「サメより驚いた」東伊豆の水深16mの砂地にポケットピカチュウが?!ダイバーが感じる“海の異変”

広畑 千春 広畑 千春

 伊豆半島屈指のダイビングスポット、静岡県伊東市「富戸ヨコバマ」。岩場と砂地、両方の環境が楽しめ、多くの魚たちとも出会えるとして関東圏のダイバーには非常に人気の高いポイントです。そんな豊かで美しい海の底で、あるプロダイバーが遭遇したのは、いまだかつてない意外なモノとの出会いでした。

「様々な海に潜ってきたし、サメやクジラ、たくさんの遭遇に感動し、興奮して来ましたが、今日のこの出会いは今までで1番叫んだかもしれない。

-16m砂地にポケットピカチュウ

ポケットピカチュウー!!!!」

 先月30日にそうツイートしたのは、東伊豆のダイビングショップ「城ヶ崎インディーズ」の矢北拓也さん。インストラクターの傍ら、東伊豆の海の魅力をYouTubeなどで発信し続けています。ポケットピカチュウは、任天堂(本社:京都市)が1998年3月に発売した、万歩計の機能と「たまごっち」のような育成機能を併せ持つ携帯用小型ゲーム機で、歩いた分だけピカチュウとの「お友達度」が上がる仕組みで人気を博しました。

――どんな状況で見つけられたんですか?

「お昼頃、この日2回目のダイビングをしていたら砂地に黄色いものがあって、何だろうと近寄ってみたんです。前日は海が荒れていたので、もしかしたら波の力で砂地に出てきたのかもしれません。残っていたのは前面のプラスチック部分のみでしたが、プラスチックとしての質感は保たれていました。裏側は海藻だらけでしたね」

――もちろん初めての出会いですよね?サメより驚かれたとか…。

「ええ。何せめちゃくちゃ遊んだ世代ですから。ずっと振ってましたね(笑)。よく怖がられますがサメはほとんど噛むことはなく、サメの方から逃げていくんです。この少し前には助けたことのないウミガメが後を付いてきて浦島太郎気分でしたが、まさかこんな宝物が届くとは」

 とのこと。ツイートは投稿直後から「めちゃくちゃ懐かしいやつww」「ポケットピカチュウの抜け殻?」など反響を呼び、これまでに9.7万もの「いいね」が。「父の海釣りについて行き、落として大号泣したのを思い出しました。もう20年も前ですが」「川に流してしまったことが…いやまさかそんなことありませんよね」…などと、ここにたどり着くまでの長い長い旅路に、ネット民の想像をかき立てています。

◇深刻化する海洋汚染

 その一方で、「状態がしっかりしていて凄いと思った反面、海のプラスチック問題の深刻さも感じました」という声も。矢北さんも「毎日海に潜っていると、釣具や漁具のみならず、たくさんの海洋プラゴミを目にします。中には随分昔の賞味期限の包装なんかを拾う事もあるので、いかに海に残るか。考えさせられます」と反応。実際、「特に岸に向かって風が強く吹いた日などは海岸にかなりのゴミが打ち上がりますし、海の中もすごい事になります」といい、日々、漁師と地元ダイバーで清掃しているのだといいます。

 ダイビングインストラクターだった父と兄の影響で中学の夏休みごろからダイビングを始め、18年。プロになり、小笠原やフィリピンで修行した後、父の店があった東伊豆へ。「日々、東伊豆の海に潜っていく中で、四季のある海の景色の移り変わりの魅力、観察できる生物量の豊富さ、溶岩が作るダイナミックな地形。さらには都心から近く、たくさんのダイバーのホームポイントとして成長に寄り添えること…など挙げだしたら切りがない」と東伊豆の海の魅力を語ります。

◇最低水温は2℃ほど上昇

 ただ、気にかかるのが最近の海の状況。「継続的に海の変化に目を向け始めて10年程の間に、やはり変化は感じます。特にこの4.5年は真冬の最低水温がどんどん高くなりました。おそらく2℃ほど上昇しています」と矢北さん。「南の方で水温が下がっている話も聞いた事があるので実際のところ温暖化と強く結びつけられるかはなんとも言えませんが、数年前までは、季節来遊魚といって夏から秋の海水温が高い時期にだけ見られる魚が、数年前から冬を越す個体が出てきています。もしその南から来た魚が伊豆に定着し、もともと伊豆の魚よりも強ければ伊豆の魚達のパワーバランスを崩すことにもなるかもしれません。変化としては興味深いですが複雑な気持ちで日々海を見ております」とも。

 今回話題になったことに、「生き物の不思議や、海の美しさをたくさんの人に伝えたくて発信に工夫を凝らしても、なかなか多くの人に伝わらない事がほとんどなのですが、今回のような事で『海に日々潜っている人がいるんだー』とか、『伊豆の海ってどんな感じなんだろう』とか、海洋ゴミや観光に関心を持つとか…。とにかくどこかの誰かの気持ちが少しでも海に向いてくれたら幸せです!」と話してくれました。

 地上ではプラゴミ削減のためレジ袋の完全有料化がスタートしました。とはいえ海洋プラゴミに占める割合は少なく、まだまだ根本的な対策の必要性も指摘されています。そして地球規模で進む温暖化…と、一見青く美しい海の中で、静かに進む“異変”。矢北さんは今回見つけたポケットピカチュウを店に持ち帰り、飾っているそうです。

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