「死にたいと思い続けていた」豊田真由子が語る 赤の他人だからこそ、話せることがある<メンタルケア・後編>

「明けない夜はない」~前向きに正しくおそれましょう

豊田 真由子 豊田 真由子

コロナ禍の今年、女子プロレスラー・木村花さんをはじめ、俳優・三浦春馬さん、女優・芦名星さん、そして先月27日、女優・竹内結子さんと、自殺とみられる死が続いている。令和元年の自殺者数は20169人、そして、本年8月は1849人で、前年同期比15.3%増加している。元厚労省官僚、元衆議院議員・豊田真由子は、人々を苦しめる様々な根本的要因の解決に国や社会として取り組むことの必要性とともに、米国のように、メンタルケアを受けることを隠す必要のない社会であることが、極限状態にある人を救う、と力説する。

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残念なことに、なんとか勇気を出して精神科を受診しても、極めて短時間の事務的な診療で、薬を処方されただけ、失望して、もう通わなくなった、という話も多く聞きます。医師数の不足、スキルの不足以前に、我が国の根本的な医療保険制度や医学教育、精神医療の在り方の問題だと思います。ここも変えていかなくてはなりません。(もちろん、日本にも、きちんと寄り添ってくださるプロフェッショナルな医療関係者・カウンセラー、相談窓口の方々もたくさんいます!)

私が、米国在住時、我が国との違いに驚き、見習ってぜひ改善すべきだ、と痛感したことの一つに、メンタルケアについての社会認識や充実度があります。留学していた大学には、付属する通常の病院とは別に、当該大学の学生専門の病院、というものがありました。ビル全体が病院で、そのうちの1フロアーはすべて精神科で、いつも学生で溢れていました。精神科にかかっている、ということを誰も隠さない、いえ、隠す必要が無いのです。

「誰だって、一所懸命がんばっていれば、心に負荷がかかることは当然。だから、そのケアが欠かせない。」という考え方でした。精神科受診を含め、メンタルケアを受けることは何ら恥ずべきことではなく、つらいときは、カウンセラーなどによるメンタルケアを受けるものだ、という考えであったと思います。専門医からカウンセラーを紹介されて通い、カウンセラーは、基本的に週1回1時間程度、じっくり話を聞いてくれます。

このように、アメリカでは何かに思い悩んだとき、カウンセラーに相談するということがごく一般的に行われていて、様々な理由で悩む人たちがカウンセラーの元を訪れますが、その悩みに大小はなく、どんな内容であってもカウンセラーは訪れる人の声に耳を傾けてくれます。もちろんすべての問題が一挙に解決するわけではありませんが、このことが、生きづらさを抱えている多くの人たちの支えになっていることは、確かだと思います。

今、ひとり苦しみ、絶望の中、暗闇の中にいらっしゃる方。この先の人生に、なんの希望も見いだせないと思っている方、見ず知らずの他人に、自分のことが分かるはずがない、この苦しみが減るわけがない、助けられるわけがないと思っている方。そもそも人間なんて信じられない、と思っている方。いろいろ大変すぎて、それどころじゃないよ、という方。――あなたが思っている以上に、あなたの心は疲れ、傷付いています。腹痛がひどかったら、病院に行くように、心が痛かったら、ケアをしましょう。赤の他人だからこそ、話せることがあるかもしれません。そして、プロだからこそ、冷静に、分かってもらえることがあるかもしれません。そして、そこでいったん立ち止まって、少しでもエネルギーを取り戻して、それから、あなたを苦しめている根本的な問題の解決につなげていきましょう。

これまで、少なくない数の大切な友人・知人が、自ら命を絶ちました。おこがましいかもしれませんが、救えなかった、役に立たなかった自分を、今も悔いています。

学生時代から、一緒に国の未来や夢を共に語り合った、心優しき友がいました。彼の墓参の度、「志を継いでがんばるよ」と誓った約束を、わたしは、果たせぬままでいます。

私自身、死にたいと思い続けていましたが、こうして、皆さまにお話しできる機会をいただき、とりあえずだけど、生きててよかったと、今はそう思っています。

【相談窓口】
・こころの健康相談統一ダイヤル 電話番号0570-064-556
・よりそいホットライン フリーダイヤル0120-279-338
・いのちの電話 電話番号0570-783-556、フリーダイヤル0120-783-556
・チャイルドライン(18歳まで) フリーダイヤル0120-99-7777
・子供のSOS フリーダイヤル0120-0-78310

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