静岡定番、ド派手「横断バッグ」 誕生の裏に通学心配な親心

金井 かおる 金井 かおる
宮原商店のホームページ
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 兵庫県のとある街で、蛍光色の派手なスクールバッグを手に横断歩道を渡る小学生を見かけました。バッグには横断標識のイラストと「横断中」の文字。これって横断旗の兼用? ルーツは、半世紀以上前の静岡にありました。

横断旗のない場所で活躍

 小学生に付き添う保護者に話を聞くと、きっかけは、通学路の途中にある信号機のない横断歩道でした。車の通行量が多く、登下校時の安全確保に頭を悩ませていたそう。そんな時、ネットで見つけたのが、くだんの「横断バッグ」でした。

 ネット通販で取り寄せた商品は、思っていた以上に目立つネオンカラーとデザイン。「子どもには『運転手さんに気づいてもらえるように持ってね』と言っています」

 天気の悪い日や夕暮れ時にも目立ち、横断旗に匹敵する存在感を発揮。「ナイロン製だから、雨の日でも給食袋や図書室の本を入れられて便利。手入れしやすいのも助かります」。

きっかけは交通戦争

 「横断バッグ」のメーカー、宮原商店(静岡市)社長の杉山妙子さんに電話で聞きました。

 バッグ誕生は56年前の1963(昭和38)年、杉山さんの父、初代社長の宮原敏夫さんが考案しました。高度成長に伴い交通事故が増え死者が急増し、59年は年間事故死者が初めて1万人を超えました。「交通戦争」と呼ばれた時代です。

ーきっかけは。

「当時私の弟は小学生で、子煩悩な父は、信号機がなく交通量の多い『本通り』という大通りを渡って登下校する弟を心配していました。近所に住む年下の子どもがトラックにひかれたことから、『このままでは危ない』と、児童全員が横断旗を持って渡れる方法を思いつきました。それが横断マークの入った黄色いバッグです」

ー静岡県では定着していると聞きました。

「56年続いているので、静岡県人の99%は知っていると言われています。静岡市や県の東部の富士市や沼津市を中心に、小学1年生の購入品リストに入っていたり、交通安全協会からの寄付で新入生にプレゼントされています」

ー静岡以外は?

「静岡育ちの人が他の都道府県に転居した後、お子さま用に取り寄せるケースがあるようです。千葉県、愛媛県、富山県、奈良県など、さまざまな地域の団体や企業、個人の方から注文をいただいています」

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