多くの疾患から「譲渡対象外」になった保護犬 預かりボランティアとの二人三脚の毎日 後輩の子犬のお手本に

松田 義人 松田 義人

動物愛護センターにはさまざまなバックボーンを持つワンコが収容されています。犬種はもちろん年齢や性格、持病の程度は1頭ずつ異なるものですが、現実的な傾向では健康で若いワンコほど、保護団体などで引き出される機会が多い一方、そうでなく、シニア犬だったり、重篤な持病があったり、気性難のワンコは残念なことに引き出しが遅れ殺処分対象になってしまうこともあります。

心ある保護団体の中には、こういった問題を抱えた保護犬であっても積極的に引き出し、結果的に殺処分を1頭でも減らす努力を重ね続けるところもあります。岡山県を拠点に犬の保護活動を行う認定NPO法人しあわせの種たち(以下、しあわせの種たち)も、そんな団体の一つです。

2021年秋、動物愛護センターに収容されていた中でも、多くの疾患があるため譲渡対象外になっていたメスのワンコがいました。名前はマーヤ。穏やかで物静か。しあわせの種たちではこのマーヤを引き出すことにしました。

複数の持病や障がいを抱えながらも穏やかな性格

引き出した当初のマーヤは両後足に障害があり、フィラリア強陽性とそれに伴う合併症を抱えていました。

そんなマーヤでしたが、しあわせの種たちに引き出された後、同団体に参加する預かりボランティアの家で過ごすことになりました。

マーヤは環境の変化にビビりながらも穏やかに過ごしていました。特に日なたが大好きで日の当たる場所にいると、ウトウトしてしまうこともありました。

そんな穏やかな様子がかわいいマーヤでしたが、しかし、2022年11月に突然の下痢と嘔吐で体調不良になってしまいました。病院で検査をした結果、肝臓や胆のうの周辺に水が溜まっていて、腹水もあるとのこと。至急点滴を行い、合わせて薬の内服・治療食を与えることにし経過観察をすることになりました。

通院などからマーヤの中で芽生えた「テリトリー外での生活」

幸い検査データが落ち着き、今では体調も回復していますが、それでもマーヤは通院を続けることになりました。

病院の診察に通い始めた当初は、カートがないと落ち着かないマーヤでしたが。通院が日常となった今ではすっかり慣れて、優しい主治医や看護師さんとは友達になり、待合室では静かに待てるようになりました。

それまでは預かりボランティアさんの家であったとしても、自分のテリトリーから出ることができなかったマーヤですが、こういった経験が重なったこともあり、今ではリビングまで足を運べるようになりました。先住犬との距離感も上手につかめるようになり、これまでとはまた違う楽しそうな様子を見せてくれるようにもなりました。

後輩となる子犬たちに「生活の見本」を見せるようになった

しあわせの種たちのスタッフはもちろん、この活動を応援する全国の支援者からのサポートを受け、マーヤは持病を抱えながら今日も日々がんばって生き抜いています。

そして最近、マーヤが暮らす預かりボランティアの家に、後輩となる子犬たちがやってくると、マーヤは先住犬として子犬たちに「生活の見本」を見せるようにもなりました。

肉体的には多くの持病を抱え、その病を戦い続けるマーヤですが、その心にある「生きたい」という気持ちを、ボタンひとつで終わらせることは本来絶対にあってはならないことです。

マーヤの「生きたい」という気持ち、しあわせの種たち関係者の思いと行動を前に、改めて1頭ごとに与えられた命の尊さとその重みを痛感しました。マーヤの体調が回復に向かい、より多くの笑顔を見せてくれることを願うばかりです。

認定NPO法人しあわせの種たち
https://shiawasenotanetachi.amebaownd.com/

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