「これぞ!富山」立山連峰をバックに着陸する飛行機 カレンダーに込めた写真愛好家たちの思い

北日本新聞 北日本新聞

 コロナ禍で利用が低迷し、苦境に陥った富山空港や就航する航空会社を応援しようと、富山市の航空写真愛好家4人が作った2021年のカレンダーが注目を集めている。地元ならではの情景と飛行機を絡めた写真がそれぞれの月を彩り、旅情がかき立てられる。4人は「空の旅ならではの魅力を感じ取ってもらい、コロナが落ち着いたらぜひ利用してほしい」と呼びかけている。

 制作したのは、村田正和さん(52)、木村まり子さん(49)、真野寛生さん(38)、野尻将樹さん(28)の4人。飛行機撮影が縁で知り合った。美しい景色とともに機体をファインダーに収めるとなると撮影場所は限られてくる。絶好のポイントに偶然居合わせたことがきっかけだ。

 富山ならではの景色続々

 カレンダーは、富山空港と機体を東西南北、朝、昼、晩と異なる場面で切り取った4枚が一つになった表紙から始まる。雪に覆われた立山連峰をバックに飛行機が上昇していく2月、満開の桜の上を飛んでいく4月…。どの月も富山ならではの美しい景色と機体が一体となった4人の自信作が収められている。富山空港は全国でも珍しい河川敷にある空港。6月は神通川のせせらぎが聞こえそうな清流を手前に据え、山並み、青空とパノラマで捉えたダイナミックな景色の中を飛ぶ全日空機をとらえるなど、他県では撮れないような写真も多い。

 注目は1月だ。オーソドックスに考えるなら、新年の幕開けに合わせて勢いよく飛び立つ飛行機を使うところだが、あえて、これから着陸するという場面を選んだ。新型コロナウイルスの感染拡大で、不安に包まれたこの1年。意識したわけではなかったが、4人のまとめ役である真野寛生さんは「今になってみると、物事が万事収まってうまく着地したところから新年が始められるようにとの思いがあったかもしれませんね」と話す。

見送り一転「作ろう!」

 実は、カレンダーの製作は昨年に続いて2回目。最初は北陸新幹線の開業で利用が低迷する空の便を応援しようと取り組んだ。好評を受け、今年も作る予定にしていたが、コロナで状況が一変。外出さえもはばかられるような状況に、仲間内で「今年は見送ろう」との雰囲気になっていた。秋に入って声を上げたのがメンバーの1人、木村まり子さん。「空の便が厳しい状況だからこそ、応援しなきゃ」。1日4往復だった主力の全日空富山―東京便は、2往復に減便され、札幌便や国際線の中国・大連便と上海便、台湾便は、ずっと運休が続いている。ことし4~9月の上半期でみると、東京便の利用者は前年から9割減となり、路線の存続すら危ぶまれる状況に追い込まれていた。

 コロナで大幅に利用が減った影響は意外な形で撮影にも表れていた。時速300キロで飛ぶ飛行機を美しい風景とともにとらえるには、風向きで変化する離着陸方向や太陽の向きに合わせてアングルを固める必要がある。何年も空港に通う中でおおよその位置が分かるようになったが、今年は経験が通用しないことが多かった。離陸の姿を収めようと待ち構えていると、飛行機はいつもよりかなり上を飛んでいく。真野さんは「機体が軽いから、いつもより高く上昇していくのでしょうね」と振り返る。乗客が相当減っていることを実感したという。

  4人は「こんな状況だからこそ、作る意味がある」と思い直し、製作をスタート。過去に撮ったものも含めて候補の作品を出し合い、構成を決めていった。カレンダーを通じて「富山に行ってみたい!」と思う方が1人でも増やすことができれば、コロナが落ちついた後の経済活性化にも貢献できるという願いも込めた。

 カレンダーは、A3サイズで製作。より多くの人に使ってほしいと価格は、実費のみの1540円(税込み)とした。4人の取り組みに富山空港側も反応。運営を担う富山空港ターミナルビルは50部を買い取り、売店「まいどは屋」に専用のコーナーを設けた。

 手頃な価格と美しい写真が好評で、売れ行きは好調という。同ビルの下川雅一専務は「せっかくの良い取り組み。私たちも応援したい」と喜ぶ。メンバー4人は、少しでも富山空港の魅力を知ってもらいたいと手ずから売るとともに、自身のSNSも駆使してカレンダーを発信している。

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