人気の復刻車両デザインで“撮り鉄さん”にお願いパネル 関西ローカル私鉄「大切なファンだから」

金井 かおる 金井 かおる

 <大切なお客様へお願いがございます>兵庫県の瀬戸内海側を走る私鉄、山陽電気鉄道(神戸市長田区)。沿線の中間にある山陽明石駅(兵庫県明石市)のホームに3月、鉄道写真を愛する撮り鉄さんに向けた「お願いパネル」が設置されました。SNS上では設置直後から「こんなのあった?」「凝ってる」と話題なのですが、このデザインどこかで見たことがあるような…。

人気車両でファンに訴え

 パネルに書かれた禁止事項は
(1)ホーム柵や黄色い線から身を乗り出しての撮影
(2)フラッシュや照明を使用しての撮影
(3)線路内など立ち入り禁止区域に立ち入っての撮影
(4)脚立や三脚、自撮り棒などを使用しての撮影
の4つです。設置した同社総務広報グループの広報担当者に話を聞きました。

--設置したのはいつですか。

 「3月10日です。明石駅の上下ホームに計4カ所、他には東須磨駅1カ所、垂水駅4カ所、東二見駅1カ所、飾磨駅1カ所。須磨と飾磨駅のホーム床面には、同じ内容のシールも貼りました」

--デザインに見覚えがあります。

 「多くの鉄道写真愛好家に人気のある、旧塗装復刻版のデザインをベースにしています」

 旧塗装復刻版とは、2019年から期間限定で運行中の3000系車両のこと。1968年に製造された車両に、旧標準色といわれるクリームイエローとネービーブルーのツートンカラーが施されています。緊急事態宣言前には、約30年ぶりの懐かしのカラーリングを収めようと、一眼レフカメラを携えた鉄道ファンたちの姿が沿線のあちこちで見られました。

 「実は、2019年の10月に、今回のパネルの元となる手作りのA3ポスターを東須磨と垂水駅に仮に設置しました。すると即座に、<デザイン凝り過ぎ><すごい手が込んでる>とツイッターに投稿され、一部ファンの方の間で話題にしていただいたという経緯があります」

--どなたの発案ですか。

 「社内のお客さま満足向上委員会の車掌チームの発案です。愛好家の方々に撮影マナーを啓発しつつ、デザインを見て喜んでもらえればとの思いを込めました」

--実際にマナー違反は多いのですか。

 「運転士や乗務員から、カメラのフラッシュがまぶしかったという声は聞きます。入駅時にホーム上の撮影者が黄色い線を越えて線路側へ近づいたという話もあります」

カメラメーカーも注意

 鉄道撮影のマナーについて、自社のホームページで呼び掛けるカメラメーカーもあります。
 富士フイルム(東京都港区)のサイト「撮ってもイイ人~イイ大人の写真マナー~」では、個人のSNS投稿や衣料品店の試着室、子どもの学校行事など、12のシーンでのマナーを紹介。鉄道撮影編では、フラッシュの光により運転士の視界が遮られると大事故につながる恐れがあること、線路や他人の敷地内に入ることは犯罪行為につながること等がイラスト入りで分かりやすく解説されています。

事故や事件も

 鉄道写真に関係する事故や事件をさかのぼると、2019年5月、秋田県内でJRの急行列車を約3メートルの高さのやぐらから撮影していた女性が転落し、腰の骨を骨折。同5月、兵庫県尼崎市内の阪急神戸線の踏切で、男性が線路脇に立ち入っているのを通行人が見つけ、110番。阪急電鉄は近くを走行中だった電車2本を約1分間停止させました。

 山陽電鉄の広報担当者はこう結びます。

 「『自分は大丈夫』と思って撮影されている方が多いと思いますが、黄色線の内側や柵から身を乗り出して撮影される方がいらっしゃれば、運転士が警笛を吹鳴することや、ホームでは駅係員が声がけすることがあります。大切な山陽電車ファンの皆さまには、何より安全最優先で撮影していただきたいです」

 旧塗装復刻版の車両の運行は、2021年春頃までの予定です。今は不要不急の外出は自粛しないといけない時。心置きなく電車に乗って遠出をしたり、マナーを守りながら愛機に収められる日が早く訪れますように。

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