動物病院に捨てられていた気性が荒い子猫…人に甘えない子だけれど、今ではお父さんが一番好き

渡辺 陽 渡辺 陽

佐賀県の動物病院に3匹の子猫が捨てられていた。まだ産まれて間もない子猫で、人工保育で育てられた。たまちゃんと名付けられた女の子の猫は、あまり濃厚に構われるのが好きではない猫らしい猫になった。

動物病院に捨てられていた子猫たち

2005年5月、佐賀県にある動物病院の前に3匹の子猫たちが捨てられていて保護された。生後間もない子猫たちは、人工保育で育てられた。

佐賀新聞に子猫たちの里親を募集する広告が掲載されていた。佐賀県に住む松尾さんのお母さんは、家族に相談せず、広告を見てすぐに動物病院に電話した。お母さんは無類の猫好きで、先代猫が亡くなってから数年経っていたので、また猫を飼いたくなったようだった。後から聞くと、今回は松尾さんの誕生日プレゼントに猫を飼うことにしたという。松尾さんに猫を選ぶ権利はなかった。

子猫たちは色も柄もさまざまで、1匹が女の子で2匹が男の子だったが、男の子の里親さんは既に決まっていた。松尾さんのお母さんは、女の子をもらうことにした。離乳が済む生後3カ月までは動物病院で飼育してくれた。先代の猫のかかりつけの病院で、同級生の家でもあったので安心できたが、近くにいると思うと待ち遠しかったという。

お父さんっ子

松尾さんは、子猫が家に来るまでに一度面会に行った。広告の写真では分からなかったが、茶色い猫だった。少し目やにが出ていて心配だったが、小さくて可愛らしかった。

「こんなに小さな子猫がお母さん猫と離されて捨てられるなんて、胸が痛くなりました」

松尾さんは、病院の忙しさを考え、それ以上面会に行くのは差し控えた。

2005年8月、待ちに待った譲渡の日がやってきた。松尾さんはお母さんと子猫を迎えに行った。

家に連れて帰ると警戒して立ったまま動かなかった。睡魔と戦いながら寝るまいと踏ん張っていて、小さい体がこっくり揺れては、ハッと目を覚まし姿勢を整えてまた踏ん張ることを繰り返していた。やがて疲れてこてっと寝てしまった。名前は、たまちゃんにした。

松尾さんは学生で、ご両親も共働きだったので、たまちゃんは日中1匹で過ごすことが多く、あまり人にべたべた甘えない子になった。寝る時は必ず一匹で寝る。女性は、「好き好き好き~」と抱きしめられることが多く苦手になった。男性の方が控えめなので好きなようで、特におじさんが好きだ。松尾さんが家を出て、お母さんが入院したとき、たまちゃんとお父さん、二人きりの生活になったことがあり、それ以来お父さんには一番懐いている。

シニア猫になって丸い性格に

動物病院には、その後も同じ血統と思われる猫が数回捨てられていたようだ。みんな性格が似ているらしく、気性が荒いらしい。たまちゃんもそうだった。縁側に猫が来ると怖くなってしまい、心配して見に行くと人の足に飛びついて攻撃してくる。病院でもシャーとかフーとか獣医さんや看護師さんに言うので診察が大変だ。

しかし、そんなたまちゃんも14歳のシニア猫。おっとりした猫になり、前より触りやすくなったそうだ。

「すべての動作がゆっくりしています。たぶん右利きで、子猫の頃から右手でいろんなものをちょいちょいちょいっとする時に首が右に傾くんです。たまに遊んであげるとその癖が出て、可愛いくてたまらないんです」

ごはんは少量ずつ何度も食べるが、その時になぜかニャアニャア鳴く。お父さんっ子らしく、お父さんに何かを訴えて一番鳴くという。二人で会話しているような時もある。

「猫にまったく興味のなかったお父さんに一番懐くなんて、たまちゃんを引き取る時には想像もできませんでした。お父さんはすっかり猫好きおじさんになったんです。外でも猫に出会ったときは家族に報告しますし、すっかり猫の魅力にはまってしまったようです」

「猫を飼う手段はいろいろあると思いますが、たまちゃんは保護猫で、最後まで里親さんが決まらず残っていた子猫でした。残り物には福があるではないですが、たまちゃんは、我が家にたくさん福をもたらしてくれている気がします」

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