「そこのバイト君、サッカー手伝ってよ」といわれてもボールを探してはいけない<スーパーマーケット編>

おもしろ業界用語

平藤 清刀 平藤 清刀

店員どうしの会話は業界用語だらけ。買い物に夢中になっていると聞き逃してしまいがちなスーパーの用語を聞き取れるようになったら、お得なタイミングが分かる……かも!? スーパーでバイト経験のある筆者が解説したい。

「サッカー」「チェッカー」…何をする人?

昔のスーパーはレジで精算をするとその場で袋詰めもやってくれたが、今では人員削減と時間短縮のため、支払いを済ませた商品は買い物客が自分で袋に詰める方式になっている。

レジを抜けたら、袋詰めをするための台が並んでいる。あの台を「サッカー台」という。店舗によっては、高齢者や体の不自由な人の袋詰めを手助けするための人員を配置している場合があって、その人員を「サッカー」と呼ぶのである。

なぜ「サッカー」かというと、英語の「Sack」に「er」がついて「……する人」という意味の「Sacker」になるから。ちなみにアメリカでは「バッガー(Bagger)」と呼ぶらしい。

余談ながら、昔からの習慣で「レジ打ち」という言葉だけは残っているけれど、最近のレジは「打つ」作業が激減して、商品につけられたバーコードを読み取る方式がほとんど。レジを通すことを「チェックアウト」といい、レジ担当スタッフのことを「チェッカー」と呼んでいる。

レジ関連の用語をもうひとつ。皆さんは経験したことがないだろうか。レジでバーコードを読み込まず、エラーになる商品。システムそのものに何らかの障害が発生していることもあるが、最も多い原因は「売価エラー」だ。

商品に表示してある価格と、レジに登録してある価格が一致しないときに起こる。たとえばチラシの対象商品で「レジで値下げ」と謳っているのに、設定し忘れていることがある。あるいは単価268円の商品を「2パック買ったら500円ちょうど」になるという場合に、値引きを設定し忘れている場合など。いずれも担当部門のチーフがやることになっているが、開店前の忙しさで、つい忘れてしまうのだ。

お客さんに直接迷惑をかけるミスなので、厳しい店だと原因と改善策を書面にして、店長へ提出させられるという。

「定番」「バンドル」……値段のつけ方いろいろ

スーパーでは通常、週の半ばと週末にチラシが出る。お買い得な商品の情報が満載されている中で、こんな売り方を見たことがないだろうか。

〔1パック268円、2パックで500円〕

単品で値下げして、さらに2パックまとめて買えば1パック当たりが割安になる。こういう売り方を「バンドル」という。前述した「売価エラー」が起こりやすいのは、このときだ。

日常の標準価格で売る商品のことは「定番(ていばん)」という。スーパーではときどき時間帯を決めて値下げする「タイムセール」をやるが、時間が過ぎたらバックヤードで「鶏のから揚げ、定番に戻しておいて」といったような指示が飛ぶ。これはタイムセールが終わったから、値段表示を標準価格に戻しておいてくださいという意味である。

店内で調理加工されるインストア商品

筆者がアルバイトをしていた惣菜部門には、大きく分けて2タイプの商品を扱っていた。ひとつは自社の工場で調理加工してパック詰めされた商品。これは価格表示まで済ませてあるから、入荷したら売り場に並べるだけでいい。消費期限は商品によって異なるが、製造日から2~3日のものが多かった。

もうひとつは「インストア商品」だ。これは売り場の裏側、バックヤードで調理加工される商品で、パートタイマーやアルバイトがやる仕事の大半が調理加工・規定量をパック詰め・価格表示のステッカー貼り付けである。揚げ物はすべてインストア商品で、ほかに焼き鳥や餃子などの焼き物、シュウマイや肉まんなどの蒸し物、五目ごはんや赤飯、弁当などのご飯ものなどがある。クリスマス時季に出るチキンの丸焼きも、バックヤードのコンベクションオーブンで焼くのだ。

インストア商品を扱う利点は、売切れたら調理してすぐ売り場に補充できること。そしてお客さんから「揚げたてのトンカツがほしい」と要望があれば、たとえ1枚からでもすぐに揚げられることだ。

インストア商品は、できたてが買えるのでよく売れる。売れ行きのいい商品のことを指して「よく動く」というが、動きのいい商品は棚よりも「平台(ひらだい)」に置かれることが多かった。商品を陳列してある棚の両端のことを「エンド」というが、エンドに置かれた平べったい台を見たことがないだろうか。平台とは、あの台のことである。面積が大きくてたくさんの商品を並べられるし、台の三方からお客さんが手を伸ばせるから、商品が取りやすい。

「溶かしといて」……ほとんどの商品は冷凍食品

店員どうしの会話を聞いていると、売り場のチーフらしき店員がバックヤードに向かって「ほうれん草、溶かしといて」とか「マグロ出しといて」と指示を出しているのを聞くことがある。

じつは、ほうれん草のお浸しは、ボイル済みの冷凍ほうれん草を仕入れて、流水解凍してから味付けをしてつくる。

揚げ物も同じく、ほとんどが業務用の冷凍食品で、パートタイマーのおばちゃんがバックヤードでせっせと揚げているのだ。

寿司のネタも、カットされたネタを冷凍で仕入れて、翌日に使う分だけ冷蔵庫に移し、一晩かけてゆっくり自然解凍させている。

「溶かしといて」とか「出しといて」というのは、そういう意味。食材の仕込み作業はすでに工場で済んでいるから、出勤初日のアルバイトにやらせても、同じ商品ができ上るわけだ。

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