「娘同然」フェレットが、誕生日に行方不明 飼い主「こんなお別れはつらすぎる」…車で仮眠し探し回る日々

天草 愛理 天草 愛理

 「フェレットを探しています」。SNSなどを通じて迷子になってしまったペットの目撃情報を求め続ける女性がいる。フェレットがいなくなったのは10月25日。くしくもフェレットの7歳の誕生日だった。SNSなどに並ぶ「7年間家の中で娘と同じように育ててきました」「非通知でも、何時でも(電話に)でます」という言葉に深い愛情がにじむ。フェレットはどこへ行ったのか。無事を信じて行方を探し続ける女性に話を聞いた。

 京都市北区に住む田端かつみさん(50)は、憔悴しきった様子だった。メスのフェレットのマーブルが失踪してから3週間以上。仕事はほとんどキャンセルし、車の中で仮眠を取りながら町中を探し回る日々だという。

 この日、道を歩いていると、近隣住民が声を掛けた。「まだ見つからんか。夜に歩いて探したりしてるんやけどなあ」。田端さんは「ありがとうございます。もし見かけたときはよろしくお願いします」と頭を下げた。

 通りがかったコンビニの路地や民家の庭に目を向ける場面もあった。「もしかしたらいるかもと思って…。こういうところ、マーブルは好きなので」。迷子になった娘を懸命に探す母親のようだった。

 フェレットはヨーロッパケナガイタチという日本名の通り、イタチ科の小動物で、ペットとして人気が高い。

 マーブルは2013年、長女恵梨惟さん(19)のクリスマスプレゼントとして田端さん一家の元にやって来た。恵梨惟さんのことが特に大好きで、いつもくっつくようにして眠る姿がほほえましかったという。家族の気持ちに敏感で、田端さんが疲れたときは寄り添ってくれたこともあった。

 10月25日、田端さん親子はマーブルを連れて近所の今宮神社に参拝した。マーブルが無事に7歳を迎えられた感謝の気持ちを伝えた後、誕生日ケーキを買いに行く予定だったという。

 自宅に車を取りに行った恵梨惟さんを待つ間、田端さんはマーブルを散歩させてあげようと考えた。午後5時半過ぎ。外は既に暗かったが、これまでどこかへ行ってしまったことはなかったため、安心しきっていた。

 マーブルは境内の植え込みの中に入っていった。かさかさという音が聞こえたため、出てくるであろう場所に回り込む。「危ないよ」と抱き上げようとしたが、そこにマーブルの姿はなかった。

 戻ってきた恵梨惟さんや駆け付けた友人、たまたま居合わせた参拝客らとともに朝まで捜索したが見つからなかった。「歩きにくそうでかわいそうだから」とリードを付けなかったことを「私の不注意でミス」と悔いる。

 翌日、通行人に聞き込みするなどして目撃情報の収集を始めた。「帰巣本能はない」と聞いていたため、数日間は今宮神社周辺を探していたが、その間、目撃が相次いでいたのは意外にも自宅近くだった。コンビニやスーパーの自動ドアの前で見かけた人もいた。

 マーブルはこれまでも、歩き疲れると、自宅マンションの自動ドアの前まで自ら戻ることがあったといい「自動ドアの前にいれば家に帰れると思ったんかな。家に帰りたくても私たちがいないから帰れない。『悪いことをしたな』と胸が痛いし、すれ違いになっていて歯がゆいです」と田端さんはもどかしさを口にする。

 現在は北山通を越え、さらに北にある久我神社周辺の民家でよく目撃されている。気は休まらないものの、地域住民に加え、SNSで知った人が大阪府から来て捜索してくれるなど、人々の厚意に助けられているという。

 チラシを渡すと「何日か前に見た」と言われ、時間差に悔しさを感じる瞬間も多い。「その場で情報をもらわないと移動してしまうのでとにかく早く情報が欲しいです。可能性があるところを探したい」と力を込める。

 マーブルは体長20数センチ。左前歯が欠けていて短く、鼻はピンク色でよく見ると斑点がある。尻尾の先の毛が加齢により薄くなっている。ワクチンは接種済みで、かんだり引っかいたりすることもないという。カラスが天敵で暗くて狭い場所を好むため、雨どいや軒下、植木鉢、落ち葉、バイクカバーなどに隠れている可能性がある。「見つけた場合は捕まえて段ボールなどに入れてもらえるとうれしいです」と田端さんは話す。

 「去年の6歳の誕生日も誕生日ケーキでお祝いして今年もできると思っていたのに、誕生日に会えなくなってしまって…。でも、私も娘も諦めていないというか、マーブルが生きていると思っていないとやっていられない。命を閉じるまで一緒にいたいと思っているのでこんな状態でお別れするのはつらすぎる」と田端さんは心境を吐露した。マーブルに似た小動物を見かけた人や保護した人は田端さんのツイッターアカウント@kyoto_ferretまで。

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