「猫とルンバは思い通りにならない!」と教えてくれた白猫きょうだい

岡部 充代 岡部 充代

 阪神西宮駅近くにある『喫茶とお酒 花と寅』は、女性一人でも気軽にお酒を飲みに行くことができ、かつスイーツやフレーバーティーも充実している、曜日によってはランチもある、というアレコレ楽しめるカフェです。立地と、店名に「トラ」と入っていることから「タイガースファンが集まる店」と勘違いされることも多いそうですが、店主の福山貴子さんはスポーツにあまり興味がなく、「虎じゃなくて寅ですから」と笑います。

 

 そんな福山さんが久しぶりに猫を飼い始めたのは昨年夏。保護猫2匹の里親となり、ハク君、ユキちゃんという名前をジン君、テラちゃんに改名したのは、「お店の招き猫になってほしかったから」(福山さん)。ジン君は神社の“ジン”、テラちゃんはお寺の“テラ”です。

 福山さんは子供のころ猫を飼っていました。でも、知人から譲り受けた子は免疫系の病気でわずか2年半で亡くなり、公園で保護した猫は14年生きましたが、その子も…。

「祖母が亡くなった1週間後に家を出たまま帰ってこなかったんです。『おばあちゃんが連れて行ったのかな』と家族で話したんですけど、最初の子には『もう少し何かしてあげられたんじゃないか』という後悔があったし、2番目の子も行方不明という形だったので、どちらも心に引っかかる別れ方だったんですよね」(福山さん)

 大人になり、もう一度動物と暮らしたいと考えていましたが、なかなか条件が整わず。2年前にようやくペット可のマンションに引っ越して、一歩踏み出せる状況になりました。リフォームに際しては、「動物を迎えたとき使えるように」と、ケージやトイレを置けるフリースペースも作ったそうです。

 

「飼うなら、やっぱり猫がいい!」――そう思ってインターネットで調べてみると、保護猫、譲渡、TNR活動(T=Trap/捕獲し、N=Neuter/不妊去勢手術を施し、R=Return/元の場所に戻す)…猫たちを取り巻くいろいろなことが分かってきました。

「ペットショップという選択肢は最初からありませんでした。動物をショーケースに入れて販売していることや、高額でやり取りすることに違和感があったので。でも、改めて調べてみると知らないことも多くて。野良猫がたくさんいるという西宮浜まで自転車で見に行ったこともありました。ジンとテラに出会ったのは『神戸にゃん太の会』のホームページ。テラ(当時はユキ)の写真を見てピンと来たんです」(福山さん)

 

 そこには「きょうだいと一緒に引き取ってくれる方、大歓迎!」と書いてありました。きょうだいとはジン君(当時はハク)のこと。2匹は昨年6月に保護された、白い子猫のきょうだいだったのです。

 ユキちゃんとのお見合いの場で、ハク君も紹介された福山さん。「見ちゃうとね(笑)。それに、お母さんはキジトラだということ、去勢手術をしたお父さんにとっては最後の子供たちだということ、たぶん7きょうだいで、そのうち何匹かは死んでしまったこと…エピソードを聞いているうちに、ジンにも情がわいてきて」。家族に相談した上で、2匹一緒に迎えることにしました。

 

 ところが、来週からトライアル!という時になって、猫エイズの“擬陽性”であることが判明します。母猫からの移行抗体が陽性反応を示したのか、本当に感染しているのか分からない状態でしたが、そのことを知らされた福山さんは、「室内で飼うので問題ありません。キャリアとして必要な対応があれば教えてください」と返信しました。

「調べてみたら、症状が出ない子もいるし、いい薬もできていると分かったので。保護主さんが丁寧に説明してくださったおかげで、安心して迎えることができました。保護猫と聞いて躊躇する方もいるようですが、ペットショップと変わらないというか、むしろ安心だと思いますよ。ウチはたまたま子猫でしたが、社会性を身に着けた成猫のほうが飼いやすい場合もあるでしょうし。たとえば高齢の方なんかにはいいと思いますね」(福山さん)

 トライアル3日目には「正式に」と連絡を入れ、2匹は晴れて福山家の一員となりました。

「2匹一緒だからか、慣れるのは早かったですね。イタズラもするけど、そんなときは『ここに置いていた私が悪い』と思えるように、心に余裕を持つことを心掛けています。そんな風になれたのはジンとテラのおかげ。だって、猫とルンバ(お掃除ロボット)は思い通りにならないものなんですから(笑)」(福山さん)

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