お父さんが着けてた懐かしの「腕時計バンド用カレンダー」 数分で完売の人気も「生産は綱渡り」と明かすワケ

広畑 千春 広畑 千春

 昭和の香り漂う、腕時計用のアルミ製カレンダー。その昔、お父さんやおじいちゃんがつけていたのを覚えておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。カレンダー機能付き時計ができ、デジタル時計ができ、さらには携帯・スマホの登場で一度は生産停止したそのカレンダーを、今も作り続ける会社が千葉県にあります。コアなユーザーらに愛され続け、発売のたびに数分で予定数を完売する人気商品ですが、「実は綱渡り」とも。その理由を取材しました。

 千葉県松戸市で企業の販促品やトロフィーづくりなどを手掛ける「大成」。アルミ製の「ウォッチバンドカレンダー」は、毎年この時期になるとSNSを中心に「懐かしい」「お父さんがしてた」などと話題を呼んでいます。

 2代目の根本孝宏さんによると、カレンダーは同社の前身の時代、1970年代ごろには生産されていたといい「私は今50歳ですが、子どもの頃は父親を始めみんなカレンダーをはめていて、時計には『普通に付いているもの』と思っていたんです。だから中学生で初めて腕時計を買ってもらったとき、父親に『何で付いてないの?』と聞いたぐらい」と笑います。

 当時は販促品として出入りの保険会社や銀行の外交員が置いていったり、会社で配ったりしていたといい、企業のロゴに合わせデザインや色も豊富だったそうです。その後、88年に現在の会社が事業を受け継ぎ、90年代に入っても細々と作っていましたが時代とともに企業からの発注も激減し、生産停止に。その後、7年ほど前にネットを通じて問い合わせが相次ぐようになり、「とりあえずちょっとだけ」と個人向けに生産を再開したところ、テレビでも取り上げられ注文が殺到したこともあったそうです。

 現在も毎年買い求める熱烈なファンにも支えられ、ある意味「順風満帆」にも見える生産ですが、「毎年綱渡り」のワケは、製造を委託している町工場の苦境にありました。

 「2~3年前まで作ってもらっていた工場は90歳近い職人さんがされていましたが、使っていた機械は、前回東京五輪の年(1964年)に購入した代物。メンテナンスも『もう覚えた』と笑っておられましたが、後継者不足で廃業される、と…。でも今どこも町工場は厳しく、自分が知る範囲でも年に3~4件は廃業している。小ロット生産なので『割に合わない』と断られることも多く、知人など伝手を駆使して見つけた工場も昨年閉じることになり、次引き受けて下さる先を探すのが本当に大変でした」と打ち明けます。

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