元宝塚花組男役スター・瀬戸かずやが「永遠に好きです」と告白した相手とは…

小野寺 亜紀 小野寺 亜紀

伝統ある花組のスピリットを継承するクールでダンディな舞台はもちろん、18年間地道に努力し男役道を究める姿が、多くの人の心に響いた元花組スター・瀬戸かずや。

2021年7月に宝塚歌劇団を卒業後、初のソロコンサート『The ALSTROEMERIA -アルストロメリア-』の開催が決定し、「男役から変化する今の私にしか出せないものをお見せしたいです」と意気込む。その新たな変化や挑戦、在団中のスランプ時の支えなど、柔らかな笑顔で語った。

稽古に舞台にと忙しい日々だった宝塚を卒業後、「今日は予定がひとつしかない!」と驚くなど、ゆったりとした毎日を過ごしている瀬戸。「私、意外とのんびりしている人だった、入団前は引っ込み思案な子だったな」と思い出したという。

一方で、コンサートに向けてジム通いを始め、ピラティス、マシーンを使ったエクササイズなど色々挑戦。「その全てがつながっている気がして楽しいです。体幹を鍛え、どこの筋肉を動かせばいいか。力を抜きながらも必要なところだけを動かすとか…。久々にまた何かを突き詰める面白さを感じています」。趣味で始めたゴルフは、「指の皮がむけるほど握りしめてしまい、負けず嫌いがこういうところに出るんだな(笑)」と、コーチの指導を受けながら楽しんでいるそうだ。

元花組トップスター・ANJU(安寿ミラ)の初演出作品

準備を進めているコンサートについては、「私の愛称が『あきら』なので、タイトルに『A』から始まる言葉を探し、素敵な花の名前からつけました。様々な色があるアルストロメリアのように、色々な場面を散りばめられたら。宝塚時代の曲も数曲、懐かしい曲をはじめ色んな曲に挑戦します。また、タンゴをきちんとお見せしたい。(男女)どちらをやるのかは、皆さまのご想像にお任せします」と明るく笑う。

構成・演出・振付は、元花組トップスターのANJU(安寿ミラ)。在団中からダンスの振付を通して様々なことを教わった大先輩だ。安寿にとって今作が初演出のステージとなることからも、二人の絆が伝わってくる。瀬戸が卒業後に出演した花組・月組誕生100周年に際した公演『Greatest Moment』(2021年11月上演)では、安寿と共に踊るという貴重な経験もした。

「素晴らしいヤンさん(安寿)についていくのに必死でしたが光栄でした。自分の視界のすぐそこにヤンさんの背中があり、その向こうにお客様がいるという状況は(これまで)あり得なかったので、とても楽しみましたし、きちんとしたパフォーマンスをお見せしたいと思いました」。そんな安寿に今回「たくさん踊るからね!」と言われている。

「私が『すごく格好いいので使いたいな』と思っていた曲が、ヤンさんの挙げられた曲と同じで、二人で大騒ぎしました! 宝塚でも使用されたことのある曲なのですが、どのような場面になるのか楽しみです」

宝塚大劇場での千秋楽、無観客だったのは忘れられない

出演は、宝塚の振付でもおなじみの三井聡、元花組娘役の芽吹幸奈ら。さらにスペシャルゲストとして、元月組トップスターの真琴つばさ、元花組トップスターの真飛聖を迎える。真琴は、瀬戸が宝塚に入りたいと思うきっかけを与えたスター。入団前、東京宝塚劇場の2階席に座っていた瀬戸が、真琴のウインクにハートを射抜かれた、というのはファンの間では有名な話。

「やっぱりどれだけ経っても、(真琴さんの)舞台姿を観ると毎回すごくときめくので、この思いは一生続くのだろうなと思います。昨年(『Greatest Moment』で)ご一緒したときも夢のようで、現実だから楽しまなきゃという思いと、ただファンのような自分とのせめぎあいで、感情が忙しい日々でした。変わらない心の温かさ、包み込む大きさをお近くで感じ、『永遠に好きです』とお伝えしました」と照れ笑いを見せる。

実際その舞台では、瀬戸がレジェンドのスターたちに交じって堂々と歌や踊りを披露し、確かな存在感を見せていた。瀬戸の卒業公演『アウグストゥス-尊厳ある者-』『Cool Beast!!』から4カ月後のことだ。

振り返れば卒業公演は、コロナ禍での緊急事態宣言発令のため一部の公演が中止、宝塚大劇場での千秋楽は無観客配信となり、観客のいない劇場での異例の退団セレモニーになった。「無観客だったのは忘れられないですし、悔しいという思いはもちろんありますが、それを上回るほどのものを、その後たくさん頂きました」。

目が曇っている人を見つけるのが得意

在団中は「花組のアニキ」と呼ばれ、下級生たちからも慕われていた瀬戸。「目が曇っている人を見つけるのが得意なんです」と愛嬌たっぷりに笑うが、悩んでいる仲間に気づくと言葉をかけていた瀬戸の存在は、花組の大きな精神的支柱だったはずだ。

「私自身、甘え下手で一人で何とかしてしまおうとするクセがあり、自分で脱出できない沼にハマった時期があったのですが、言葉にすごく助けられたんです。一人で考えているとマイナスの方へいってしまいがちですが、色んな書物を読んだりして言葉にとても助けられました」

だからこそ、同じような場面で悩んでいる下級生に、「落ち込んでもそこから早く回避してほしい」という想いが溢れたのだという。そんな瀬戸に、今心に留めている言葉を訊くと、「『こんな自分でもいいんだ』です。自分を否定するとうまく回らないことが多いですよね。できない自分を認め、そこで落ち込むのではなく、できないんだったらどうする!? と前に進めるように切り替えていきたいです」と、力強く答えてくれた。

今、新たな環境で視野を広げながら、一歩一歩進んでいる瀬戸かずや。「新しく出会うものがたくさんあり、これまで私が当たり前と思っていたものさしが通用しないこともあると思うのですが、色々なものを一つひとつ見つけて、感じて体験し、積み上げて、格好いい女性になっていきたいです。このコンサートで、宝塚を卒業して変化する今の、『ただの瀬戸かずや』が生まれる瞬間を、皆さまに観て体感していただけたらうれしいです」。

「Kazuya SETO 1st concert『The ALSTROEMERIA -アルストロメリア-』」は、他に笙乃茅桜、井上弥子、大場陽介、中島康宏が出演。2022年4月29日(金・祝)~5月1日(日)に「サンシャイン劇場」、5月6日(金)~7日(土)に「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」で上演される。チケットは3月26日(土)から発売。

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