胃に石や砂がぎっしり…虐待され保護された子猫、里親が決定 保護主「辛い思いをした分、幸せになって」 

渡辺 晴子 渡辺 晴子

今年7月下旬、動物の虐待・虐殺などが相次いでいた滋賀県内で保護された茶トラの子猫・むうくん(雄)。このほど里親が無事に決まりました。同じ時期に保護された仲良しのごんたちゃん(雌)とともに里親さんの元で既に暮らしているといいます。

背中には切り傷、下半身が動かない状態で見つかったむうくんは、胃の中には石や砂が詰め込まれるなど虐待されたとみられる子猫でした。そんな辛い思いをしたむうくんの里親が見つかり、保護主の『もよまま』さんも「里親さんとは譲渡までにいろいろやり取りしながらお話しさせていただきました。単純に『かわいい子猫だから飼いたい』といった気持ちではなく、『(むうくんとごんたちゃんと)一緒に生きていきたい』という強い思いが伝わり、大切な"我が子"たちの譲渡を決めました。辛い思いをした分、むうくんたちには幸せになってもらいたいです」と喜んでいます。

譲渡の2匹は殺処分対象だった・・・動物愛護推進員が引き取る

今回里親が決まったむうくんとごんたちゃんは、12月で生後6カ月ほど(推定)。保護された当時、滋賀県の動物保護管理センターで殺処分対象の子猫たちだったといいます。殺処分の対象となるのは、体重450グラム以下で負傷していたり、病気などにかかったりしている猫。対象となった猫たちは一般譲渡ができません。ただ、動物愛護推進員のみが引き取る権利を持っているそうです。そのため、滋賀県の動物愛護推進員でもある『もよまま』さんは、7月初旬にごんたちゃんを、下旬にはむうくんを動物保護管理センターから引き取ることができました。

引き取った当時、重傷を負ったむうくんは、下半身がまひをして歩けませんでした。通院をしながら、『もよまま』さんの作ったリハビリ車いすで歩行の練習をしたり、マッサージを受けたりして1カ月たつと歩けるように。9月には、仲良しのごんたちゃんと一緒にキャットタワーに登れるまで回復していました。

「里親募集の記事を読んだ」と埼玉の女性から連絡、一度は断ったが・・・

里親の問い合わせがあったのは9月末とのこと。むうくんの生い立ちや里親募集などを紹介したネットニュース記事を読んだという埼玉県の女性から『もよまま』さんのところに里親を希望する連絡が入りました。

「最初は遠方で1人暮らしの方だったので、一度お断りをしたんです。にもかかわらず、女性は私のところに埼玉から『会いに行きます、それで決めてほしい』とのことでした。ただ、コロナ禍だったこともあり、遠方から来ていただくのは申し訳ないので、埼玉の私が信頼している友人のボランティアさんに面談をしていただくことになりました」と『もよまま』さん。

さらに「面談だけではなく、ボランティアさんのご自宅で猫に関する勉強もしていただいて。終始真摯な姿勢で取り組まれたそうで、ボランティアさんからは『(里親として)申し分ない』とのこと。それからいろいろお話をさせていただくうちにむうくんたちのことを真剣に考えてくれているなと感じました。猫の多頭飼いができるマンションにも引っ越す予定があるとも伺い、ぜひ里親さんになっていただこうと決めたんです」と話します。

「ありのままを受け入れたい」という女性の言葉に譲渡を決意

ただ、むうくんを里親に出すことに当初心配なことがあったという『もよまま』さんは「私にはとても懐いていましたが、自宅にいらしたお客さんにはいつも威嚇していました。これでは里親さんに懐くには時間が掛かりそうだと・・・また、むうくんは他の猫と比べて口臭があったり、食も細かったり。よろけて転ぶこともありました。いろいろ不安なことがあったため、譲渡に慎重になっていました」と振り返ります。

そこで、不安なことを全て埼玉の女性に伝えたところ、返ってきた言葉に信頼の置ける人だと思ったそうです。それは「他の子と比べて少し違うところがあるかもしれない、少し口は臭いかもしれない、転ぶかもしれない、トイレを失敗する日もあるかもしれない、でもそれも他の子と比べればの話です。私はむうくんとごんちゃんのありのままを受け入れたい」。その言葉を受け取った『もよまま』さんは、譲渡を決意したといいます。

11月末に里親さんの元へ送り出す 保護主「別れは辛かったが、新たな命も救えるはず」

譲渡を決めたあとは、2匹とも血液検査、ワクチンなど譲渡前診察や、むうくんに関しては去勢手術を行いました。偶然にも、かかりつけ医の友人の獣医師が里親さんの自宅近くにおり、獣医師同士で連絡を取り合い引き継ぎしてもらったといいます。このほか、むうくんたちが遊んでいたお気に入りのキャットタワーなど使っているものや食べているもの、好きなものについて里親さんに写真を送り説明するなど、入念に準備を進めてきたそうです。そして、めでたく11月末に里親さんの元へ送り出しました。

むうくんたちは埼玉のボランティアさんを通じて里親さんの元へ譲渡されましたが、その日は大泣きしたという『もよまま』さん。「もともと『保護活動辞めるならこの子らを残したい』と思っていたくらいむうくんたちをかわいがっていました。正直別れが辛かったです。でも、この子たちを里親さんに送り出せればまたむうくんやごんちゃんのような子たちを救えるはずだと考えました。私が納得して譲渡を決めた里親さんですから、きっと私の何倍も幸せにしてくれると思っています」と笑顔で話します。

今後について「これまで里親さんに譲渡した数は100件以上、里親に出したあとも、連絡を取り合ってご相談を受けたりしています。私自身は保護活動者と里親さんというよりも、お互いに気兼ねなく連絡を取り合える親戚のような関係性でいたくて。むうくんたちの里親さんともそんな関係を築いていけたらうれしいです」。

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お気に入りのキャットタワーも購入 里親さん「私を選んできてくれてありがとう」 

今、むうくんとごんたちゃんは仲良く里親さんと一緒に暮らしているそうです。むうくんたちが安心して暮らせる環境を整えようと、「むうくんたちの好きなご飯はもちろんのこと、お気に入りだというキャットタワーやトイレなども同じものを購入しました。特にむうくんは下半身が弱いですので、キャットタワーの登り降りの際に転ばないよう台を横付けにしたり、転んでも痛くないようにじゅうたんを敷いたりしています。『もよまま』さんのご友人のボランティアさんからも、登り降りをしやすいようタワーに階段を付けるといいとアドバイスをいただいていますので、付ける予定です」と里親さん。「今は生まれてきてくれて、そして、私を選んできてくれてありがとうという感謝の気持ちでいっぱいです。これから一緒に楽しく暮らしていきます」と話しています。

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