盗んだバイクで走り出さない…バイク窃盗で摘発される少年激減 「暴走」よりもスマホに興味?

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盗んだバイクで走りだすのは今は昔―。バイク窃盗で摘発された少年の数が激減している。昨年、全国の摘発数は795人で、30年前に比べほぼ50分の1になった。兵庫県内も同様の傾向だ。兵庫県警少年課は防犯対策が向上したことに加え「バイク自体への興味が薄らいだのかもしれない」と要因を推測。暴走族が影を潜めたことや、バイクの売り上げが減っている状況も背景にありそうだ。

1989年の全国の摘発数は3万7729人で、以降は減少の一途をたどっている。2004年には1万人を割り、昨年にはついに1000人を下回った。

兵庫も全国とほぼ同様の傾向で、1989年は1999人だったが昨年は57人に減り、30年間で35分の1になった。

県警少年課によると、バイク盗への防犯対策や、グッズが向上したことが大きな要因。かつてのように、鍵穴にドライバーを突っ込んで回したり、ミニバイク前部のカバーを開けてコードを直結してエンジンを掛けたりする手口では盗めなくなったという。

一方、暴走族も影を潜めている。400ccクラスの大型バイクで爆音を出しながら数十台が連なって走る姿を、街中で見かけることは少なくなった。県警交通捜査課は「今の若者は上下関係を嫌い、集団行動を敬遠している」と分析する。

最近は50ccクラスのミニバイクで、会員制交流サイト(SNS)で誘い合って、気が向いた時に少数で走る形が主流になっているという。

バイクの売り上げも減少傾向だ。自動車メーカーでつくる「日本自動車工業会」(東京)によると、二輪車は1999年に約165万台売れたが、2018年には約36万台と8割減少した。

少年課の担当者は「今どきの若者は、行き先も分からないまま夜のとばりを走るより、スマホのゲームで遊ぶ方が楽しいのかもしれない」。とはいえ、昨年の県内の摘発は57人。6人で7台を盗み、ガソリンがなくなると川に捨てるなど悪質なケースもあった。

甲南大文学部・阿部真大教授(社会学)の話

バイクは1980年代まで「反抗文化」、いわゆる「カウンターカルチャー」の象徴で、ヤンキーと呼ばれる少年たちと親和性が高かった。バイクは男性中心主義的でもあり、「運転する男と後ろに乗る女」といった、当時の男女観を前提にしたイメージがあった。(92年に26歳で亡くなった歌手の)尾崎豊さんの曲にもそういった男女のやりとりがよく出てくる。

しかし90年代中頃以降、価値観が多様化し、若者文化の中でコミュニケーション能力が男性より高い女性が存在感を発揮。カウンターカルチャーを先導した。ギャル文化などが良い例だ。

そうなるとこれまでの「バイクに命を賭ける」といった価値観に対し、女性は「勝手にやれば」と思ってしまう。

女性から承認、理解されないようになり、男性中心主義的文化の人気は廃れていった。男性も「俺たちなんで、こんな夏は暑くて冬は寒いものに乗ってるんだろう」となる。

女性が若者文化をけん引する今は、健康的でダイエットにもなる自転車が人気だ。バイクが好きな現代の若者の大半はツーリングなどを純粋に楽しんでいる。バイクは反抗の象徴ではなくなった。

(まいどなニュース/神戸新聞・堀内 達成)

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