感染者ゼロの危機管理「ウイルスは一人歩きしない」 岩手県・達増拓也知事に単独インタビュー【2】

渡辺 陽 渡辺 陽

岩手県は新型コロナウイルス感染者0人を続けています。人口密度が他都道府県に比べて低いというものの、東北新幹線が停車する盛岡駅があり、花巻空港もあります、決して人の往来が極端に少ないわけではありません。同じ東北地方でも6月18日時点で、青森県は27人、宮城県88人、秋田県16人、山形県69人、福島県82人の感染者が確認されています。「その違いは何なのか?」。まいどなニュースは岩手県の達増拓也知事に単独インタビューを行い、外出自粛や休業要請のあり方について聞きました。

ウイルスは一人歩きしない

――東京都や大阪府は、4月7日に緊急事態宣言発出されるまで、都府民の外出自粛や県をまたいでの移動の自粛を週末のみ要請するに留まっていますが、岩手県では早めに要請されたのでしょうか。

達増拓也知事(以下、達増知事) 年度の変わり目には人の移動が多くなります。岩手県では、3月下旬からさまざまな自粛要請を始めました。東京や大阪など感染者数が多いところから来た人は、2週間は元いたところの自粛要請に従ってくださいとお願いしました。こうしたことは他の県ではやらなかったのです。

岩手県庁の場合はさらに徹底していて、東京や大阪の大学を卒業して岩手県庁で働く新採用職員は、県に入ってから2週間自宅待機させました。かなり厳しく外に出ないように要請したのです。

――なぜ早期に外出自粛を要請されたのでしょうか。

達増知事 ウイルスは目に見えないから大変なのですが、一人歩きすることはありません。人間と共にウイルスは移動します。感染者の鼻水や飛沫が手について、その手でべたべた顔や髪を触ると、そこにウイルスが残ってしまいます。人間が残していくのです。

人間は目に見えるし行動を追うことができますから、人間の動きに着目して、きちんと対策すればいいと最初から考えていました。それもあったので東京や大阪から来る人に着目して対策を講じたのです。

休業要請も外出自粛要請も人間相手

――県内に感染者がいない状況下、外出自粛や休業要請に県民の理解を得るのは大変だったのではありませんか。

達増知事 外出自粛も、まったく外出しないで常に家にいろということではありません。時期によっては週末や夜間だけの自粛でいいでしょうし。

夜の街や接待を伴う飲食店というのも、それだけでは漫然としていますから、実際に休業要請した時は厳密に、きちんときめ細かく区分したのです。キャバレーやナイトクラブ、接待を伴うようなスナックには休業要請しましたが、接待を伴わないスナックはOKでしたし、岩手ではバーも休業要請の対象にはしませんでした。バーは、接待を伴う飲食店には該当しないからです。

――休業の協力要請はどのように行ったのですか。

達増知事 休業要請する相手には、きちんと文書で伝えました。言いっぱなしにして終わるのではなく、人間相手なのできちんと伝えるべきことは伝え、お互いに納得、了解した上で事を進めるようにしました。

団体や組合は、そういう時に活躍してもらいました。たとえば、パチンコ屋さんに休業要請する時は、まず県の担当から遊戯業協同組合に事前に話を持って行き、お互い納得の上で何日から何日まで休業と決めたのです。 

――コミュニケーションが大事、コンセンサスが取れていないとうまくいかないということですね。

達増知事 そうですね。やるからにはきっちり、漏れがないようにしなければならないと思っていました。

◆達増拓也(たっそ・たくや)1964年6月10日生まれ。岩手県盛岡市出身。東京大学法学部を卒業後、1988年に外務省入省、91年米国ジョンズ・ホプキンス大学国際研究高等大学院修了。衆議院議員(連続4期当選)を経て、2007年岩手県知事、現在4期目。2012年度ベスト・ファーザーイエローリボン賞。尊敬する人物は新渡戸稲造、好きな言葉は「浩然の気」、趣味は合唱、テニス。血液型O。

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