狂犬病の予防接種を怠って書類送検…発症でほぼ死亡、コロナ禍の中でも対策を

小川 泰平 小川 泰平
狂犬病に対する意識を強く持つべき(Trsakaoe/stock.adobe.com)
狂犬病に対する意識を強く持つべき(Trsakaoe/stock.adobe.com)

 静岡県静岡市で飼い犬を自治体に登録せず、狂犬病の予防接種を怠った狂犬病予防法違反の疑いで34歳の女性が今月17日に書類送検された。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は22日、当サイトの取材に対し、コロナ禍と重なっても予防接種する必要性を説き、フィリピンで感染した男性が国内で死亡した事例を挙げて、人間も狂犬病に対する意識を強く持つべきと訴えた。

 女性は今年2月から5月までスタンダードプードルを3匹飼っていたが、静岡市への登録をせず、狂犬病の予防接種もしていなかった。そのうちの2匹を交番に届けたが、警察は悪質な飼育放棄と判断した。

 小川氏は「交番に迷い犬として届け、捨てなかったことは犬への愛情があったと思うが、登録や予防接種をしていなかった。詳細な事情は分からないが『コロナのせいで』という言い訳はできない」と指摘した。

 静岡市では、毎年4―6月に各地区の公園や自治会館等で実施されていた狂犬病の予防接種集合注射について「新型コロナウイルス感染症への感染の可能性及び拡散の可能性を考慮して今年度は中止する」と発表していたが、同氏は「動物病院での個人接種は可能ですから、しておくべきだった」と説明した。

 小川氏は「新型コロナウイルスの感染拡大により、今回の件に限らず、狂犬病予防接種を受ける件数が減っています。例年4―6月頃に行政で行われている接種の期間がコロナ禍と重なったこと、その間、動物病院では受けられましたが、外出自粛によって人出が減ったことも背景にあります」と解説。その上で「日本では50年以上、国内の犬を原因とした狂犬病は発生していませんが、海外では人が亡くなる例が多く発生しています。気を付けなければなりません」と警鐘を鳴らした。

 今月15日、愛知県豊橋市はフィリピンから来日後に狂犬病を発症し、同市内の病院に入院していた外国籍の30代男性が13日に死亡したと発表。昨年9月ごろにフィリピンで犬にかまれ、感染したとみられている。豊橋市によると、男性は今年2月に就労のため来日し、5月中旬から足首や腰の痛み、水を怖がるなどの症状を訴え、国立感染症研究所の検査で感染が確認されたという。国内では2006年にフィリピンで犬にかまれた日本人男性2人が帰国後に発症し、いずれも死亡している。

 小川氏は「今回のフィリピン人男性は昨年9月にかまれて9か月後に亡くなったことになります。狂犬病は『スローウイルス』と呼ばれるほど、潜伏期間が長い。そして、狂犬病は一度発症してしまうと有効な治療法がなく、ほぼ100%の患者が死亡する。海外に行く人は渡航前に予防接種を受けた方が安心ですし、万が一、噛まれた場合は日本に帰国後ではなく、現地の病院にすぐ行く必要があります」と注意を呼びかけた。

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