員(理学博士)、鳴沢真也さんです。

天体物理学が研究テーマで、SETI(地球外知的生生命探査)にも興味があり、著書に「望遠鏡で探す宇宙人」などがあります。「リツイートやいいねが、見ている合間に次々と増えていったので何事かと思いました」と驚く様子の鳴沢さんに聞きました。

―なぜ本を送ったのですか。

「この夏に帰省した時、古い書類の整理をしていると彼からの手紙を見つけました。今どこで何をしているのかなと懐かしくなり、機会を見つけ手紙を書こうと思いました。12月に本を出すので、本と手紙を送ろうと思ったわけです」

―そしてSNS上で再会が…。

「上田さんはフェイスブックで私を検索してコンタクトしてくれました。『もしかして子供時代に天文雑誌経由で文通していただいてたお兄さんでしょうか』『あー!上田さん!そうです!そうです!コンタクトできて嬉しいです!!』と。元気で何より。3人のお子さんのパパになっていたことも時の流れですね」

―文通していた当時、「お兄ちゃん」と呼ばれていたそうです。

「天文に興味を持つ知人がいなかったので、上田君と意気投合しました。ちょうどハレーすい星が接近する頃でしたので、そんなニュースも話題になりました」

―上田さんがこれまで読んだ書籍の中には鳴沢さんの著者が本もあったそうです。

「お兄ちゃんとは知らなかったと思いますが、読んでくれうれしいです。中学生の上田君は望遠鏡を自作し、カメラ冷却の電子回路図も書いていました。親に買ってもらった望遠鏡で観察するばかりの私はいたく感心しました。今回手紙を出す時も、ひょっとして今はエンジニアになってるかな?と思ったら、やっぱりでした。天文も続けているそうですごくうれしいです」

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上田さんが住む街と西はりま天文台は少し離れていますが、遠距離というほどではありません。「今はSNSのやり取りだけ」という二人はリアルな再会を楽しみにしています。

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