街並みを撮影中に遠くでピクッと動くものが… 写真家が保護した瀕死の子猫、動物病院に運ばれ奇跡の回復

渡辺 晴子 渡辺 晴子

今年8月8日朝、埼玉県八潮市で重体の子猫が保護されました。病院に運ばれた当初、呼吸はあったものの意識不明。頭は陥没、皮膚ははがれて頭の骨が見えていたといいます。運ばれた病院の獣医師からは「9割方助からない」と告げられましたが、何とか一命を取り留めました。

子猫を保護した東京都内に住む写真家の岡本正史(しょうし)さんによると、発見された場所やけがの状況などからカラスに襲われた可能性が高いといいます。岡本さんは「おそらくカラスに襲われたのかもしれませんが、その場所に置き去りにした人間に怒りを感じます」と訴えます。

撮影中、東京側から「浮花橋」を渡ったら…

保護した当時、岡本さんは仕事で東京都内の街や人を撮影していました。ちょうど東京都と埼玉県を結ぶ「浮花橋(うきはなはし)」にさしかかったところ、何かに引かれるように橋を渡ったといいます。写真を何枚か撮りながら歩いていると、遠くの方でピクッと動くものを発見。橋を渡りきった後、10メートルほど先の畑のそばの木の下で一匹の子猫が転がっていたそうです。

子猫の片目が飛び出していて、頭は大けが。凝視できない状況で、激しい呼吸をしていたといいます。そこを通り掛かる人たちは「もう助からないね」などとつぶやきながら、その場を通り過ぎ…そんな様子を目撃した岡本さんは、子猫の命を救いたいという一心でスマホで一番近い動物病院を探しました。そこから400メートル先にあった東京都内の動物病院を見つけ、子猫を運んだそうです。

子猫の死も覚悟、豊島区の動物病院に転院

子猫を運んだ動物病院では「ほぼ助からない」と言われ、岡本さんは覚悟をしていました。数日後、岡本さんの地元文京区内の動物病院に転院。転院先の獣医師からも「治療中に亡くなってしまうかもしれません。覚悟してください」と告げられたそうです。ただ、最善を尽くしてくれるとのことで、より医療体制が充実しているという豊島区の関連病院に移りました。

奇跡の回復を見せた子猫、ウッキーと名付ける

大きなけがを負った子猫だったので、岡本さんは“死”も覚悟をしていましたが…転院後、子猫は自分の足で立つようになったり、液状のエサであれば食べたりとみるみると回復していったといいます。そのときの子猫の様子を見て、生命力の強さに感激したという岡本さん。

そして子猫を「ウッキー」と名付けました。保護をするときに渡った「浮花橋」の「浮(うき)」にちなんで付けたそうです。ウッキーくんは保護当時、生後2カ月ほど。白黒ハチワレの男の子です。

入院中は食欲旺盛。頭のけがも順調に良くなったのですが、両目は見えません。8月の入院中、あまり耳も聞こえていなかったというウッキーくん。毎日行う頭部のガーゼ交換の際には、看護師さんに激しく暴れることなくお利口さんにしていたといいます。

保護団体にお世話を依頼、治療のため再入院

8月下旬、豊島区の動物病院を退院。岡本さんは単身だったこともあり、ウッキーくんを保護した八潮市内にある保護団体「NPO法人・ねこの家」(猫カフェ:翠ちゃん家の茶乃間)にウッキーくんのお世話をお願いしました。さらに頭のけがなどの治療を続けるため、保護団体提携の動物病院(八潮市)に再入院。細胞を活性化させるというレーザー治療を受けることになりました。

頭のけがも回復へ 院内で”お散歩”も

9月に入り、新たな治療のおかげもあって、ウッキーくんの皮膚がはがれた頭部の肉芽が少しずつ再生され、けがは順調に回復。耳も聞こえるようになり、岡本さんが呼び掛けると寄ってくるようになったそうです。病院内ではスタッフさんたちに可愛がられ、すっかりとアイドル化したというウッキーくん。人が近づくと喉をゴロゴロと鳴らし、目が見えないにもかかわらず、ケージから出してもらって院内を“お散歩”するまで元気になったといいます。

しかし9月下旬、お母さん猫からの抗体が切れる時期ということもあり、猫の風邪と呼ばれる「カリシウイルス」に感染してしまったウッキーくん。しばらく入院が続くとのことですが、風邪が治れば退院も近いそうです。

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