虐待を受けていた子猫、優しい里親さんのもとで悲しいトラウマを克服するまで5年、今は穏やかに暮らす

渡辺 陽 渡辺 陽

小麦ちゃんは、子猫時代に虐待を受けて、その挙句捨てられたようだった。母猫代わりの三毛猫が自分の子猫と一緒に育てていたところを保護された。里親になった石井さんは、夫を見ると怯える小麦ちゃんを、時間をかけてゆっくり慣らした。

 

母猫代わりの三毛猫が育てていた子猫

2012年、埼玉県で犬の散歩をしていた人が、幹線道路の近くで子猫を連れている家族を見つけた。拾った子猫のようだった。

車の往来が激しい道路の近くだったこともあり、「他にも猫がいるかもしれない。危ない!」と思い、ボランティアの助けを借りて、捕獲機を使って猫を保護したという。捕獲機には、三毛猫の母猫と子猫3匹が入っていた。1匹だけ兄弟ではないサビトラの子猫が混ざっていたのだが、三毛猫の母猫が我が子と一緒に育てていたようだった。

サビトラの子猫は、保護した人が「麦茶のようで可愛い」と「小麦ちゃん」と名付けた。

先住猫を母猫代わりの猫と勘違い?

東京都に住む石井さんは、2011年に東日本大震災で被災した人が飼っていた猫、サリコちゃんの里親になった。1年後、サリコちゃんも1匹より2匹でいたほうが寂しくないだろうと思い、譲渡サイトで猫を探した。

大人しい猫がいいと思い探していたところ、埼玉県で捕獲されたサビトラの子猫、小麦ちゃんを見つけて応募。保護した人がボランティアと一緒に、石井さん宅の環境の確認も兼ねて、連れてきてくれた。生後2カ月くらいだった。

小麦ちゃんは、車での移動中全く鳴かず、石井さん宅に来てからもずっと静かにしていた。ケージ越しにサリコちゃんと対面すると、小さく「ニャ」と鳴いて嬉しそうにした。

「ボランティアさんが、『保護された時に一緒にいた三毛猫のお母さんを思い出したのかもしれませんね』と話していました」

虐待を受けていた過去を乗り越えて

先住猫のサリコちゃんは、人は好きだが、あまり猫は好きではなかったようだった。しかし、小麦ちゃんが大人しかったので、徐々に仲良くなったという。

小麦ちゃんは、かつて人から虐待を受けていたようで、いまだに男性やビニール、黒い服を見ると怯える。石井さんの夫は無理に近づこうとせず、少しずつ距離を縮めていった。

「5、6年してやっと小麦から毎日主人におねだりや撫でて欲しいアピールをするようになったんです。主人もよく待ってくれたなと感謝しています」

小麦ちゃんは奥ゆかしくて大人しく、保護されるまでの写真からは、いつも皆が食べ終わるのを後ろで待っている様子が見て取れた。いまでも自分より周りの猫を優先する性格に変わりはない。

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