「この温泉には『ワニ』が出ます」「ワニ対策にお水をお持ちください」…!?<銭湯・温泉編>

おもしろ業界用語

平藤 清刀 平藤 清刀

自宅にお風呂があることが当たり前になって、銭湯は年々減り続けている。そんな時代の中でも粘り強く生き残っている銭湯があるし、銭湯愛好家も少なくない。行ったことがない人でも、銭湯の存在ぐらいはご存じだろう。銭湯にまつわる業界用語と併せて温泉用語も集め、自称・銭湯愛好家のGさんに聞いてみた。

スーパー銭湯って、銭湯の豪華版じゃないの?

「間違ってはいないけど、正しくないね。銭湯とスーパー銭湯は似て非なるもの」

一般的にイメージされる街角のお風呂屋さんと比べて、規模の大きな銭湯をスーパー銭湯と呼んでいる。

どちらも公衆浴場だが、銭湯は「一般公衆浴場」として「日常生活において保健衛生上必要な施設」という役割を担っている。これに対し、スーパー銭湯は「その他の公衆浴場」として「保養・休養のための施設」という位置づけで、両者は公衆浴場法という法律によって区分されている。

スーパー銭湯は娯楽施設なので、駐車場を整備したりサウナやジャグジーが設置されていたりして、集客するための設備が充実しているから、利用料金も高めである。また食事のできるスペースを設けてあって、滞在時間も一般の銭湯より長くなる。

ちなみに、スーパー銭湯の歴史は比較的新しい。1980年代の後半から1990年にかけて、富山県高岡市、大阪府豊中市、愛知県名古屋市に相次いで開業した、3軒の「元祖スーパー銭湯」と呼ばれる施設があるという。そのどれを最初のスーパー銭湯と呼ぶかで議論が分かれているらしく、いまも決着がつかないそうだ。

ボロ銭、ビル銭、マン銭、やば銭、スー銭って、何のゼニ?

「資金繰りが厳しいのか、修繕もままならないボロボロの銭湯だからボロ銭です」

「ビル銭」は、ビルの中に設置された銭湯。銭湯は戸建てのイメージが強いけれど、ビルの中につくられた銭湯もある。「マン銭」はビル銭の一種で、マンションの1階が銭湯になっている形式のもの。マンションにも内風呂はあるが、わざわざ銭湯に入りに行く人もいる。

「やば銭」は、存続が危機的な状況にある銭湯のこと。「経営がやばい銭湯、略して『やば銭』です」

利用する人が少ないのに、「いよいよ閉店するかも」という噂が流れたら、ふだんは利用しない人まで押し寄せるのが悩ましいところ。

そして「スー銭」はスーパー銭湯のこと。

ほかに「風呂銭」というのもある。これは○○な銭湯の略ではなく、入浴料金のこと。料金は経営者が自由に決めることはできず、都道府県ごとに統一されている。参考までに2020年8月現在の大人料金は、大阪府450円、奈良県440円、兵庫県430円、東京都470円となっている。全国で最も高いのは岩手県の480円、安いのは佐賀県の280円だ。

混浴温泉にワニが出没する

温泉には混浴もある。

「混浴温泉には『ワニ』が出ますから、女性の方は要注意です」

もちろん本物のワニではない。混浴温泉に女性が入ってくるのを、湯に浸かりながらひたすら待っている不届きな男性客のことだ。水面に顔だけ出して獲物を狙っている様子から、こういう連中を指して「ワニ」という。

「混浴温泉に入る女性は、ワニ対策が必須です」

その「ワニ対策」とは?

「ペットボトルで水を用意しておくといいです」

温泉に浸かっていると、のぼせて汗をかく。ワニが先にのぼせて上がるまで、水分補給をしながら持久戦を戦うための必須アイテムだという。

あるいは、許可されている浴場なら「湯着(ゆぎ)」もお勧め。

湯着とは、ケガや病気のせいで体に傷のある人が、人目を気にしないで温泉を楽しむための衣類。ワニからガードするためにも有効なアイテムなのだ。

「ワニの唯一かつ最大の目的は、女性の裸体を見ること。湯着を着ていれば、見られる心配はありません」

温泉施設によっては湯着の着用を勧めていて、貸し出している場合もある。

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