「守護霊からのメッセージは…無料通話分は過ぎました」!?悪徳な電話占い、その魔のテクニックとは

多田 文明 多田 文明

 新型コロナの感染は、だいぶ落ち着いてきた感はありますが、東京都では再び、感染者の増加傾向がみられます。こうした先が見通せない不安な状況下では、占い関連のトラブルが増える恐れがあります。雑誌や、「占い」をネット検索しただけでいろんな業者がヒットしますが、そのなかには、悪徳な業者もいるのです。国民生活センターには、占いサイト2社で、占い鑑定をし続けた結果、総額1200万円にもなったという相談もあります。

 悪徳な占い業者がどのようにして、私たちからお金を取っていくのかを、以前に私が体験した電話占いの実体験を通じて、みていきたいと思います。

 ネットで見つけた電話占いサイトに登録してみると、1500円分の無料通話がついていました。これなら安心して鑑定をしてもらえそうです。サイトには数人の占い師がいましたが、その中で、守護霊と対話ができるという、ベテラン女性占い師に電話をしました。鑑定料金は、1分200円です。

 女性占い師に「今、フリーで働いていて、お金が厳しい状況です。今後の仕事について、守護霊はどんな話をしているでしょうか?」と尋ねてみました。

「わかりました。あなたの守護霊に話しかけてみます」と言った途端、押し黙ります。

 3分ほどがたったでしょうか。

 女性は口を開きます。

 「あなたの守護霊は、父方の3代前……、ひいお爺さんです。非常に厳しい表情をしています。そして凛とした姿勢でいらっしゃる」

 ひいお爺さんには、あったことがないので、「そうですか」と答えるしかありません。

 「それでは、守護霊のメッセージを伝えます。『自分の道は自分で決めなくてどうする!』」占い師は、霊が乗り移ったような強い口調で語ります。

 「あなたには、甘えがある!自分で切り拓いていかなければならない!」

 守護霊の言葉を伝え終えると、再びもとの声に戻り、

 「と、ひいお爺さんは言っています。あくまでも、これは守護霊が言っていることなので」と前置きをしながら、「守護霊は『アルバイト生活ばかりして、自分で仕事を安定させようとしてもいないだろう。正社員になりなさい』とも言っています」とも言います。

 うーん。明治時代に生きていた人が「アルバイト」や「正社員」という言葉を、本当に使うでしょうか。怪しさを感じたので「この不況下では、安定した正社員の仕事は難しいですよね」と強い口調で言うと、占い師は「確かにそうです」と頷きます。

 「この人は昔の人ですから、現代の事情がわからないので、こんなことを言っているようですね」

 なんと、発言の責任をすべて、ひいお爺じいさんに丸投げしてきました。

 時計をみると15分以上が経過しています。1分200円なので、無料通話分は7分程度のはず……。もしかして、サービスで占いをしてくれているのでしょうか。

 そこで「もう、無料通話分は過ぎていませんかね」と尋ねてみました。

 「過ぎていると思いますよ」

 「えっ!」

 「超過した分については、ご請求がいくかと思います」

 驚いて電話を切りました。サイト上には、2000円の請求表示が出ています。もし私が話の途中で尋ねなければ、さらにお金が上積みされるところでした。

 実は、この電話占いは2件目で、最初の業者は無料通話が終わると、自動的に電話を切れる仕組みになっていました。ところがこの業者は違っていたのです。占いのシステムは業者によって違うので、利用前にはしっかりと確認することが大事です。

   ◇   ◇

 その後、かつて電話占いのアルバイトをしていた男性から話を聞くことができました。この男性には占いの経験はまったくないけれど、採用されて「霊感・スピリチュアル」の肩書を名乗ったそうです。

 占い師として活動する際、上司からいくつかアドバイスされています。

 「電話をかけてくる人は、たいてい自分の話を聞いてほしい人なので、まず聞いてあげてください。女性からの相談は恋や不倫に関することが多く、男性の場合は仕事関係です。もし不倫に関して、『どうしたらよいでしょうか』と尋ねられたら、差し障りのない答えをしてください」というのも、相談にすんなり答えると、お金にならないので、「話をできる限りひっぱるように」と言われたそうです。

 また、断言した結論を出さないこと。

 「不倫で明らかに別れるべき人であっても、『別れなさい』とは言ってはいけません。答えを出したら、2度と電話がかかってこなくなりますから、『彼をもう少し信じなさい』『待ってみてください』という言い回しをしてください」

 ツボや印鑑を売りつける霊感商法では、「沈黙」というテクニックを使います。たとえば、手相をみながら、「あっ!」と声を発して深刻な顔をつくります。そして、しばらく黙り続けます。いったい、何があるのだろうかと、相手が不安になっているところに、「大変に言いにくいことですが……実は、あなたには悪霊がついています」というのです。沈黙を作ることで、恐怖心を増幅できるのです。

 この占いでも「沈黙」は大事な要素とのことです。男性は「会話を長くするために『私の方から気を送ります』『これから霊と対話します』といって、話さない時間を長くするように」とも指示されています。

 まさに、私が受けた占いでも、彼女は3分近く守護霊と話すといいながら黙りこみ、15分ほどの会話になっていたのも、裏でこうした指示があってのことかもしれません。

 もちろん「電話占い」を行う業者の中には、しっかりと経験を積んだ占い師を擁しているところもありますが、一方で通話を長くしてお金を取る事だけを目的とする業者もいます。占い鑑定は、玉石混交であることを忘れないでください。

 悪徳な占い師にひっかからないためにも、曖昧な回答に終始し「沈黙」などのテクニックで通話時間を長引かせていないかを、注意深くみることが必要になるでしょう。

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