一足早い秋の訪れ…老舗亀屋良長「かめや女子和菓子部」の透明感あふれる京菓子 季節の移ろいを映す美

山本 明 山本 明

美しい京菓子がネットで注目されています。「行き合い」は夏の空と秋の空が入り混じる「行き合いの空」を表現した一品。涼やかな夏空に、音もなく黄金色の秋空がさし込んでくる一瞬を切り取った姿は、まるで印象派の絵画を見るよう。じつはこちら、古都・京都の老舗「亀屋良長」の20~30代の女性社員が集う「かめや女子和菓子部」が制作したお菓子なんです。

部活動を発足したのは、同店・現女将の吉村由依子さん。「若いスタッフの感性をいかし、早いうちからいろいろな経験を積んでほしい」との思いから昨年5月に社内の若手の女子社員に声をかけ、12人から部活動がスタート。部署が異なる(職人・販売・事務・営業・企画など)メンバー混合のグループを春チーム、夏チーム、冬チーム(※秋は「飽きない」為に無し)の3つに分けました。その後、本年2月に「かめや男子和菓子部」も発足。

こうして計4チームになった「かめや和菓子部」。二十四節気(にじゅうしせっき…一年を春夏秋冬の四季に分け、それをさらに六つに分けたもの。「夏至」「立冬」などがこれにあたる)にあわせたお菓子を企画・制作中です。

部活動を通して作りたい京菓子について、女子和菓子部・部長の柴田萌さんに聞きました。

   ◇   ◇

――制作の上で大事にしていることは。

「部員は若い女性ですからSNSなどで様々な現代の和菓子を見ています。その一方で古い文献のお菓子を研究するなど、温故知新の精神を大事にしています。古いもののベースが分かっていないと『京菓子』にはならないので」

――『京菓子らしさ』とは?

「まず具象的すぎないこと。『ひと雫』は当初、ぶどうのかたちをはっきりかたどった試作品もありましたが、『それは違う』と。姿を感じさせる…絵画でいうと具象的ではなく抽象的に表現することでの菓子の佇まいに奥行きを持たせます」

「あくまで食べものですので美味しそうに感じる色みを心がけています。また『季節感』を大切にしています。そして当主の吉村にアドバイスをもらいながら進めています」

――「行き合い」は、静かな秋の気配を感じさせますね。

「こちらは『立秋』、二十四節気で秋の始まりと区分される時期に制作したお菓子です。ただ『立秋』は現代のダイアリーでは8月7日ですから夏の盛り。ですから夏の暑さにあえぐ身体に優しい素材である寒天を使い、旬の桃のリキュールで香りづけしています」

「お客様の体感的な『夏』としての季節感と、暦の上での『秋』を感じさせる素材を融合させる。桃やぶどうといった果物から、次の季節のエッセンスを感じてもらう…そんな京菓子を作りたいです」

   ◇   ◇

最後に部の発起人である現女将・吉村由依子さんにもお話を聞きました。

――本当に美しいお菓子ですね。

「ありがとうございます。このまま京菓子の『型』の概念を大事にしつつ、若い素直な感性のままに作っていってもらいたい…と願っています」

「当店は四条通に面しておりますので、ガラスのショーウィンドウ越しに、通行人の皆さまにお菓子をご覧いただけます。若いみずみずしい感性がとらえた京菓子の姿で目を楽しませてほしいし、季節の移り変わりを感じてもらいたい。SNSでの投稿も、若い方たちが同世代の人が作った作品を見て、『素敵だな、綺麗だな』って、和菓子に目を留めるきっかけになれば、嬉しいです」

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