大統領選後、アメリカでGAPのパンツ売り上げが急増した理由 1人のジャーナリストの存在

谷口 輝世子 谷口 輝世子

米大統領選の開票直後から、アパレルブランドGAPのカーキパンツが急に売れるようになったという。12日付のロサンゼルスタイムズ電子版は、GAP広報担当者が「ストレートフィットのパロミノブラウンカーキパンツのオンラインの売り上げが90%増えました」という回答があったと伝えている。

なぜ、米大統領選がGAPのカーキパンツの急激な売り上げ増につながったのか。

米国の政治ジャーナリストで、米MSNBCテレビ局で選挙速報を伝え続けたスティーブ・コルナツキ氏がSNSで注目されたためだ。

コルナツキ氏は大統領選投票日である3日午後4時49分に、自身のツイッターアカウントで「これからスタジオへ向かいます。結果が分かるまでスタジオから離れません」と発信し、その言葉通りに働いた。

その夜から、投票結果の途中経過を伝える米国の地図の前に立ち続けた。今年の大統領選は結果が判明するまでに時間がかかったのだが、コルナツキ氏は3日午前5時に起きてから5日の午前2時までほとんど休憩を取らず、十分な食事もとらずにテレビカメラの前に立っていた。

MSNBCが強引に働かせ続けたわけではない。コルナツキ氏は、選挙の開票が始まると、リラックスしようと思ってもゆっくりと眠っていることができず、文字通り、食べることさえ、忘れがちになるそうだ。選挙報道期間中はカロリーの少ない炭酸飲料などをたくさん飲んで乗り切るのだと言う。

米国市民は、大小のストレスを感じながら、テレビの速報を眺め、ネット速報を見たりしていた。その一部の人たちは、開票の経過だけでなく、コルナツキ氏がずっと出演していることに気づき、いつ休むのか気になって、追いかけるようになった。ツイッターでは#TrackingKornackiのハッシュタグがつけられて、コルナツキ氏の追跡と応援をスタート。これに応じるかのようにテレビ画面に映っていないときでも、コルナツキ氏は、MSNBCのアカウントを通じて、局内の通路でメッセージを発信。

コルナツキ氏は、MSNBC局に休息をとるように強く指示され、11月5日に一度、スタジオを離れたが、最後まで結果の判明しなかったペンシルバニア州の結果が気になってどうしようもなかったようだ。5日の午後11時過ぎに「PA(ペンシルバニア州)からの投票結果が入ってきます。私はスタジオへ向かいます」とツイートすると、14万の「いいね」、1.3万回もリツイートされた。

不眠不休でテレビカメラの前に立ち続けてSNSで人気になったコルナツキ氏が、ずっと履いていたのがGAPのパロミノブラウンのカーキパンツだった。コルナツキ氏を応援した人たちや、ずっと同じパンツを身に着けていたことを好意的に見ていた人たちが、パンツを購入したのではないか。ちなみに、コルナツキ氏は、同じGAPのパンツを複数持っているそうだが、途中で着替えたかどうかは分からない。

「風が吹けば桶屋が儲かる」を想起させるようなエピソードだ。

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