道路にたたずんでいた子猫、耳が聴こえず右目も見えなくなったが…

渡辺 陽 渡辺 陽

 北海道の冬も終盤に差し掛かり、アスファルトの上の雪が溶け始めていた。そんなある日、道路にたたずんでいた1匹の子猫。一見すると健康そうだったが、山田さん姉妹に保護された後、聴覚を失っていることが分かった。

道路の真ん中にいた一匹の子猫、スリスリ甘える

 北海道に住む山田さんは、妹と食事に行った帰り道、家に向かって車を走らせていた。まだ春というには寒かったが、アスファルトで舗装された道路は、ところどころ雪が溶けて路面が見えていたという。

 畑に囲まれた、ほとんど車が通らない田舎道。まるで暖を取るかのように、雪が溶けたところにいたのが福くんだった。

 「遠くから見るとゴミ袋か何かのように見えたのですが、近づいてみると子猫だと分かったので、道路脇に車を停めたんです」

 たった1匹でいた子猫は逃げるそぶりもなく、車の中から「どうしたの?」と声をかけると、「ニャア~」と鳴いた。のちに、福くんは耳が聴こえないと分かったが、その時、そんなことは思いもよらなかったという。

 「このままでは車にひかれてしまうと道路脇に猫を誘導しようと車から降りたんです。すると、福のほうから近寄ってきて、私と妹の足にスリスリ、スリスリ甘えてきたんです」

猫が苦手な姉妹、猫を飼うことに

 実は、山田さん姉妹は、チワワを3匹飼っていたが、昔から猫が苦手だった。抱き方も分からずおっかなびっくり。かといって、このまま猫を放っておけない。

 「しばらく妹と話し合い、里親を探すことにして、かかりつけの動物病院に福を連れて行ったんです」

 獣医師は、生後6カ月くらい、脳に障害があると姉妹に告げた。先天性かもしれないし、どこか高いところから落ちたのかもしれないということだった。

 家に連れ帰ると、福くんは安心したかのようにぐっすり眠ったという。何日経ったある日、山田さんは、福くんが玄関扉を開閉する音やチワワが吠える声に反応していないことに気がついた。「まさか!?」と思い、福くんの耳の近くで手を叩いてみたが、やはり反応しない。

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