朝夕ラッシュ時 阪急駅で見かける黄色い服の若者たち 臨時案内係、通称「学生班」の実態は

雲雀丘 夙子 雲雀丘 夙子

朝夕ラッシュ時に阪急の主要駅に行くと、黄色い制服を着た若者を見かけたことはないだろうか。実は彼女ら彼らは阪急電鉄に雇われたバイトである。筆者は10年以上前に阪急の某駅でアルバイトをしていた。そこでの体験談を書き連ねたいと思う。

神戸~京都はタダになる乗車証の威力

阪急の学生アルバイトの正式名称は「臨時案内係」という。ただ、いちいち「臨時案内係」というのは面倒なせいだろうか。筆者が在籍した時は「学生班」と呼ばれていた。

「学生」と銘打っているだけに、応募できるのは原則として大学生や専門学生のみ。フリーターや予備校生は応募できない。このあたりはアルバイトを通じた教育と考えていいだろう。

学生班は主要駅ごとにあり、主要駅を中心に他の駅に派遣されるといった感じだ。たとえば、神戸本線では梅田班、十三班、塚口班、西宮北口班、夙川班、神戸三宮班があったように思う。

勤務時間は基本的に平日朝7時~9時、夕方17時~19時であった。この他に希望性で多客時の土日にも働くことができ、昼間時にはプリペイドカード「ラガールカード」を販売していた。今から思えば、アルバイトにしてはかなり柔軟な働き方ができたように思う。

気になる給料は時給800円と乗車証だ。これに年2回のボーナスがあった。当時の水準を考慮しても、労働時間の短さを考えると阪急学生班に二の足を踏む学生も多かったのではないだろうか。

ここでポイントなのが乗車証だ。乗車証は住んでいる駅の線区と大学(学校)がある駅の線区が無料となる代物だ。

たとえば、居住地が千里線、大学が今津北線にあると、京都線管区(京都本線・嵐山線・千里線)・神戸線管区(神戸本線・伊丹線・今津北線・今津南線・甲陽線)が無料に。神戸三宮~京都河原町間も運賃を払う必要がなく、ものすごくトクした気分になる。実際に乗車証を欲しいがために学生班に応募する学生も少なからず存在した。

気になるのは業務内容ではないだろうか。学生班の募集ポスターでは「ホームでの案内」みたいなことが書かれていたが、いまいち釈然としなかった。

「押し屋」はほんの一部! 仕事のメインは?

読者のみなさんがイメージされるのは「押し屋」だろう。つまり、手で乗客を車内の方に押し、何とか電車を発車させる行為だ。

確かに最混雑時の特急は「押し屋」をしたが、実際はほんの一部にすぎない。それではホームに立っているだけかと言われると、それは違う。実は駆け込み乗車をする利用者のために、閉まりかけている電車の扉を手で押さえるという業務が重要なのだ。

つまり、他の扉が閉まっている中、駆け込み乗車をする利用者のために1扉分だけ手で開けておくのだ。駆け込み乗車が終われば、タイミングよく扉から手を放すことで、扉が閉まる。一連の動作が車掌を助けるのだ。

他にマイクでの案内放送、駅の清掃、利用者への個々案内などを行う。利用者が物を線路に落とした際に用具を使って線路から拾い上げるのも学生班の仕事だった。

筆者が働いていた頃はホームドアは存在しなかった。現在は阪急でもホームドアが次々と設置されている。ホームドアの設置により学生班の業務は変わるかもしれないが、利用者を案内するという根幹の部分は変わらないことだろう。

※この記事の内容は10年以上前の経験を基にしており、現在と異なっている場合があります。

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