超有名ボクシング元世界王者がボディビル挑戦 辰吉との死闘から26年「やる以上は一番を目指す」

あの人~ネクストステージ

山本 智行 山本 智行

 ボクシング元WBC世界バンタム級王者の薬師寺保栄さん(52)がボディビルに挑戦する。来夏に東海地区で開かれる「東海ボディビル選手権マスターズ」が目標戦。ボクシングの元世界王者がボディビルの大会に出場するのは国内初だ。本業でも11月28日には“愛弟子”森武蔵(20)がWBOアジア・パシフィック・フェザー級3度目の防衛戦を控えており、薬師寺ジム(名古屋市中区)の会長として初の世界戦が視界に入ってきた。

 本気だ。あの辰吉丈一郎さんとの激闘から26年。ボクシングからボディビルへ、異種競技への挑戦を決めた元世界チャンプが意気込みを口にした。

 「やる以上は一番を目指しますよ。50歳をすぎてスポットライトを浴びる機会なんて、そうそうない。まさか、この年齢になって減量するとは思わんかったけど、がんばっている姿を見せることで同年代に勇気を与えたいし、ジムも活気づくと思う」

 実は6年前にもボディビル挑戦のオファーを受けたが、そのときはキッパリ断っている。

 「減量して、酒も断って65キロ級で出ましょうと声を掛けてもらったんですよ。そのときは『いまさら減量は無理。バカなことを』と思いましたが、50代になって心境が変わりました。コロナの影響があったかもしれませんね」

 やると決めたら行動は早い。8月9日に「ラグーナ蒲郡」で開かれたゴールドジム主催イベント「マッスルパーク2020」に、お笑いタレント・なかやまきんにくん、東海地区を代表するボディビルダーのジュラシック木澤さんらと登場。来夏のマスターズ大会出場のお披露目をし、本格的なトレーニングを始めた。

 「ピークの78キロからいまは70キロほど。減量はできるけれど、一気に体重を落とすボクシングとは全くの別物。ボディビルは長いスパンをかけ、筋肉を増やしながら脂肪を落としていかないといけませんから、そこが難しい」

 薬師寺さんのトレーナーと言えば、マック・クリハラさんが浮かぶが、今回担当するのは、先程出てきたジュラシック木澤こと木澤大祐さん。『マッチョが憧れるマッチョ』とか『恐竜の筋肉を持つ男』と呼ばれ、K-1の角田信朗さんをボディビルに誘い込んだことでも知られる。

 現在は週2回、その木澤さんが港区で営むジムへ通い、指導を受けている。木澤さんはボディビルダー薬師寺について「コツコツやるタイプじゃないのと、お酒好きなところが心配」と苦笑いし「上体に比べて脚の筋量が少ないので、下半身強化が必須です」とまずは厳しいジャッジを下す。

 その一方で「大舞台の経験が豊富なのでステージで堂々として映えるのは強み。ボクシング界も注目していますので、ガッカリさせるわけにはいきません」と話し、ビシビシ鍛え抜く構えだ。

 もちろん、薬師寺さんには王者のプライドがある。新栄にあるジムはもともと施設は充実していたが、今回400万円を投資し、新たに最新のマシンを6台設置。大会へ向け、週4回トレーニングで汗を流している。

 「角田さんからは大阪のゴールドジムで会って『出るらしいね。がんばって』と励まされました。『大会では畑違いのヤツが来よった、という目で見られると思うので覚悟しときや』とも言われましたね。ボクシングの世界王者がボディビルというのは初めての試みなので、やれるだけやってみます」

 一方でジムの会長としても勝負のときがやってくる。11月28日に、デビュー以来11戦無敗(6KO)の“秘蔵っ子”森武蔵がWBOアジア・パシフィック・フェザー級王座を賭け、東京・後楽園ホールで溜田剛士(大橋ジム)と対戦。3度目の防衛戦に臨む。

 「力をつけている。来年には世界戦をやるつもりです。現在、交渉中。チャンスを与えたい」

 ボディビルダーとしては4回戦ボーイとしてスタートしたばかりだが、会長としては待ちに待った世界初挑戦だ。薬師寺さんの周辺が一段と騒がしくなってきた。

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