読経開始2分。走り回る子ども、謝罪する母、笑いこらえる父…「祖父はあの世でニッコリだろうな」僧侶が目を細める深い理由

前川 茂之 前川 茂之

 読経が始まるや否や、走り回る子どもたち。謝罪するママの声。笑いをこらえる父。止まらない読経に、叫ぶ祖母…

 カオス化した法事に、「祖父はあの世でニッコリだろうな」とつぶやいた現役僧侶の「ぜんG坊主」さん(@76together)の投稿が共感を呼んでいます。

リプライには「法事あるあるw」「ほっこりした」「子育て中の親ですが、救われました」などの書き込みがつづられ、お盆シーズン到来を前に、法事にまつわる数々のおもしろエピソードも寄せられています。

ぜんG坊主さんによると、法事があったのは、夏休み最初の土曜日。8畳ほどの和室に15人の親族が集ったそうです。うち5歳以下の子どもは8名。読経開始2分で、一部の子どもがぜんG坊主さんの背中に当たりながら、走り回ったことで雰囲気は一変しました。謝罪するママの声が飛び交う中、パパは必死で笑いを堪えている様子。読経が続く中、祖母が叫びます。

「ご法事にはできるだけ参加しましょう。小さなお子さんがいても大丈夫🙆‍♂️」

と呼びかけた「ぜんG坊主」さん。実際にはどんな雰囲気だったのでしょう? お聞きしました。

子どもはうるさいから…ではなく

「とても和やかに終わり、ご家族の雰囲気もとても素敵でしたよ」

ーTwitterでは、法事は家族みんなで参加することが大事だと呼びかけておられます。

「『親が拝めば子も拝む後姿の美しさ』という言葉があります。大人の拝む姿を見て子供は育ちます。
子供はうるさいから…と除け者にせず、みんなで手を合わせ、亡き人や神仏に思いを馳せる事が出来たなら、それはとても素敵な事ですね」

ー今回の法事ではどんな声かけをされたのでしょう。

「『一緒にナムナムしようねー。おじいちゃんや仏様が喜んでくれるように皆でナムナムしようね』と、子供達にも法事に参加してもらえるように声をかけさせてもらいました。
ふざけながらでも参加してもらう事が大切だと思います」

ーTwitter(現:X)では、「#ご法事でのエピソード」のハッシュタグを使ったエピソード募集もされています。ぜんG坊主さんの印象に残っている法事、忘れられない法事があれば教えて下さい。

「長年連れ添われた奥様を先に亡くされた旦那様が、お盆の際に亡き奥様のために御霊膳を手作りされておられました。

『今まで滅多に料理なんてした事がない』と仰るご高齢の旦那様が真心を込め作られたその御霊膳は、小さな器からこぼれ落ちた煮物や、なぜか黒く焦げた高野豆腐、器から飛び出した素麺など、決して盛り付けも綺麗とは言えませんでしたが、亡き奥様への愛情と供養の気持ちがぎっしり詰まったとても有り難いもので、その御霊膳を目の前に読経しながら、私も泣きそうになりました。

そのお姿から真心というものを教えていただきました」

元気な子供に怒る仏様やご先祖様はいない

ーとっても素敵なエピソードですね。でも、やっぱり幼い子がいる親にとってはお寺さんや他の親族に迷惑をかけないか、ハラハラドキドキです。

「勿論TPOにもよりますが、子供が騒ぐからと最初から参加させなかったり、ゲームをさせて静かにさせたりするというのは大人の都合だけを重視した判断であると私は思います」

「親族の目も勿論大切にしなければいけませんし、出来れば静かに参列するのが望ましい事はもちろんですが、ご法事は参加する事に意義があり、元気な子供が騒いで怒る仏様やご先祖さまはおられないと思います」

ーご先祖様も喜んでいるはずだと。

「父母を10代遡るだけで1024人ものご先祖様がおられます。その1人でも欠けていたら、今私はココに存在しません。そして、いずれ私達も此方(こちら)から彼方(あちら)の彼岸へ向かわねばなりません」

「今の私があるのは過去にバトンを繋いで下さったご先祖様が居られるから。無常の中で私の命が過去から現在そして未来へと繋がっていき、繋がっている事を肌で感じ、お仏壇や本堂の仏様の前で懺悔したり感謝したり意欲を燃やしたり、心から手を合わせ頭を下げ祈り、一瞬であっても供養の真心を捧げる事が出来たならば、それは子供たちにとっても、大人にとってもたいへん意義のあるご法事の時間になると思います」

ー子どもたちが自分の命について考える経験にもなる。

「煩わしい、面倒くさい、大変だ、と何でもかんでも省く事の多い昨今ですが、ぜひ子供達と一緒に仏事を行い、大人も一緒にナムナムして欲しいなと思います。それが先立たれた方々への何よりもの供養になり、子供達への素晴らしい体験になると私は思います」

ーありがたいお話、ありがとうございました。

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