目指せスルメ俳優! 映画「ある町の高い煙突」初主演の井手麻渡に聞く

黒川 裕生 黒川 裕生

 明治の終わり、日立鉱山の煙害と戦った人たちを描いた映画「ある町の高い煙突」が、全国で公開されている。主演は俳優の仲代達矢が主宰する俳優養成所「無名塾」に所属する新鋭・井手麻渡(あさと)。19歳で無名塾に入り、舞台を中心に活動してきたが、主演を務めるのは舞台、映画も含めて初めてという。「今後は映像ならではの繊細な芝居もできる役者になりたい」と意気込んでいる。

 愛知県出身で、中学からは東京在住の現在29歳。中高時代はバスケに打ち込んだが、大学で始めた演劇の魅力に取りつかれ、役所広司や若村麻由美、真木よう子、滝藤賢一らを輩出してきたことで知られる無名塾の門を叩いた。

 「ある町の-」は、1914年に茨城県入四間村(現日立市)に建設された高さ155.7mの「大煙突」を巡る実話を基にした物語で、新田次郎の同名小説が原作。鉱山の煙害に苦しむ地元住民と鉱山側とが協力して、いかに公害と向き合い、当時としては世界最高の煙突建造計画がどう進められたかを丁寧に描いている。

 オーディションで選ばれた井手は、主に舞台俳優として活動してきたため、それまで自分の演技を客観的に見る機会はあまりなかったという。今回、主演として最初から最後まで出ずっぱりの自分の演技について「正直に言うと、下手だなあと思った」と笑うが、「周りの人に助けてもらった」と感謝。「みんな、初主演の自分を盛り立てようとしてくれたし、共演した渡辺大さんや伊嵜充則さんは兄のように接してくれた。短い出演時間でも作品の世界に合う演技をズバッと決めるベテランの方々の仕事ぶりも刺激になった」と振り返る。

 共演した仲代からは、特に具体的なアドバイスはなかったそうだ。ただ、映像の現場で俳優はどう立ち振る舞うべきかを、背中で淡々と示してくれた。

 「カメラや照明などのスタッフのことを細かく見ていて、ああ、映画を作るってこういうことなんだなと。(仲代がいることで)スタッフはみんな緊張していたけど、一緒に仕事をできるのが心底嬉しそうだった。無名塾の外の世界でも、やっぱりすごい人なんだと改めて実感した」

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