「えっ、壁が赤い。何これ」。東京都内のJR中野駅を利用している女性会社員は、エスカレーター上で思わず後ずさったそうです。ほぼ実物大のカニの写真パネルが無数に張られ、ひしめいています。正体は、JR東日本が展開中のキャンペーン「北陸新幹線に乗って『かにを食べに北陸へ。』」のディスプレーでした。SNS上では「大量発生、軽くホラー」と引き気味の声や、逆に「食べ尽くしたい」と称賛するコメントが交錯し、話題を呼んでいます。
「ザワザワする」「美味しそう」
カニの壁は、JR中央線のホームからエスカレーターで降りる途中にあります。壁に張られたカニの写真パネルは約100枚。50代の女性会社員は「えっ、カニなの」と驚き半分、恐怖半分だったそうです。
撮影してSNSに投稿したところ、「コレはキツいゎ、わたしもむり」「ギャー!ザワザワする」とのコメントが寄せられました。一方で、「いっぱいいる〜美味しそう〜」「これは絵なの?それともディスプレー?すごいなー」との声もありました。
キャンペーンはJR東が10月から来年3月末まで行っています。コロナの影響が落ち着いたら、秋から冬が旬のベニズワイガニやズワイガニ、富山湾の高志(こし)の紅(あか)ガニなどを味わうために、ぜひ北陸へ足を延ばしてもらおうという趣旨です。首都圏の列車内や駅、ウェブサイトでPRしていて、旅行ツアーや団体臨時列車、お得なチケットなども企画しています。
ポスターのインパクト大
10月のキャンペーン開始当初からTwitterをにぎわせたのが、ユニークなポスターでした。カニが新幹線の車体におんぶしていたり、パソコン画面に映る富山湾越しの北アルプスの絶景を食い入るように眺めていたり…。キャッチコピー「このおいしさはオンラインじゃ伝わらない」なども、カニからのメッセージを代弁していると話題になり、「Yahoo!」のトレンドランキングにも入りました。4万リツイート、10万以上の「いいね」を獲得しました。
中野駅に「カニの壁」が出現したのは、やや遅れて11月中旬からです。駅員さんら5人が業務の合間に、ズワイガニの写真を紙に印刷して切り抜き、ラミネート加工して作り上げました。イメージしたのは水揚げのシーン。ポスターを囲むようにびっしりとラミネート加工したカニを張り付け“大漁”の雰囲気になりました。
ディスプレーに誘われ「行ってきたよ」
駅の担当者は以前、北陸を旅した際にズワイガニ料理を食べ、身の甘さとうまさに感動したそうです。その体験をもとに、「北陸のカニのおいしさを味わってほしい」と考えながら、仕上げました。その思いが通じたのでしょうか、ある日、改札で「あのディスプレーを見て、北陸へ行ってきましたよ」という乗客の声が寄せられたそうです。
ディスプレーをSNSにアップした女性会社員は「カニはお正月に食べるくらいだけど、コロナ禍が終わったら、行ったことがない北陸を旅して味わいたい」と心は北陸路へ。コロナ禍で旅行業界も影響を受けているものの、JR東は「『毎年、旬のカニを食べに北陸へ行こう』と思っていただけるよう、引き続き情報発信していきたい」と話しています。展示は来年3月までの予定です。