なにこれ不思議…波のように動く振り子→1分おきに整列!?完璧な「ペンデュラムウェーブ」の動画が話題

山本 明 山本 明

完璧な「ペンデュラムウェーブ」の動画がSNSで話題です。ペンデュラムウェーブとは、振れる周期が違う振り子を一列に並べて吊るした装置。同時に揺らすと、複雑に変わりゆく波のような動きが見られます。時には雨粒のように、ヒトゲノムのらせんのように、宇宙の星々の軌跡のように…。そしてなぜか1分おきに、動き始めたときのように、また1列に整列するのです。優美かつ不思議な動きに魅了される人が日本中で続出しています。

佐賀県立宇宙科学館の公式Twitter(@saga_space)から7月12日に投稿されました。14日午後までに約6万リツイートされ、19万件近い「いいね」がついているほか、「何時間見てても飽きない」「永遠に見てしまう…」という賞賛が多数寄せられています。

佐賀県立宇宙科学館のペンデュラムウェーブは、約1分間ですべての振り子が元の位置に戻るように設定されているといいます。しかし、元のツイートには『計算でひもの長さを出しても全然綺麗にそろわず、何度も微調整をするのがとても大変で…』とも書かれており、「一体どんな計算式なんだろう…」「力学?物理学?計算された運動。ある意味、時間を制覇(コントロール)した感覚すらある」などと、装置の原理そのものに言及したコメントも寄せられています。

制作したのは同館研究交流部の北田大樹さんです。制作秘話を聞きました。

   ◇   ◇

――装置の仕組みを教えてください。

 振り子の動きは糸の長さで変わります。糸の長さが短いと周期(1往復するのにかかる時間)が短くなり、動きが速くなります。

 手前が一番糸が長いので一番ゆっくり動き、奥が一番糸が短いので一番速く動くことになります。おもりのビー玉は全部で15個あり、1分間に揺れる回数は一番手前が51回、一番奥が65回です。

――つまり装置を横から見ると前下がりになっていて、手前の振り子が一番スローで奥に行くほどスピーディになる…ということですね。ひも(糸)の長さはどうやって決定するのですか?

 「振り子の周期の公式」を使います。数式は「T=2π√(l/g)」になります。

――出ました「計算式」!文系の人間にとっては魔法の呪文(スペル)と同じくらい意味不明です…。

 そんなに難しくないんですよ(笑)。内容としては高校の物理レベルの計算式です。「g」は重量加速度。この数値は決まっています。「T」は周期、これは一往復にかかる時間。「l」が糸の長さ。単純な式なのでエクセルで計算するとすぐに解は出ます。

 理論上、振り子の周期は糸の長さと重力加速度のみで決定されるので、おもりの重さは関係ないんです。ビー玉じゃなくて発泡スチロールや鉄球でも糸の長さが同じであれば1分間に揺れる回数は同じになります。

――おもりの重さは関係ないんですね。

 しかしこれはあくまでも理論上であり、そのままの数字を糸の長さに反映しても美しいペンデュラムウェーブは実現しません。実際は空気抵抗やビー玉にナットで取り付けた糸の付けねの摩擦も出てきて、まったく動きがバラバラで挫折しかけました。

――それがあの一糸乱れぬ動きに…。

 上司にも相談し、ビデオで撮って、動きをPCでスロー再生してどのビー玉の動きが遅いのか特定し、微調整を重ねました。一番手こずったのは一番奥の振り子です。短いぶん、ちょっとの長さで動きが変わってしまう。諸々ふくめて1時間くらいのうちに、約10回微調整して完成しました。

――1時間ですか!?もっと苦労されたかと。文系人間としてはそんなの「挫折」のうちに入らないよ…!とも言いたくもなりますが。ちなみに完成した時の感想は?

 こんなにきれいに揃うとはじぶんでもびっくりしましたし、感動しました。ビー玉の色にもこだわって、赤、緑、青、黄色の順番になるようにつけていきました…並列に揃った時に色も揃うようにと。

 写真を撮るのが好きなので、この動画撮るときも普通に撮ったら奥が小さくなるので、少し離れて俯瞰気味にズームで撮って、15個全部が見やすいよう気をつけています。

――大きな反響を呼びました。

 じつはこれは現在進行中の別企画に関係する試作品なんです。思いのほかうまくできたのでTwitterに上げてみよう、と。物置のまえで何気なく撮った動画がなんです。それが今までで一番のバズりようで。何が受けるか分からないなあと。

――たくさんコメントが来ましたね。

 すごく嬉しいです…!!自分の作ったものをこれだけたくさんの人に見てもらえて、コロナ禍の今、明るい気持ちになってもらえたのかなと。「すごい」「ずっと見てられる」などあたたかいコメントばかりで…。

 動画を見て物理とか理科に興味が出たと言ってもらえるのも嬉しいです。科学館はいろんな人に理科の楽しさを知ってもらう場所でもあるので。理系って難しいだけではない、人を楽しませ、喜ばせる側面もあるのだと、少しでも興味を持ってもらえたら。

   ◇   ◇

昔から理系少年で工作が得意だった、という北田さん。糸の長さなどの微調整も結局は感覚で成し遂げたそうです。ちなみに材料は「ビー玉に百均の瞬間接着剤や手芸用のリリヤン糸など身近なもので揃えて作った」そうで、ますます好感度大です。こちらの装置は背景やBGMも整えたものを近日公式YouTubeで公開予定だそうです。楽しみですね。

■佐賀県立宇宙科学館
公式HP https://www.yumeginga.jp/
公式YouTube https://www.youtube.com/channel/UCu3Ob5tbxKLQ4TkEFGEcBRw/

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