昭和レトロな洋酒喫茶「還暦」迎える 年間50日だけ営業

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昭和の雰囲気が漂う店内で客と談笑する純子さん(大津市長等3丁目)
昭和の雰囲気が漂う店内で客と談笑する純子さん(大津市長等3丁目)

 1年間で約50日しか開店しない大津市長等3丁目のバーが、オープンから60年の歳月を重ねた。月に数日の開店日には音楽好きの常連客でにぎわい、団塊の世代らが「青春の1ページ」にタイムスリップしている。

 洋酒喫茶「45(よんご)」は、色ガラスの電気シェード、鏡張りの棚に並ぶウイスキーやカクテル用の洋酒瓶、若かりしころのシルヴィ・ヴァルタン、ジャニス・イアンら女性歌手のポスターが昭和の雰囲気を色濃く残す。店主の二村純子さん(78)は「内装はほとんど変えていないんです」と話す。

 1958(昭和33)年12月にオープン。洋酒喫茶は当時、若者が気軽にカクテルと音楽を楽しめる場として人気を集め、グループサウンズの流行もあって1960~70年代に全盛期を迎えた。次第に姿を消したが、同店は純子さんを「すみちゃん」と慕う常連客に支持されて昨年末に60周年の節目を祝った。

 実は、純子さんは横浜市在住だ。月に1度、約1週間の日程でふるさと大津の同店に戻ってくる。夫が横浜市に転勤する際に一度は店を閉じたものの、帰省で顔を合わせるなじみ客の声に背中を押されて2006年に再開した。長く閉めきりだった店の掃除や、不定期の開店日を知らせるホームページ開設は客たちが手伝った。

 ジャズやシャンソン、アメリカンポップスなど収集したレコードは約千枚といい、客のリクエストに応じてかける。純子さんの弟と同級生の小幡文雄さん(72)=大津市梅林1丁目=は「会社勤めの傍らベーシストをするようになった原点はこの店だった」と振り返る。

 「カラオケが苦手な人が静かにレコードを聴く店」「帰りたくなる唯一の場所」と語る客の姿も。14年以降は毎年「大津ジャズフェスティバル」の会場の一つになり、客の裾野を広げている。

 純子さんは「60年もできると思わなかったから、うれしい。お客さんだけは自慢です」と、ほっこりした笑顔を浮かべた。今月は15~19日の午後6時半~10時に昭和の扉が開く。

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