見たら眠れない「お岩さん」の像、背筋寒くなる幽霊画 京都の寺に眠る怖~いお宝

樺山 聡 樺山 聡

 怪談の季節でございます。妖怪、幽霊、地獄…。京都では古今の怪異談が数多く語られますが、まだまだ知られざる話というものがあるものでございます。怪談研究者で、怪談朗読団体「百物語の館」の主宰を務める堤邦彦・京都精華大教授が、フィールドワークで発掘した成果を近著「京都怪談巡礼」(淡交社)で披露しております。それはまさにミステリー。その一端をここで紹介いたします。ひとときの涼をお楽しみください。

 六道珍皇寺(京都市東山区)。平安時代、地獄へとつながる「冥土通いの井戸」があったとされる有名な寺院でございます。最近はここを舞台にした絵本「地獄めぐりの橋」(小学館)が出版されました。このお寺に、従来ほとんど人目にさらされていない「幽霊画」が残されていたのでありました。

 坂井田良宏住職(62)が今回特別に、床の間へと掛けてくれました。そこには、やせ細った老婆らしき女性が恨めしそうに立っている姿が描かれておりました。「うらめしやー」。ベタかもしれませんが、そんな声が聞こえてきそうです。空調を効かせていない和室で、噴き出していた汗が一瞬止まったような気さえいたします。

 この幽霊画。堤教授によると、落款から幕末を生きた名古屋の絵師・森高雅[もりこうが]の作とのこと。「名古屋の絵師の作品がなぜ京都の寺に?」と思うでしょう。何代か前の住職の時代に献納されたとみられ、20年ほど前に坂井田住職が蔵で見つけ、供養しているというではありませんか。堤教授は「かつて死体がさらされた風葬地だった鳥辺山のふもとに六道珍皇寺はある。土地の特性が呼び寄せたのでしょう」と推測いたします。

 幽霊画は江戸期の円山応挙によって様式が完成されたそうで、建仁寺の塔頭(たっちゅう)大統院では応挙筆の足のない幽霊画が不定期で公開されるといいます。家にあればさぞ不気味だと思いますが、魔よけや商売繁盛の御利益があると珍重されたそうです。昔の人はそこに霊力を見たのでしょうか。

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