「即応予備自衛官」ってナニ?…ライター仲間には「速報」と間違われることも多くて…

平藤 清刀 平藤 清刀
即応予備自衛官のシンボルマーク。戦闘服の袖に縫い付けている
即応予備自衛官のシンボルマーク。戦闘服の袖に縫い付けている

関西のライターが集まる飲み会の席で、初対面の女性ライターから声をかけられた。

「“そくほうよびじえいかん”って何ですか?」

「そくほう?」

こっちが訊きたい。

「幹事さんから聞きました」と、目をキラキラさせている。どうやら自衛隊には良い印象をもってくれているみたいだ。でも「そくほう」って……。

じつは、こういう間違いに遭遇したのは初めてではない。以前にも、他の現場で知り合った若いライターから「“そくほうよびじえいかん”って、なんスか?」と訊かれた。

ライターという仕事柄か「即応(そくおう)」が「速報(そくほう)」に聞こえるらしい。「速報予備自衛官」だと、意味が通らないことに気付いてほしいのだが。そしてその都度、「即応予備自衛官とは何か」をレクチャーする羽目になるのだ。

正しくは「即応予備自衛官(そくおうよびじえいかん)」といって、平成9(1997)年度に陸上自衛隊で発足した制度だ。これまでにも、諸外国の「予備役兵」に相当する予備自衛官制度はあった。だが年間の訓練日数が短いため、自衛官としての感覚と最低限の練度を維持するのがせいぜいで、新しい装備の取り扱いを習得したり、階級に応じた知識や技能を身につけたりして、練度を向上させるには訓練時間が足りない問題を抱えていた。

それに対して即応予備自衛官は、年間の訓練日数30日。有事の際は第一線へ投入することを前提に、より実戦的な訓練を行う。

即応予備自衛官の身分は、予備自衛官と同じ非常勤の国家公務員。れっきとした公職である。予備自衛官には一般公募制度があって、自衛隊の勤務経験がなくても、所定の訓練を受ければ予備自衛官になれるが、即応予備自衛官は基本的に自衛隊OB・OGである。採用されると月々の手当が16,000円支給されるほか、訓練に出頭したら、階級に応じて10,400~14,200円の訓練手当も支給される。

予備自衛官だった自分は、平成12(2000)年度に採用された。そして平成27(2015)年度をもって定年を迎え、今は再び予備自衛官である。

即応予備自衛官は一般にまだ馴染みが薄いようで、制度があることを知っている人でも「即応自衛官」とか、酷い場合には「予備のなんちゃら」という曖昧な覚え方をしている場合が少なくない。そんな即応予備自衛官のことを理解してもらうため、これから書き進めていこうと思う。

用語の説明を、簡単にしておく。予備自衛官や即応予備自衛官に対して、フルタイムで勤務する自衛官のことを「常備自衛官」または「常備隊員」という。

即応予備自衛官を主体に編制されている部隊を「コア部隊」といい、現在は全国に8個ある普通科連隊のほか補給職種の部隊を合わせると19のコア部隊がある。ふだんコア部隊には基幹要員(指揮官や本部要員など)として少数の常備自衛官が勤務している。即応予備自衛官の訓練はコア部隊ごとに行われ、有事の際には即応予備自衛官を招集して完全編制になる。ただし、訓練や有事で招集を受けているとき以外は、コア部隊と即応予備自衛官とのあいだに従属関係はないことになっている。

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